【血糖値と認知症】 HbA1c インスリンとの関係/ガッテン
甘いものを控えて、血糖値を下げると、もの忘れが改善する。
というのも、血糖値が高い状態が続くと、脳は糖不足に陥ってしまうのだ。
インスリンと記憶力の関係とは?
解説:広島大学 名誉教授 鬼頭昭三。
マックマスター大学 教授 ハーツェル・ガースティーン。
2018年5月23日放送の「ガッテン」より、「物忘れ&認知症を予防! “記憶物質”大発見SP」からのメモ書き。
その前編です。

□ 〇〇が高いと 記憶力が低下する?

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

ズバリ、「認知症と血糖値の関係」について。
実は最近、もの忘れについて、大発見があったんです。
なんでも、ある物質で、もの忘れが改善するのだという。
記憶を良くする物質が、人間の体内で作られているというのだ。
しかも、その物質がちゃんと働いているかどうか、簡単に確かめる方法まである。
血液検査表の中に、もの忘れとすごく関係する項目があるんだって。
その検査項目とは、「血糖」。

そう、血糖値と もの忘れには、意外な関係があるのだ!
[体験談(1)]
78歳の女性、Aさん。
5年ほど前から、もの忘れが増え、悩んでいました。
Aさんに多かったのは、買い物や約束に関する もの忘れ。
店まで行ったのに 買うものを忘れてしまったり、友達との約束を忘れてしまったりすることが、増えたのだという。
「ちょっと、これはボケの始まりっていうか…」との疑念も。
心配になり、主治医に相談したところ、あるアドバイスを受けました。
それを実践したところ、なんと、もの忘れがみるみる改善したんです。
そのアドバイスとは、「甘いものを減らす」こと。
例えば、おやつを 今まで「1個」だったのを「半分」に減らすとか。
料理を作る時は、砂糖を使わずに煮るとか。
甘いものを減らすようになってから、4年。
もの忘れが減ったことを、家族も実感しています。
[体験談(2)]
90歳の女性、Bさん。
Bさんも、10年ほど前から、薬の飲み忘れや用事を忘れてしまうことが増えたらしい。
ところが、Bさんも、甘いものを控え、食事でも糖質の多いごはんの量をすくなめにしたところ、もの忘れが減ったんです。
Aさんも Bさんも、甘いものを控えて、血糖値を下げることで、もの忘れが改善したってわけ。
実は、血糖値と もの忘れの間に 密接な関係があることは、様々な研究で報告されています。
この方もそう。
マックマスター大学の ハーツェル・ガースティーン教授。
ガースティーン教授たちは、血糖値が高い50代から60代の男女 3000人を対象に、様々な脳の機能を調べるテストを実施しました。
すると、1~2か月の血糖値の平均を示す「HbA1c(ヘモグロビン エー ワン シー)」という値が高い人ほど、記憶力のテストの成績が良くないことが、分かったのだそうな。
「HbA1c が1%高くなると、テスト成績が 1.75ポイント低下する」
ガースティーン教授の解説。
「こうした記憶力の低下は、なにも、糖尿病の患者だけに限りません」
「ちょっと血糖値が高いくらいでも、起こります」
「気づかぬうちに、認知機能は、確実に落ちているんです」
血糖値が高くなると もの忘れしやすくなることは、今、世界の研究で明らかになりつつあるんだって。
「 HbA1c 」とは、1~2か月の血糖値の平均を示す値。
これが高くなればなるほど、もの忘れしやすくなると。
ん?
でも、脳って、糖分を必要としてるんじゃないの?
□ 脳と血糖値の関係

糖分が欠かせない人たちと聞いて、誰を思い浮かべます?
おやつタイムが欠かせないのが、将棋の世界です。
対局時間が8時間にも及ぶ タイトル戦では、10時と15時に おやつの時間がある。
みなさん、お気に入りのものを食べます。
そんなニュース映像、見たことありませんか?
羽生善治 永世七冠は、ケーキ派なのだとか。
ひふみんこと 加藤一二三 九段は、チョコ。
藤井聡太 七段も、チョコを口にしてたこと、ありましたよね。
頭を使うと、血糖値に、どれだけ変化が起きるんでしょう?
ガッテンボーイの宮森右京くんが、実験してくれましたよ。
最新の血糖値測定器で、15分ごとのデータを記録し、その変化を見ます。
ブドウ糖 50g が入った水を飲んでもらって、実験スタート。
まずは、何もしない時の血糖値の変化から。
ブドウ糖を摂取してから、およそ45分で、ピークに。
その後、緩やかに下がっていき、およそ2時間で、元の値に戻りました。
そして、今度は別の日に、ブドウ糖を飲んだ後、頭をフル回転してもらったぞ。
「記憶力テスト」として、文を読みながら、赤い線が引かれた単語を覚えてもらいます。
テストを始めたのは、ブドウ糖を飲んでから 30分後なのですが、そこから血糖値は急降下。
その後、テストが終わると、下降はなだらかになり、2時間後に元に戻りました。
血液中の糖が 脳で消費されたと、考えられます。

