【胃酸の逆流】 危険度チェック 春間賢/ガッテン
3名の胃人から分かったこと。
・ 穴が開いて、胃の中と体の外がつながってしまった人。
・ 自らピロリ菌を飲んだ、研究者。
・ 胃酸が出やすくなっていることを発見した、日本人医師。
<胃酸の逆流 危険度チェック>
肥満、猫背、過食、飲酒、ストレスに注意。
<生活のコツ>
・ バランスのよい食事を、腹八分目で。
・ 食べ過ぎたら、枕を高くする。
・ 食後 30分は横にならない。
解説 : 川崎医科大学 総合医療センター 春間賢 特任教授。
2018年6月13日放送の「ガッテン」より、「せきが止まらない! 歯が溶ける! 犯人はまさかの“胃”!?」からのメモ書き。
その後編です。

□ 胃人から分かったこと

最新情報!
研究で今、日本人の胃が、さらに逆流しやすい状況になっていることが、分かってきたらしい。
その前にまず、胃の200年にわたる研究を、見ていきましょう。
登場するのは、3人の「偉人」ならぬ「胃人」。
胃の研究に貢献した人たちだ。
[1]
まずは、カナダ人のこの方。
アレクシス・サンマルタン(1802~1880)。
実は、このサンマルタンさん、ある大きな事故で、胃と体の外とが つながってしまったのです。
(散弾銃が暴発して、腹部に直撃。奇跡的に命は取り留めたが、胃壁の穴が完全には塞がらなかった)
治療したのは、ウィリアム・ボーモントさんという医師。
この医師は、サンマルタンさんに謝礼を払い、胃に関する実験を行ったのだそうな。
穴から、糸で吊るした食べ物の欠片を入れて、取り出しては観察する。
すると、こんなことが分かりました。
食べ物の違いや その時の気分で、胃液の出方が変わる。
胃に穴が開いてしまった、サンマルタンさん。
その後、78歳まで生きて、たくさんの子宝に恵まれたのだとか。
[2]
お次は、オーストラリアの方。
バリー・ジェームズ・マーシャル(1951~)。
マーシャルさんは、ピロリ菌に関して、素晴らしい貢献をした人。
胃潰瘍の原因がピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)にあることを、発見しました。
なんと、この方、自らピロリ菌を飲み、ピロリ菌の影響で胃炎が起きたことを確認したんです。
というのも、当時、胃の中は強い酸で満たされているため、菌が生きていられるはずがないと、されていたんですね。
そこでマーシャルさん、自分を実験台にしたのだ。
体を張って、証明したというわけ。
その後、2005年には、(ロビン・ウォレンと共に)ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
[3]
3人目は、日本人。
この方こそ、日本人の胃が さらに逆流しやすい状況になっていることを、突き止めた人です。
岡山県にある、川崎医科大学付属病院。
川崎医科大学 総合医療センターの 春間賢 特任教授が、その人なのだ。
胃がんや胃潰瘍など、診察した患者さんの数は、10万人にも上ります。
春間先生は、ニコニコしながら言いました。
「胃酸、それから、胃の粘膜ですね」
「見てると、楽しい、楽しい、時間を忘れる」
「愛らしいですね、胃の組織ってのは」
先生は、コレクターなんです。
何に対してかというと、「胃の細胞」を集めている。
見せてくれたのは、「胃酸を出す細胞の標本」。
患者さんの検査や治療のため、数ミリの細胞を、一つ一つ採取してきました。
炎症が起きているかとか、粘膜の状態を、見るためだそうです。
その数、40年で 数千人分というから、驚きですね。
春間先生が医師になりたての頃、胃炎や胃潰瘍は重症化しやすく、亡くなる人もいる深刻な病気でした。
苦しむ患者さんのために原因を究明しようと、こうした細胞を活用してきたのだ。
多くの胃の細胞を見続ける中、先生は、ある異変に気づきました。
胃酸を分泌する細胞が増えている。
同じ面積の中にある細胞の数が、年々増加。
現代の日本人は、40年前と比べると、1.35倍にもなっていたのだとか。
先生によれば、「それで日本人の胃液が増えている」というのだ。
細胞が増えると共に、日本人の胃酸を出す力も上がっているというのです。
(他にも複数の研究が行われ、日本人の胃液増加が確認されているとのこと)
でも、そもそも、なぜ細胞が増えているのでしょうか?
□ 春間先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
川崎医科大学 総合医療センターの 春間賢 特任教授です。
そんなにたくさん食べているわけではないのに、胃酸がたくさん出てしまう。
多くの調査から、胃酸逆流が増える背景に、胃酸の増加があることが分かってきました。

<どうして、胃酸を出す細胞が増えてしまったの?>
春間先生によれば、そこには生活習慣の変化があるのだという。
特に、食べるものが変わってきた。
昔は、魚とか炭水化物が主でした。
しかし、戦後、肉を食べる量が増えたことで、消化のために多くの胃液が必要になったらしいのだ。
ちなみに、日本人の1日の胃液の量は、推定で 2~3リットル。
私たちの胃の細胞は、肉などの たんぱく質を食べると、特にたくさんの胃酸を出します。
戦後 70年で、日本人が肉を食べる量は、3倍に。
そのため、胃酸を出す細胞が、頑張らねばならない状況になってしまったんです。
結果、細胞が増えていったと、考えられます。
そしてさらに、もう一つ、日本人の胃酸増加に関係するものが。
それは、「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)」。
ピロリ菌に感染している胃は、炎症が起きて、胃酸が出にくくなるんです。
かつての日本人の多くが、胃にピロリ菌を持っていたといわれています。
つまり、胃酸が少なかったんですね。
しかし、衛生環境の改善や治療の結果、今では激減。

