【食物アレルギー】 食べてなくても発症?/ガッテン 前編
新情報!
ニンジン、ハチミツ、魚など。
食べたことが原因でないのに、ある日突然、食物アレルギーになってしまう。
そのメカニズムは、どうなっているのでしょうか?
ラック博士がロンドンで行った「ピーナッツ・アレルギー」の調査で 明らかになった、その原因とは?
カギとなるは、樹状細胞とT細胞。
アレルギー回復の体験談。
対策は、「〇〇しないこと」だった。
解説:藤田保健衛生大学 総合アレルギー科 矢上晶子 教授。
2018年1月31日放送の「ガッテン」より、「食べてないのに突然発症!? 食物アレルギーの新常識」からのメモ書き。
その前編です。

□ 食べていなくても 食物アレルギーに?

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「食物アレルギー」について。
ちょっと常識が覆されますよ。
加工食品のパッケージを見ると、こんな表示、見かけませんか?
「アレルギー表示」
「本製品に含まれるアレルギー物質」
「アレルゲン」
中には、このような表示も。
「乳を含む製品と共通の設備で製造しています」
「えび、かにの生息域で採取しています」

では、みなさん、食物アレルギーの原因を、ご存知でしょうか?
ここで、新情報!
なんと、食べたことが原因でないのに、ある日突然、食物アレルギーになってしまうことが、判明したというのです。
アレルギーの専門医は、言いました。
「食物アレルギーの新たな原因が分かったことによって、今 アレルギーの世界は、180度転換しています」
また、別のアレルギー専門医も、こう言った。
「これまで以上に、患者さんたちを、救うことができる可能性があります」
その新たな原因とは、何なのでしょうか?
スタジオに運ばれたのは、現在 食物アレルギーに指定されている食材です。
<アレルギー表示対象品目>
卵、乳、小麦、そば、大豆、
ごま、落花生、カシューナッツ、くるみ、
えび、かに、あわび、いか、いくら、
さけ、さば、鶏肉、牛肉、豚肉、
オレンジ、キウイフルーツ、バナナ、もも、りんご
まつたけ、やまいも、ゼラチン。
これらは、ひどいアレルギーを起こすものや、報告の頻度が多いことから表示対象になっている、27品目。
さて、今回のテーマは、今まであまり聞かなかった話。
食べたことが原因ではないのに、食物アレルギーになってしまう。
3人の方が、体験談を話してくださいました。
[体験談(1)]
「体質が変わった?」
主婦のAさん。
40歳の時、ある意外な食べ物のアレルギーになりました。
その食べ物とは、「ニンジン」。
Aさんは、25歳で結婚。
子どもの頃から、まったく ニンジン・アレルギーはなく、普通に食べていました。
ところが、結婚から15年のある日、突然、ニンジンを食べた時に、アレルギー症状が出たのです。
ニンジンを生で すりおろしたジュースを飲んだら、ノドが かゆくなった。
その後、病院を受診し、検査したところ、ニンジン・アレルギーだと判明しました。
以後、ニンジンを食べられない状態に。
これは、どういうことなんでしょう?
突然、ニンジンが身体に合わない体質に、なってしまったのでしょうか?
[体験談(2)]
「たくさん食べていたら…?」
神奈川県に住む主婦、Bさん。
3年前のある日、食後に、謎の胃痛に襲われたといいます。
立ってられないような、胃の痛みだった。
まるで、中が腫れて、臓器がぶつかり合うような感じだったという。
何度か同じ症状が続いたため、病院で検査することに。
すると、「ハチミツ・アレルギー」だと診断されました。
実は、Bさんには、思い当たる節があった。
ごはんを炊く時に入れると おいしくなると聞いて、ずっと実践していたのです。
また、砂糖の代わりに、ハチミツで調理していました。
Bさんは食べ過ぎを疑いましたが、本当の原因は、別にあったようですよ。
[体験談(3)]
「体調不良のせい…?」
33歳の男性、Cさん。
19歳の時、魚アレルギーになってしまったという。
高校卒業後、家を出て、ホテルのレストランに就職。
ですが、仕事に慣れず、体調不良の時に、最初の症状が出ました。
味見で魚を口にしたのですが、食べてしばらくすると、ノドがむせるというか、かゆくなった。
これは何だろうと、Cさんは考えました。
風邪だろうか? 体調が悪いのだろうか?
ところが、十分な休息をとったにもかかわらず、症状は悪化。
次々に、いろいろな魚で、症状が出るようになってしまいました。
ついには、魚のスープ(ブイヤベース)を飲んだだけで、パタッと倒れてしまった。
Cさんは、退職せざるを得ませんでした。
アレルギーで、人生に影響が出てしまったのです。
3人のきっかけや経緯は、バラバラです。
なぜ、突然、食物アレルギーに なってしまったのでしょうか?
共通する原因は?
□ 原因は さわり過ぎ?

