【肝炎ウイルス検査】 佐賀県 江口有一郎/ガッテン
注射器の使い回しの禁止が通達されたのは、いつだと思います?
意外と最近なんですよ。
佐賀県の取り組み。
なぜ、肝炎検査を受けてくれないのだろう?
そこで、「SAGA 肝がんワースト1 汚名返上プロジェクト」を実施。
はなわさん出演のCMを流した。
C型肝炎は、薬で身体からウイルスを消すことができる。
2~3か月、毎日薬を飲むだけでOK。
まずは検査を受けましょう。
解説:佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センター 江口有一郎 特任教授。
2018年5月16日放送の「ガッテン」より、「あなたは受けた?“がんにならない”検査」からのメモ書き。
その後編です。

□ 肝炎ウイルスの感染源

お次は、肝炎ウイルスに関する、あるチェックについて。
なぜか、関係なさそうな、3つのVTRが流されました。
1つ目は、空手チョップでおなじみの、力道山。
街頭テレビの時代ですね。1950年代。
2つ目は、売れに売れまくった曲「およげ! たいやきくん」。
歌うのは、子門真人さんです。1975年。
3つ目は、ソウルオリンピック。
ん?
でも、これらと肝炎に、どんな関係が?
次に流れた映像は、ツベルクリン接種会場。
白黒映像ですね。1950年代のもの。
これでピンときた人も、いるかもしれません。
この頃は、同じ注射器を使いまわしていたんです。
実は、先に紹介した3つの時代は、注射器の使いまわしが行われていた可能性があるのだ。
現在はもちろん、そんなことはありません。
しかし、当時は他にも、ウイルス対策がなされていない輸血、それから、母子感染、カミソリの使い回しなどで、血液を介して、感染が広がったと言われています。
<かつての主な肝炎ウイルスの感染経路>
注射器の使い回し。
輸血。
母子感染。
カミソリの使い回し。
意外に思うかもしれませんが、注射器の使い回しの禁止が 正式に通達されたのは、1988年の1月なんです。
<注射器の使い回しの禁止>
1988年1月に 厚生省(当時)より通知。
もちろん、それまでに、自主的に使い回しを やめていた医療機関もあります。
しかし、正式に禁止になったのは、1988年なんですね。
今現在 30歳以上の日本人、およそ9000万人が、この条件に該当するとのこと。
□ 肝炎ウイルス検査

続いて、衝撃のデータをご覧ください。
どのくらいの人が、肝炎ウイルスの検査を受けているか?
20歳以上の日本人、およそ2万人の調査結果です。

受けてない人は、51.9% 。
自ら受けた人は、17.7%。一番少ない。
出産や手術で受けた人が、30.4%。
1993年以降に、出産や大きな外科手術を受けた人の多くは、C型肝炎の検査を受けていると考えられる。
このような背景があるので、検査を受けてもらうための様々な取り組みが、行われています。
下は、厚生労働省のポスター。

「あなたは肝炎ウイルス検査を受けましたか?」
「肝炎の感染に気づかないまま放置すると、肝硬変や肝がんなどの重い肝臓病を、発症するリスクが高まります」
「まずは、検査を受けてください」
「どんな検査なの? → 簡単な血液検査を行って、結果は後日お知らせします」
「どこで受けられるの? → お住いの市区町村での地域健診、最寄りの保健所や委託医療機関です」
「検査の結果が陽性だったら…」
「肝臓病の専門医療機関や相談センターをご案内しますので、安心して精密検査や適切な医療を受けてください」
「インターフェロン治療や核酸アナログ製剤治療を受ける場合には、医療費助成制度があります」
番組冒頭で紹介された、街中で検査を勧めている、先生。
活動されている場所は、佐賀県です。
先生がいるのは、佐賀大学医学部附属病院。
肝疾患センターの 江口有一郎 特任教授が、その人だ。
佐賀県は、もともと肝炎の患者さんが多く、肝臓がん死亡率が 18年連続で ワースト1でした。
江口先生は、それをどうにかしたいと、考えているんですね。
江口先生のお話。
「病院に辿り着く、我々の所に辿り着く方々というのは、かなり重症化された方(も多い)」
「だけど、そういう方々も、いきなり肝臓がんになるわけでもないし、いきなり、肝硬変になるわけでもなくて」
「長い時間かけて、病気が進行していて、結果的にそうなってしまったと」
「願わくば、佐賀県で 肝臓がんで亡くなる方を、ゼロにしたい」
そこで、10年ほど前、江口先生は、県民に肝炎ウイルス検査を受けてもらうための活動を、開始したんです。
各地で年間、300回もの講演を実施。
専門家同士で、何度も議論をして、対策を考えました。
しかし、検査を受けてくれる人は、毎年1万人程度。
なかなか増えなかった。
そこで先生が始めたのが、駅前などでの「検査に行かない理由」の聞き取りです。
心理面からも、対策を考えようと思った。
時には、行きつけの飲み屋さんでも、聞き込み。
レジャーで行った海水浴場でも、聞き込みを行いました。
結果、聞いた人の数は、数千人以上に。
努力の賜物ですね。
でも、答えは、いつも同じようなものだったそうな。
そして、特に目立ったのが、「面倒くさい」という意見。
こうした情報をもとに、江口先生は、ある結論に至りました。
「これまでの佐賀の肝炎対策を、県、医師会、いろんな医療関係者が、タイアップしながらやってきた」
「その熱意とか、必要性とか、目的が、住民さんに全然 伝わってないんじゃないかっていうことに気づいて」
「これはちょっと、根本的に、やり方を変えなきゃならない、というところに行きついたんです」
そこで平成25年、検査に行かない人へ向けた、一大キャンペーンを実施することになったのでした。
結果、なんと、検査を受けてくれる人が、70%もアップ!
その秘密とは?
□ 江口先生の解説

ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センターの 江口有一郎 特任教授です。
街で立ってたのは、この先生なのだ。
佐賀で70人に聞いた!
<肝炎ウイルス検査を受けない理由>
特に理由は無いけど … 16人
感染してないと思うから … 7人
怖いし 面倒くさい … 7人
肝臓の数値は悪くないから … 3人
他の病気があるから … 3人
その他
余計なことを知りたくない
お酒を飲まないから
みなさん、いろんな理由を言われるようです。
でも、実際は、別の理由があるのではないか?
先生は、それを探しているのだそう。
前編でもあったように、肝臓は沈黙の臓器と言われます。
症状が、出にくい。
本当に肝臓のあたりが痛いって病院に来た時には、非常に進んでいる状態で、なかなか手の施しようがないというケースも。
なので、検査が大事になると。
<肝炎ウイルス検査>
肝臓は症状が出にくいので、一生に1回 検査を受けることが重要。
* 保健所などでは、原則無料。
先生の研究結果をいかした、検査を勧めるCM があります。
その名も、「SAGA 肝がんワースト1 汚名返上プロジェクト」。

マスコットキャラクターは言いました。
「肝がんの8割以上は、ウイルス性肝炎が原因」
「だから、早めの検査が大事なんだ」
そして、はなわさんが叫ぶ。
「SAGAの本気を、見せましょう」
「肝炎ウイルス検査に、い肝ばい肝(いかんば いかん)!」
こんなデータがあります。
「検査を受けた一番のきっかけ」について。

縦軸は、「検査を受けた一番のきっかけ」。
横軸は、「何から情報を得たか」。
約2万人が、1年間で検査を受けました。
その人たちに、検査に行くきっかけで最も大きなものは? と聞き、
9200名から回答を得て、解析した結果です。
「CM」だと、約50%の人が、そこから情報を得ていました。
しかし、それが検査を受けるきっかけになったという人は、40%にとどまっています。
先生は、「何が一番、刺さったのか?」を見たかったのだそう。
表を見ると、一番のきっかけになっているのは、「保健師さん」「看護師さん」「かかりつけのお医者さん」からの助言のようです。
でも、これも、2段階になっている可能性が。
「テレビCMを見る」→「病院に行って、助言を受ける」という風に。
情報源としては CM やテレビ番組があって、身近な人が最後に背中を押すと。
身近な人の「ひと言」というのは、やっぱり効くようです。
実際にアクションを起こす「きっかけ」として、大きい。
肝炎ウイルス検査の大切さを理解したら、家族や友人、職場の方に、「肝炎ウイルス検査を受けた方がいいよ」と、背中をひと押しする。
それが、アクションにつながるようです。
□ 治療法