現代では、胃壁はきれいになり、胃酸がたくさん出るようになったというわけ。
ピロリ菌の除去は、胃潰瘍や胃がんのリスクを大きく下げるので、重要です。
しかし、一方で、胃酸が出やすくなることがあるんですね。
<胃酸を出す細胞が増えた影響>
春間先生によると、患者さんが若くなっているらしい。
例えば、20代や30代の、逆流性食道炎の患者さんもいるらしい。
さらに、アメリカやヨーロッパでは、小児の逆流性食道炎も多いのだとか。
肥満も関係するという。
太ると胃が圧迫され、胃酸が逆流しやすくなるのだ。
□ 胃酸の逆流 危険度チェック

次の質問で、いくつ当てはまります?
<胃酸逆流 危険度チェック>
・ ちょっと肥満が気になる。
・ 猫背だと言われる。
・ たくさん食べてしまいがち。
・ ストレスを感じることが多い。
・ お酒をよく飲む。
・ 食べてすぐ横になることが多い。
春間先生によると、1つでも当てはまる人は 胃酸にちょっと注意を とのこと。
なぜ、猫背だと、逆流しやすいのか?
それは、肥満と同じで、胃に圧力がかかりやすいから。
ちょっと背中を曲げると、お腹に圧力を感じませんか?
食べてすぐ横になることも、よくありません。

食後、すぐに横になると、逆流しやすい。
まだ胃の上部に食べ物がある状態で横になると、すぐそばに食道からの入り口「噴門」がくる格好に。
□ 胃酸で困らない生活のコツ

胃に違和感があったら、まず頼りたくなるのが「胃腸薬」ですよね。
<市販の胃腸薬には、どんな種類があるの?>
春間先生によると、薬局に行くと400種類ぐらいあるのだそう。
今回、それを 2つのグループに分けました。
[胃酸を抑える]
1つは、胃液を抑える薬。
あるいは、胃液を中和する薬。
これは、胸やけにいいのではないかと。
[総合薬]
もう1つは、いろんな成分が入った、いわゆる総合薬です。
胃の粘膜を保護したり、胃腸の動きをよくしたりします。
あと、胃が収縮すると痛みを感じるのですが、それを和らげる薬もある。
中には、胃酸を出やすくする薬もあるのだとか。
春間先生のお話。
「非常にたくさんの、いろんな作用のお薬が出てますけども、やはり、一時的な応急処置 という風に考えていただいて」
「これをずっと飲み続けるものでは、ないと思います」
「飲まれても 1週間、あるいは、2週間たっても症状が取れない時は、やはり、医療機関を受診して、きっちりまず検査を受けていただきたいと思います」
「重篤な病気が隠れていることがありますので、そこを忘れないでほしいと思います」
長期にわたって症状が取れない場合や、ひどい症状が出た場合は、医療機関で検査を!
<生活の中で、胃酸を抑える対策は?>
一番は、食事内容。
肉は大切なエネルギー源で、特に高齢者には意識して摂ってほしいもの。
ただ、量が問題になります。
食べ過ぎず、バランスのよい食事を心がける。
それが、胃酸を抑える第一歩。
腹八分目 が大切です。
先生によると、胃の粘膜はだいたい、1か月で入れ替わるのだそう。
つまり、食生活を変えた効果は、1か月程度で表れ始めるということ。
また、こんな方法も。
<食べ過ぎた時の逆流対処法>
・ 枕を高くする。
・ 食後 30分は横にならない。
まずは、寝る姿勢から。
これは、「日本消化器病学会」の「患者さんと家族のための胃食道逆流症ガイドブック」でも勧められているもの。上半身を上げた寝方です。
上半身が少し起き上がる枕を使うという、方法も。
なければ、枕の下に、たたんだ毛布をひいて角度を作っても、OK 。
先生のおススメは、だいたい10度以上の傾斜です。
目安は、厚手の毛布なら、3~4枚重ねくらい。

前述のとおり、食べてすぐ横になるのも、NG です。
胃液が逆流しやすくなります。
先生が言うには、「できれば 2時間」とのこと。
「本当は、3時間起きていると一番いい」とも。
春間賢先生のお話。
「次にやっぱり、(胃酸で困る状況を)子どもさんたちに引き継がないように」
「まだ日本人は、海外の人に比べると、胃酸は少ないわけですから」
「ここでなんとか抑えることができれば…」
これからの研究にも、期待大ですね。

日本人は、胃酸が逆流しやすくなっている。
しかし、食生活の改善で、胃は変えられます。

ガッテン! ガッテン!
□ 胃酸の逆流に気づくには?

最後は、これ。
胃酸の逆流で体調不良かも?
そんな人のための、簡単チェック法です。
症状で多いのが「胸やけ」ですが、「胃もたれ」と感じる人もいます。
よく知られているのが、「ノドや口に 酸っぱいものが頻繁にこみあげる」や「ゲップが多い」というもの。
特に、「食後1~2時間によく症状が出る人」は、胃酸の逆流の疑いあり。
まず、腹八分目などの「食生活の改善」を心がけてください。


来週は、お休みになります。
ガッテンの代わりに、美と若さの新常識「発見! “痩せる脂肪”の極意」が放送される。
次回は、6月27日の放送。
ワカメなのに、でろんでろん。
さらに、どろどろ。
でも、おいしい。
「魅惑の食材! わかめ 未知との遭遇」。
前編 → 【新型胸やけ】 胃酸で 歯が溶ける?
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→ 「胃の老化とピロリ菌 呼気検査で見つける」
→ 【胃痛の原因】 胃の上が熱い 胸やけ
→ 【胃の病気】症状別の対策 唾液を増やすおサルさん体操
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