【子どものアレルギー対策】 経口負荷試験について/ガッテン 後編
島根で発生した、肉アレルギー。
その原因は、身近にいる存在でした。
また、医療従事者やサーファーにも、意外なリスクが!
<子どもの対策>
実際に、原因物質を食べて調べる、「経口負荷試験」。
期待される効果と、問題となっている課題について。
解説:藤田保健衛生大学 医学部 客員教授 宇理須厚雄。
島根大学 皮膚科 千貫祐子。
国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター 副センター長 海老澤元宏。
2018年1月31日放送の「ガッテン」より、「食べてないのに突然発症!? 食物アレルギーの新常識」からのメモ書き。
後編です。

□ 意外な落とし穴

10年ほど前、島根県で、ある食べ物のアレルギー患者が、次々に見つかったことがありました。
それは、牛肉などの、「肉アレルギー」。
患者さんのお話。
「その時は、蕁麻疹(じんましん)が出たけども、最初は(原因が)分からなかったんです」
別の患者さん。
「気分が悪くなって、ここ(サッシ)を開けた途端に、ひっくり返って…」
「2時間半くらいは、空白です」
この肉アレルギーの原因を突き止めたのが、この方。
島根大学 皮膚科の 千貫祐子(ちぬき ゆうこ)先生。
偶然、肉アレルギー患者を診察したことがきっかけで、研究を開始しました。
患者さんから聞き取りなどをすること、実に10年。
ある共通点を発見したという。
それが、イヌやネコ。
そう、ほとんどの人が、ペットを飼っていたんです。
そして、ペットと肉アレルギーを結びつける原因が、ついに判明しました。
犯人は、「マダニ」だったんですね。
ペットについていたマダニが、人に付着。
血を吸う時に皮膚から入るマダニの唾液と、牛肉に含まれる成分とが、同じであることを突き止めたんです。
千貫先生のお話。
「マダニに気をつける方法を徹底したところ、1年半くらいで、あっという間に 2名が 牛肉アレルギーが治って、本当に良かったなって思って…」
このように、意外な原因で食物アレルギーになることって、実は、他にもあるんです。
<食物アレルギーになる意外な原因>
飼い主 → ペットのマダニ → 肉(牛、豚など)。
医療従事者 → 手袋の天然ゴム → バナナ、栗、アボカド。
花粉症の人 → 花粉(シラカバ、ハンノキなど) → リンゴ、キウイフルーツ、桃など。
サーファー → クラゲ → 納豆。
お医者さんがよくつける、手袋の天然ゴム。
これに、バナナや栗、アボカドと同じアレルギーのもとが入っているのだそうです。
天然ラテックスゴムといって、樹液からできている手袋の中に、それが入っている。
天然ゴム(ラテックス)でアレルギー反応のある人が、共通の物質を含む果物で、食物アレルギーを起こすことがある。
また、シラカバやハンノキなどの花粉にも、リンゴやキウイ、桃などと同じアレルギーのもとが入っています。
発症すると、口がイガイガしたりするとのこと。
花粉症の種類によって、果物の食物アレルギーになることがある。
海でサーファーがクラゲに刺されることで、起きることも。
納豆のネバネバ成分と同じなんですね。
クラゲと納豆のネバネバ成分に、共通のアレルギー物質が含まれていた。
このように、思わぬ原因で食物アレルギーになることがあります。
気になる方は、専門医に相談してください。