ウイルスに感染してしまった時、どんな治療法があるのでしょうか?
江口先生の解説。
「B型肝炎、C型肝炎にしても、まずは感染していることが分かれば、血液検査をして、ウイルスの量や型を調べます」
「その後は、B型肝炎、C型肝炎、もう飲み薬でウイルスコントロールできて」
「C型肝炎は、身体からウイルスを消してしまうっていうお薬ができていて」
「特に、C型肝炎の場合は、2か月から3か月 飲めば、お薬 要らなくなっちゃう」
<B型・C型肝炎の治療>
飲み薬で、ウイルスをコントロール可能。
C型肝炎は、ウイルスを身体から消すことができる。
肝炎ウイルスの治療薬は、効果や副作用を考慮の上、医師の診断により、処方されます。
肝炎の治療費は、助成制度があるので、1か月に 1万円。
高額納税者でも、月2万円の自己負担。
江口先生によれば、仕事を継続しながら治療を受けている人が、ほとんどだといいます。
<がんにならない検査>
近くの病院や保健所で。
原則無料。
採血だけ。
C型肝炎ウイルスは薬で消せる。
<20歳以上の方は一度は検査をしましょう、と言われる理由>
昔行われていた注射器の使い回しの他にも、いろんな理由が考えらえます。
ピアスの共用、カミソリの共用などで、感染する可能性も、否定できません。
一度は、検査を受けましょう。
これまで、10年近く頑張ってきた 江口先生ですが、実は今、もう一つ大きな問題に直面しているのだそう。
せっかく検査を受けて、感染が分かっても、88%の人が その後も 治療を受けていなかったのだ。

江口先生のお話。
「これじゃダメって、思ったんですよね」
「我々が専門医として、患者さんのサポートをさせていただいているのは、本当に氷山の一角、ごく一部の人しか 目にしてなくて」
「そこで治そう治そうとか…」
「本当に衝撃…、愕然としました」
そこで江口先生は、治療を受けない人にも、その理由の聞き取りを行ったんです。
さらに、こうした人に治療を勧めながら、更なる対策を考えました。
その第一弾として、「治療医行かない人向けのCM」を製作した。
はなわさんが歌います。
「行かんば い肝(いかん)~っ!」
「行かんば い肝~っ!」
「陽性なら 病院へ」
「治療がすべて なんだぜ!!」
「肝炎治療 いかんば い肝~っ!」
この取り組みが、今後、もっと広がっていくことを期待したいですね。
□ 肝炎ウイルスの検査と治療

まとめです。
<肝炎ウイルス検査の受け方>
C型肝炎ウイルスの検査は、全国の都道府県にある「保健所」では、原則無料で受けられます。
近所のクリニックなどでも受けられますが、自己負担が必要な場合もありますので、直接お問い合わせください。
<肝炎の治療>
2011年頃から、C型肝炎ウイルスに画期的な新薬が、次々と登場した。
2か月から3か月の間、毎日 薬を飲むだけで、95%以上の人が、ウイルスをゼロにできるといいます。
[体験談]
甲府市に住む、71歳の男性 Aさん。
Aさんも、5年前、新薬でC型肝炎ウイルスを治療しました。
3か月毎日薬を飲むことで、完治した。
Aさんのお話。
「そりゃあ、もう、うれしかったですね」
「何もかも、明るくなったですね」
「主治医の先生には、君100歳まで生きるよ、って言われてます」
「本当かどうか、しらないけどね。うふふふふ」
薬による治療ですが、頭痛など、副作用が出る場合もありますので、医師と相談してください。
前のグラフ、覚えてます?
肝臓がんの原因、第2位は「HBV(B型肝炎ウイルス)」でした。

<B型肝炎ウイルスの検査>
C型と同じく、血液検査でOK。
保健所では、原則無料です。
<B型肝炎ウイルスの治療>
飲み薬でウイルスをゼロにすることはできませんが、限りなく少なくすることが可能。
さらに、B型の場合は、2016年から新たな対策が始まっています。
<B型肝炎のワクチン>
2016年から、定期摂取に。
0歳の間に3回、ワクチンを接種することで、抗体を作り、感染を防ぐ。
(B型は、免疫が未熟な子どもには、感染しやすいと言われているのだそう)
費用は無料。
詳しくは、小児科などにお問い合わせください。
B型・C型にかかわらず、聞きたいことがある場合は、各都道府県に設置されている「肝臓病 拠点病院」へ。
( http://www.kanen.ncgm.go.jp/ )
肝臓に詳しい医師や看護師がいるので、相談することができます。
一生に一度は、肝炎ウイルスの検査を受けましょう。
感染していたら、必ず治療を!


次回は、これ。
ついに見つけた、ある物質の真の力。
記憶力がアップする?
〇ン〇リンって、何だ?
「もの忘れ&認知症を予防! “記憶物質”大発見SP」。
前編 → 【がんにならない検査】 山梨県の取り組み
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→ 「肝臓がん予防 新時代! 検査は無料&肝炎ウイルスの新薬」
→ 「胸が大きい男は肝硬変? 女性化乳房」
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