【昔話05】 王様と魔法の小鳥 【モンゴル童話】
不思議な ふしぎな、魔法の小鳥。
逃がさないためには、何が必要?
王様は、どうすればいい?

昔むかし、とある国の森で、おかしな噂がありました。
なんでも、不思議な鳥がいて、誰も捕まえることができないのだそうな。
人々はその鳥を、「魔法の小鳥」と呼んでおりました。
やがて、その噂は、王様の耳にも入ることとなりました。
王様はさっそく森へ狩りに出かけたのですが、なんということでしょう、あっさりと魔法の小鳥を捕まえたのでした。
城に帰ると、王様は小鳥をカゴの中に入れました。
すると、小鳥は鳴くでもなしに、人の言葉で話しかけてきました。
「アタシはこれから、物語をお話します。もし、アナタが 憤ったら、たちまち アタシは逃げてしまいますからね」
おかしなことを言うものだと 王様は思いましたが、小鳥の話を聞くことにしました。
お金持ちの男が、荷車に大事なものを積んで、運んでいました。
ところが森の中で、車輪の一つが壊れてしまった。
途方に暮れる男でしたが、運よく、猟犬を連れた狩人が通りかかりました。
男は狩人に事情を話し、自分が戻ってくるまで、荷物の番をしてくれるよう、頼みました。
十分なお礼をするからと。
狩人はこれを承知し、男が助けを呼びに行っている間、犬と一緒に荷物を見張ることにしました。
ところが、思ったより時間がかかったようで、夕方になっても、男は戻ってきませんでした。
こうなると、狩人も心配になってきます。
というのも、狩人には、年老いた母親がいたのです。
母親のことは心配だけれど、荷物を見張ると約束している。
困った狩人でしたが、犬にしっかり荷物を見張るように言いつけ、いったん家に帰ることにしました。
少しすると、助けを呼びに行った男が、戻ってまいりました。
最初、狩人がいないことを不思議に思いましたが、すぐに犬がちゃんと荷物を見張っていることに気づき、頭をなでてあげました。
「かしこい犬だ。これはお礼だよ」
そう言うと、男は犬に 銀貨を1枚 くわえさせました。
犬は、ワン! と返事をすると、尻尾をふりふり、家へと走っていきました。
母親に事情を話し、荷物の見張りに戻ろうとした、狩人。
そこに、犬が駆けてきました。
見ると、銀貨をくわえています。
狩人はそれを見るや、カッとなって、犬を殴りとばして、殺してしまいました。
見張れと命令した荷物から、犬が銀貨を盗み取ったと思ったのです。
「なんてこった!」と、王様は叫びました。
すると、魔法の小鳥はカゴの外に出て、森の方へ飛んで行ってしまいました。
カゴを調べてみましたが、カギはかかったままです。
魔法の小鳥は 名前の通り、不思議な力を持っているようです。
次の日、王様はまた、森へ出かけました。
するとまた、魔法の小鳥は、あっさりと捕まったのでした。
王様は城へ帰ると、昨日より頑丈なカゴに、魔法の小鳥を入れました。
すると、魔法の小鳥は言います。
「アタシはこれから、物語をお話します。もし、アナタが 憤ったら、たちまち アタシは逃げてしまいますからね」
もう、昨日のように憤るまいよ。
そう心に誓いながら、王様は小鳥の話を聞くことにしました。
あるところに、お母さんと赤ん坊が暮らしておりました。
水を汲みに出かける間、お母さんは猫に、赤ちゃんの子守を言いつけました。
猫は言いつけを守るため、赤ちゃんのいる ゆりかごが 見える場所で、見守ることにしました。
ところが、どこからかネズミがやって来て、赤ちゃんの耳をかじってしまった。
猫は怒って、ネズミに おそいかかりました。
あっという間に、ネズミを退治した猫でしたが、赤ちゃんを見ると、耳から血を流しています。
かわいそうに思った猫は、傷口をなめて、なんとか血を止めてやろうとしました。
そこへ、お母さんが帰って来た。
お母さんは驚いて、汲んできた水を、ぶちまけてしまいました。
かわいい赤ちゃんが耳から血を流し、それを猫がなめている。
カッとしたお母さんは、持っていた桶で、猫を殴り殺しました。
「なんてこった!」
憤らないと心に決めていた王様でしたが、時すでに遅し。
魔法の小鳥は カゴの外に出て、森の方へ飛んで行ってしまいました。
次の日、王様はまたまた、森に出かけました。
すると、これまた、またまた、魔法の小鳥は 驚くほどあっさりと 捕まったのでした。
丈夫なカゴに閉じ込めても、この小鳥は不思議な力で、外に逃げてしまうようです。
王様は最初の鳥カゴに、魔法の小鳥を閉じ込めました。
そして、今度こそ憤るものかと、心にかたく誓ったのでした。
魔法の小鳥は言います。
「アタシはこれから、物語をお話します。もし、アナタが 憤ったら、たちまち アタシは逃げてしまいますからね」
ある国で、雨が降らない日が続きました。
人々は、飲む水がなくて困っております。
ある男が 水はないものかと探しておりますと、高台の大岩から、少しだけ水が したたり落ちておりました。
ほんのわずかな水でしたが、これ幸いと、男は 持っていたお椀に、ためようとしました。
すると、どこからか カラスが飛んできて、男のお椀を はたき落してしまった。
お椀が割れたので、もう水を飲むことはできません。
カッとした男は、石を拾うと、カラスに向かって投げつけました。
石はカラスに命中し、カラスは大岩の上へと落ちていきました。
男は頑張って、大岩の上へと のぼりました。
岩の上で、カラスは死んでしまっています。
それより驚いたのは、人間よりも大きな蛇が、岩の上で眠っていたことです。
そして、水だと思っていたものが、実は 大蛇の口から出た毒液であることに気づいた。
「なんてこった!」
王様が叫ぶや否や、小鳥は森の方へ飛んで行ってしまいました。
次の日、王様はもう、森へは出かけませんでした。
魔法の小鳥とも、それ以来、会うことはありませんでした。
でも、聞くところによると、王様はこの日より、ちょっとだけ思慮深い王様になったそうですよ。
<おしまい>
元ネタは、モンゴルの物語だそうです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
のんびり、おだやかに、暮らせますように。
- 関連記事
-
-
【昔話05】 王様と魔法の小鳥 【モンゴル童話】 2023/03/29
-
【映画 ルーム】 髪の毛は力のもと? 【男の子とお母さんの話】 2023/03/08
-
【昔話03】 商人と惣衛門の金言 【後編】 2023/02/22
-
【昔話02】 商人と惣衛門の金言 【前編】 2023/02/21
-
【昔話01】 生まれ変わった石切り 2023/02/09
-
tag :
<スポンサードリンク>