今から10年ほど前、ある食物アレルギーに関するイギリスの研究が、世界に衝撃を与えました。
それは、「ピーナッツ・アレルギー」。
当時、子どもたちの間で、急増していたんですね。
大学院生のポール・ジョーンズさん。
アレルギーを発症したのは、3歳の頃。
初めてピーナッツを食べたところ、体中に発疹が出て、病院に搬送されたといいます。
診断は、ピーナッツ・アレルギーでした。
それからは、誤ってピーナッツを食べてしまった時のために、症状を抑える注射を持ち歩いているのだそうな。
ポールさんのお話。
「これ(症状を抑える注射)が、僕の命綱です」
「絶対に、手放せません」
「おかげで、僕は、知らない場所には、行けなくなりました」
当時、イギリスなどでは、ピーナッツ・アレルギーの患者は、10年間で 2倍にもなっていたらしい。
この原因を調べようと立ち上がったのが、ロンドン大学の ギデオン・ラック 教授です。
ラック博士は、ロンドンに住む1万2千人以上の子ども達を調査。
すると、意外な事実が浮かび上がってきました。
<当時考えられていた、食物アレルギーのメカニズム>
カギを握るのは、身体の免疫をつかさどる「T細胞」。
何らかの原因で、このT細胞が ピーナッツを誤って 敵だと認識。
ピーナッツを攻撃するための細胞が、できあがります。
そして、再びピーナッツを食べた時、体中で その細胞に出会うと、アレルギー反応が起きるというわけ。
しかし、ラック博士が 子どもたちの生活習慣や血液などを詳しく検査したところ、食べたことが原因ではない新しいメカニズムを、発見したのでした。
ラック博士のお話。
「この結果には、とても驚きました」
「そして、〇〇〇がアレルギーの原因だと考えたのです」
ロンドンに住む 1万2千人以上の子どもを調べたところ、ピーナッツ・アレルギーにかかっている子どもの「91%」が、生後半年以内に、あるものを使用していたんですね。
そのあるものとは、「ピーナッツオイル入りの保湿クリーム」。
当時は、アレルギーを起こすピーナッツの成分が精製しきれずに、残っていたそうなんですね。
それが原因だと、ラックさんは結論付けました。
(現在では、ほとんどの商品が、きちんと精製されているそうです)
体験談で紹介した、3名の方々。
その原因は、「さわり過ぎ」だと思われます。
ハチミツ・アレルギーの Bさん。
実は、ハチミツを、あることにも使っていました。
「はちみる美容法」なるものを雑誌かテレビで観て、実践していたそうなんです。
洗顔クリームやボディソープにちょっと足して、使っていた。
ハチミツを3年間、肌に使用してたというわけ。
その後、食べても、アレルギーが起きるようになってしまいました。
魚アレルギーの Cさんは、どうでしょう?
Cさんはレストランで働き始めて、魚を触る機会が増えたようです。
1年後、魚を食べると症状が出るようになりました。
主婦の Aさんは、どうでしょう?
いろんな料理に、ニンジンを使いますよね。
当然、触る機会は多い。
Aさんは、15年間 調理でニンジンを触っていたというわけ。
<さわり過ぎとアレルギーのメカニズム>
T細胞くんは、リンパ節にいる免疫細胞。
体内を監視しています。
役目を例えるなら、交番のおまわりさんのようなもの。
T細胞くんが食べ物を敵だと認識すると、体中に攻撃用の細胞が増えます。
例えば、精製が不十分なピーナッツ入りの保湿クリームの場合。
精製が不十分でも、肌に塗っているだけでは、普通、敵だと認識しません。
ところが、皮膚のすぐ下にいる「ある存在」が、アレルギー発症のカギを握っているのでした。
肌から食物アレルギーが起きてしまった皮膚を、特殊な顕微鏡で見た画像。
光っているのは、「樹状細胞(じゅじょうさいぼう)」というもの。
立体的に横から見てみると、「活性化した樹状細胞」は バンザイしているような形になっています。