カナダのお医者さん、ハーツェル・ガースティーン教授は、3000人の調査で、糖分を摂り過ぎると もの忘れがひどくなると、教えてくれました。
でも、糖分がないと、人間は生きていけません。
こりゃ、どうすればいいんだろう?
というか、なぜ、糖がもの忘れを引き起こすの?
どうも、血糖値が高い人の脳では、不思議なことが起きているようです。
糖がいったい どの部分で使われているか、調べた画像がこれ。

赤いところが、糖が使われている部分です。
脳に集中していることが分かりますね。
なんでも、脳は 糖を 1日に約100g 消費するのだという。
上の画像は、血糖値が正常な人の場合です。
では、血糖値が高い状態が長く続いている人の場合、どうなっているのでしょう?
下の画像は、正常な人の脳に対して、血糖値が高めな人の状態が、どう違うかを表したもの。
色のついたところ、特に緑色の部分は、通常の脳と比べて、糖の取り込みが悪くなっていることを示している。

不思議なことに、血糖値は高いのに、脳は糖不足に陥っているんですね。
血糖値が高めの人は、身体にたっぷり糖があるはずなのに、なぜか脳は、糖を取り込みづらい状態に…。
しかも、特に記憶を司る「海馬」の周辺で、糖不足が起こるんです。
この謎の現象を引き起こすのが、実は、人間の血液中に流れる「ある物質」。
何だと思います?
ヒントは、カタカナ5文字。
その物質とは、「インスリン」。
食事を摂ると、消化されて、血液中に糖が出ます。
血糖値が高い状態に、なるわけですね。
で、何が この糖をエネルギーとして使ってくれるのかというと、各細胞になります。
でも、そこに糖があるだけでは、細胞は糖を取り込むことができないんです。
その時、助けてくれるのが、すい臓から出るホルモン、「インスリン」なのだ。
このインスリンが細胞に働きかけることで、糖が細胞に取り込まれ、血糖値が下がることになります。
インスリンとは、すい臓から分泌されるホルモン。
糖を血中から細胞の中に運び、血糖値を下げる役割がある。
さあ、このインスリンが、記憶力とどう関係するのでしょう?
□ インスリンともの忘れの関係

インスリンを研究し続けて何十年という、専門家がいます。
神奈川県にある、「湘南ホスピタル」。
広島大学 名誉教授の 鬼頭昭三 先生に、教えていただきましょう。
先生は、90歳。
今も現役バリバリのお医者さんなのだ。
毎日、入院と外来、合わせて、30人以上の患者さんを診ているのだとか。
矍鑠(かくしゃく)としてますね。
聴診器を忘れるなど、ちょっとお茶目だけど。
この鬼頭先生、実は、5年前に発表したある共同研究が、世界で注目を集めたんです。
それは、ネズミを使った記憶力の実験だという。
水を張ったプールにネズミを放し、泳いで高台に着くまでの時間を、計測する。
同じ実験を繰り返し、高台の位置を覚えて、どれだけタイムを縮められるか、記憶力を調べました。
まずは、特殊な方法で、脳でインスリンが効かないようにしたネズミを、プールに放します。
すると、同じところを何度もグルグル。
結局、13分かかって、ようやく到達しました。
その後、1週間ほど 同じテストを繰り返すと、5分まで縮まりましたが、なかなか高台の位置を覚えることができませんでした。
次に、このネズミの脳に、たった1回、インスリンを注入しました。
そして、同じ実験を行うと、なんと、1週間後には、わずか11秒で到達したんです。
記憶力が劇的にアップしたというわけ。
鬼頭先生のお話。
「ビックリしましたね」
「まさか 1回打っただけで、正常なネズミになるとは思わなかったので」
「要するに、我々の記憶を良くする物質っていうのは、我々の身体の中で作られているわけです」
インスリンというのは、いわば「記憶物質」。
ところが、糖分を摂り過ぎて、血糖値が高い状態が続くと、このパワーが脳まで届かなくなってしまうんです。
さあ、ここがポイントだ!
血糖値が高いと、インスリンはどうなってしまうのでしょうか?
<メカニズム>
甘いものを摂り過ぎ、血糖値が高い状態が続くと、身体中に糖があふれます。
血液中に、たくさんの糖がある状態になるわけですね。
この状態は、人間の身体にとって、とても危険な状態。
放っておくと、毛細血管が次々に ダメになってしまいます。
そこで活躍するのが、インスリンです。
インスリンが頑張って、糖を細胞へと運んでくれるんですね。
ですが、この時、ある弊害も生じてるんです。
頑張りに頑張る、インスリンくん。
この時、ついついお留守にしてしまうのが、脳なんです。
血糖値が高いと、インスリンは身体の糖を優先、脳の一部が糖不足に なってしまうのでした。
すると、どうなるか?
脳の中でも特に糖を必要とする記憶の部分で、そのダメージは最も顕著に出るのだという。
簡単に言うと、こうなります。
「もの忘れ=血糖値高め」
血糖値が高めの状態が続くと、もの忘れしやすくなる。
(もちろん、原因のすべてが血糖値というわけではありません)
結果、脳がインスリン不足に陥って、脳が糖不足になる。
それがもの忘れにつながると。

血糖値が高めで、脳が糖不足に!
すると、もの忘れが起きやすくなる。

ガッテン! ガッテン!


後編では、簡単チェック法や、詳しい解説を紹介!
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