「食物 皮膚からアレルギー」。
身体の外側から入ってくるアレルギーも、あるんですね。
肌荒れと触り過ぎに、注意しましょう。

ガッテン! ガッテン!
□ 子どもの対策

続いては、子どもの食物アレルギー対策を、紹介します。
ここ10年ほどで、大きく変わったと言いますが…。
おととし発行された、「食物アレルギー 診療ガイドライン 2016」。
アレルギーの原因となる食べ物を避けるのではなく、安全な範囲で摂取することを勧めるように、なってきたのだとか。
(* 決して、家庭で判断せず、医師の指示に従ってください)
ガイドラインの作成に携わった専門家に、話を伺いました。
作成委員会の顧問、宇理須厚雄 先生です。
「最近は、安全量でもいいから 食べていた方が、より早く耐性がつくかもしれないと」
「『安全量の範囲でも食べましょう』と、こういったような指導が、今は、普通になされるようになってきたんですね」
一方、去年11月、子どもの食物アレルギーの臨床研究や検査で 重い症状が出たケースがあることが、発表されました。
今、医療の現場では、どういった 子どもの食物アレルギー対策が、行われているのでしょう?
愛知県は尾張旭市にある、子どもの食物アレルギー対策行っている病院。
「うりすクリニック(URISU CLINIC)」
病院に、4歳の男の子、Eくんが やって来ました。
Eくんは、生後3か月で、牛乳アレルギーだと診断されたのだそう。
なので、その後、乳製品を、一切 食べてきませんでした。
別の、8歳の男の子、Fくん。
Fくんも、生後3か月で、牛乳アレルギーを発症。
以来、7年間、牛乳を避けてきました。
お母さんは毎月、給食のメニューをチェックします。
牛乳が含まれている場合は、お弁当を作って、持たせる。
飲食店に行ったり、旅行に行く時も、気を遣うことが多いのが現状です。
一般的に、子どもの食物アレルギーの多くは、小学生になるまでには改善するといわれています。
そのため、これまで ふたりは、症状がよくなることを待って、牛乳を完全に避けてきました。
しかし、なかなか改善せず、食事制限の負担も大きいため、専門の医師のもと、半年前から、新しい食事法を始めたのです。
そこでまず行うのが、「経口負荷試験」と呼ばれる検査。
問診や血液検査などで、アレルギーの程度を把握し、実際に アレルギーである食品を、少しずつ摂取。
どこまでなら食べても症状が出ないか、安全量を見極めるテストです。
それを定期的に繰り返し、安全な量が増えているかを調べる。
保険適用されていて、子どものアレルギーが専門の全国の病院で受けられるとのこと。
<経口負荷試験>
医師の管理のもと、実際に原因物質を摂取し、安全量を定期的に調べる検査(保険適用)。
上で紹介した ふたりの男の子も、半年ぶり 二度目の検査を受けました。
まずは、Fくんから。
用意されたのは、牛乳です。
200mlで問題がなければ、ほとんどの乳製品が食べられるらしい。
牛乳を飲んで、その後、30分間。
身体に症状が出ないか、様子を見ます。
結果は、問題なしでした。
2回目は、さらに量を増やします。
お母さんが作った牛乳入りホットケーキを、食べてみる。
ここで、咳(せき)が出ました。
アレルギー反応です。
すぐに症状を抑える薬を飲み、症状が落ち着くまで、病院で安静にしました。
この日は、半年前より、10ml多い 50mlまで、飲んでも大丈夫だと分かりました。
続いては、Eくん。
牛乳 50mlから、スタートだ。
30分後、さらに、牛乳 50mlを飲みました。
3回目は、100ml。合計で 200mlになります。
飲み終わってから、2時間。
身体に症状が出ないか、チェックする。
結果は、OK。
前回より、大幅に改善していました。
しかし、検査は、これで終わりではありません。
お医者さんから、詳しい注意事項の説明を受けます。
<注意(症状が出やすい要因)>
入浴や運動の後。
風邪や喘息(ぜんそく)による体調不良など。
実は、この試験で調べた安全な量は、体調などによって、減ってしまうことがあるんです。
そのため、患者さん自身や家族も、日常での注意点を知っておく必要があるのだ。
こうして、細心の注意を払って行われている、新しい食事法。
専門家に、さらに詳しく教えてもらいましょう。
藤田保健衛生大学 医学部 客員教授の 宇理須厚雄 先生です。
「(先ほど紹介したのは)経口負荷試験といって、どこまで飲めるかということを確かめるテストなんですね」
「以前はですね、経口負荷試験で 陽性だと、もうそれは全部 除去しましょうという指導をしてたんですけれども、今は 安全量の範囲ならば 飲んでも食べても いいですよと」
「ひょっとするとですね、その安全量、少ない量ですけども、摂取してた方が 早く治るかもしれないと」
<現在の 子どもの食物アレルギー対策>
経口負荷試験で、安全な量を細かく測定。
可能な範囲で摂取することが、勧められている。
子どもの免疫機能は未発達なため、安全に摂取することで耐性がつくと、考えられているのだそうです。
安全な量が分かることで、食べられる食品の種類が増えるとも。
それによって、お子さんにとっても、生活が楽しみになるのではないかと。
<注意点!!>
自己判断では、決して行わないこと!
必ず、医師の指導のもとで、行ってください!
一方、去年11月、食物アレルギーの臨床研究で行われている治療で、一時 子どもが心肺停止になったことが分かりました。
それを受けた学会は、全国の専門病院などに調査。
今回紹介した経口負荷試験でも、重い症状が出ていたことを発表しました。
287の施設からの回答を得た結果、食物アレルギーの重い症状の報告が、18件あったといいます。