バンザイしているということが、どんなたいへんなことを引き起こすか?
先ほどの、精製が不十分なピーナツオイル入り保湿クリームを肌に塗った場合。
もともとの樹状細胞であれば、何も起きません。
しかし、活性化した(バンザイした状態の)樹状細胞の場合だと、保湿クリームの成分を捕まえてしまうのです。
そして、T細胞に、報告しちゃうんですね。
結果、攻撃用の細胞が増えてしまうのでした。
この状態で食べると、たいへんなことに。
アレルギー物質が攻撃用の細胞と出会い、蕁麻疹(じんましん)などのアレルギー症状が出てしまいます。
では、なぜ、樹状細胞が活性化してしまうんでしょう?
□ 矢上晶子先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
藤田保健衛生大学 総合アレルギー科の 矢上晶子 教授です。
体験談で紹介した 3人のうち、2名は、炎症のある部位で触っていたと、矢上先生は言います。
例えば、ニンジンを触っていた Aさんには、手湿疹がありました。
炎症のある肌で触れると、危険大!
食べ物に触れる量が多かったり、頻度が高いほど、注意が必要!
肌は免疫の器官なので、炎症があるところに、樹状細胞がバンザイするのだそうです。
また、長期間 塗ることでも、起こります。
自分では肌荒れと思っていなくても、実際は肌が荒れていることがある。
気がつかない肌荒れもあるので、長期間 肌につけるものには、特に注意が必要!
樹状細胞が活性化する理由、それは、肌荒れや湿疹などの炎症だったのです。
皮膚で炎症が起きると、「何が起こっているんだろう?」と、樹状細胞が活性化して、手を伸ばします。
その結果として、皮膚表面の食べ物を捕まえることがあるのだ。
実際に、全国 3500人以上の調理に携わる人を調査したところ、手に重度の肌荒れなどがある場合、職業的に食べ物を触る調理師などで「32%」、主婦では「7%」の人が、何かしらの食物アレルギーだと診断されたという研究があります。
<重度の肌荒れ(湿疹)と食物アレルギーの関係>
主婦:7%
調理師など:32%
(一般的には、成人の場合、1~3%)
しかし、食べ物由来の成分が入った商品は、いろいろありますよね。
石鹸、ソープ類、化粧品など、頻繁に触れたり、肌につけるものも、多い気がします。
矢上先生の解説。
「決して、すべてのものが 怖いことを起こすわけではないんですね」
「今は、多くの方は、安全に使えると思います」
「しかも、企業や行政、大学とかが組んでですね、すぐに情報をキャッチできるようなシステムを作っています」
現在、肌に使う商品の多くは、アレルギーが出ないように製造されているとのこと。
製品以外にも、注意が必要です。
キュウリでパックするなど、「食べ物を使った自己流の美容法」は、要注意。
製品であれ、自己流であれ、肌に異常が出たら、いつもつけているものを考え直した方が良いのかもしれません。
症状が強かったり、気になったりしたら、皮膚科を受診してください。
また、食べ物に触れて かゆみが出始めたら、初期症状かもしれません。
アレルギーが専門の皮膚科を受診しましょう。
<治療>
ニンジン・アレルギーでお困りの、Aさん。
実は、アレルギーになる前から、手の湿疹に悩んでおられました。
ひび割れも、ひどかったのだそう。
その頃、アレルギーの度合いを示す数値、血液検査の結果は、比較的重い「3」というクラスでした。
Aさんは、アレルギー専門の皮膚科医を受診し、湿疹の治療を受けました。
すると、症状が改善し、手の湿疹が減ったといいます。
(横浜市立大学附属病院 皮膚科の 猪又直子 先生)
また、手荒れが改善するまで、ニンジンには触らないようにしました。
その結果、数値は、軽度の「1」にまで改善したんです。
もうちょっと頑張ると、ニンジンをまた食べられるようになるとのこと。
(* すべての原因が肌荒れというわけではありません。また、改善しないこともあります)
他にも、原因となる食べ物を触らないことで、アレルギーを克服した人がいます。
[体験談(4)]
Dさんという女性が、その人。
当時、パン屋さんだったDさんは、3年前、小麦アレルギーを発症。
お店を続けることが、できなくなってしまいました。
それからは、生活が一変。
お医者さんからのアドバイスで、小麦粉に触れるのを、一切、やめたという。
仕事も、パン屋さんからギョーザ屋さんに転向。
ギョーザの皮は小麦粉ですが、皮を触る作業は、別の人(親戚)に やってもらっています。
小麦粉を触らなくなって、2年。
先日、血液検査で、小麦アレルギーが陰性になったのだそうな。
ついに、大好きだったパンも、解禁です。
でも、実は、食物アレルギーには、もう一つ落とし穴が…。


後編では、子どもの食物アレルギー対策と、経口負荷試験などについて、紹介します。
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