【映画 ルーム】 髪の毛は力のもと? 【男の子とお母さんの話】
お母さんと一緒に暮らす、男の子。
ふたりには、ある秘密がありました。
それは…

あるところに、男の子とお母さんが住んでおりました。
朝起きて、体操して、ごはん食べて。
遊んで、お風呂に入って、歯を磨いて。
いつも、ふたりで過ごしています。
いつも、一緒に過ごしています。
その部屋には、ベッドがあります。
テレビがあります。
お風呂があります。
小さな台所があります。
高いところに、天窓もありました。
そこが、男の子にとっての、世界でした。
というのも、男の子は、部屋の外に出たことがないのです。
男の子は、いろんなことを知っていました。
でも、それは、テレビの中で知ったことと、お母さんの話で知ったことでした。
男の子は生まれてから一度も、部屋の外に出たことがないのです。
お母さんは若い娘のころ、悪い巨人にさらわれたのでした。
お母さんは巨人に、虜(とりこ)にされてしまったのです。
お母さんはその日から、部屋の外に出たことがありません。
男の子は、部屋の中で生まれました。
ある日のこと、お母さんは男の子に、外の世界を見せてあげたいと願いました。
そこで、熱いお湯を使って、男の子の額を熱くしました。
熱が出たから お医者に連れて行ってほしいと、巨人にたのむためです。
しかし、用心深い巨人は、男の子を お医者には連れて行きませんでした。
そこでお母さんは、男の子を絨毯で包み込みました。
巨人が来ると、泣き叫び、男の子が死んでしまった、一緒にいると悲しくなるので、どこか外に捨てて来てほしいと、泣きながら うったえかけました。
これには巨人も驚いて、絨毯にくるまった男の子を、捨てに行くことにしました。
絨毯のすきまから、外の世界が見えました。
空が見えました。
雨が見えました。
知らないものが、たくさんありました。
男の子はお母さんと約束したとおり、すきを見て逃げ出しました。
けれど、見つかってしまい、巨人が追いかけてきました。
男の子は巨人につかまってしまったのですが、そこに犬を連れた狩人が通りかかりました。
様子がおかしいと気づいた狩人は、騎士団を呼ぶと、巨人をおどしました。
すると、巨人はしぶしぶ、どこかへ行ってしまいました。
狩人が呼んでくれたので、騎士団が来ました。
けれど、男の子は、うまく説明できません。
お母さん以外の人と会うのも、話すのも、はじめてです。
騎士団の中に、やさしくて頭のよい騎士がいました。
その騎士は、急がず、ゆっくり、男の子が話すのを待ってくれました。
すると、少ない男の子の言葉から、あの部屋を見つけるヒントが得られたのでした。
やがて、お母さんと男の子は、騎士団に保護されました。
男の子とお母さんは、お母さんの家に帰ることになりました。
ばあばが、あたたかく、むかえてくれました。
お母さんは、男の子のお母さんです。
そして、ばあばの娘です。
若い頃にさらわれたお母さんの中には、さらわれたころのままの若い娘と、小さな男の子を守り育てていくお母さんという、ふたりのわたし がいました。
この ふたりの わたしの 板ばさみになり、お母さんは まいってしまいました。
男の子はある日、ばあばに、髪の毛を切りたいと言いました。
ばあばは微笑んで、わたしも切りたいと思っていたのよ、と返しました。
なぜ、長い髪を切らないのか?
なぜ、いま髪を切りたいのか?
その答えは、同じでした。
「髪の毛は力のもとなんだよ」と、男の子は言います。
男の子はお母さんから、サムソンの話を聞いていたのです。
男の子は、ばあばと一緒に髪の毛を切って、それをお母さんにあげました。
やがて、お母さんは元気になりました。
男の子とお母さんは、約束をしました。
いろいろ、やってみよう。
やれることを、たくさん、ためしてみよう。
それは、生きるということでした。
<おしまい>
元ネタは、カナダとアイルランド、イギリス、アメリカが共同制作した映画「ルーム」。
セレブ俳優が出るでもなく、派手さもない映画ですが、トロント国際映画祭では 観客賞を、バンクーバー国際映画祭では 最優秀カナダ映画賞を、それぞれ受賞しています。
お母さん役の ブリー・ラーソン は、ゴールデングローブ賞、全米映画俳優組合賞、英国アカデミー賞で、主演女優賞を受賞。
そして、第88回のアカデミー賞でも、主演女優賞を受賞したのでした。
難しい役をこなした ジェイコブ・トレンブレイ(男の子、ジャック役)の演技も、見ものです。
[ 3月8日に思うこと ]
成功ばかり追うと、苦しい。
なぜ、失敗するのか? となる。
失敗もあり、成功もある。
そう思えば、また別。
だいたい、世界がそうなっている。
プラマイゼロなら、上々。
ちょっとプラスなら、たいしたもの。
失敗の「失」を、矢で射るの「矢」だと言う人も いるのだから。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
気持ちよく、いろんなことを試せますように。
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