「誤食」、患者さんが誤って食べてしまって症状が出たものが、8件。
臨床研究で行われている治療に関連するものが、4件。
今回紹介した経口負荷試験の検査中にも、5件。
一時、呼吸困難などの重い症状が出ましたが、現在は全員、回復しているとのこと。
後遺症も、ありませんでした。
発表の内容について取りまとめた、学会の食物アレルギー委員会の委員長に、話を聞きました。
国立病院機構 相模原病院 臨床研究センター 副センター長の 海老澤元宏 先生です。
「経口負荷試験において 重い症状が出てしまうというのは、あってはいけないことだと思います」
「ですから、そういう事例が発生してしまったというところの、根本的な原因を追究して、そういうことが起きないように心がけたいと思います」
しかし、経口負荷試験をやめ、原因となる食品を完全に除去するにしても、問題があるといいます。
「除去すればするほど、逆に 治りにくくなっていくことも、最近、分かってきてます」
「重い症状が出ないように、我々 十分気をつけて、安全性の確保について、各施設の先生方に注意喚起したところです」
一方、食物アレルギーに悩んでいる方々は、今回の件について、どのように受け止めているのでしょうか?
患者さんや その家族の支援をする方に、聞いてみました。
NPO法人 アレルギーを考える母の会、園部まり子 代表です。
「せっかく、よくなりたいと思って 医療機関に行ったのに、そこで一度でも怖い思いをしますと、次の受診や負荷テストが、恐怖に感じてしまいます」
「トラウマになってはいけないので、やはり、病院に行ったら、安心・安全で、希望の持てるような診療であってもらいたいと願っています」
そして、患者側も 十分納得した上で、食物アレルギーの対策を、医師と共に 行うことが大切だと。
「不安なことや疑問や質問があったら、先生に納得のいく ご指導を受ける」
「双方で、納得して慎重に、負荷テストを進めていく必要があるのではないかと思います」
現在でも、学会では、個々の事例について 問題点を調べ、より安全な方法を目指そうとしています。
昔とは違った、よりよい方法を研究している最中。
それだけに、課題もあるようですね。
少しでも多くの人が、食物アレルギーで悩まない世の中になりますように。



次回は、2月28日の放送です。
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前編 → 【食物アレルギー】 食べてなくても発症?
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→ 「手足のかゆみ 全身型金属&連鎖型花粉果物アレルギー」
→ 「お好み焼き粉とダニ、お風呂のカビ、女性の水虫」
→ 「気づかないかぶれと樹状細胞、オープンテストで判別」
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