【第3のコレステロール(1)】 レムナントと総悪玉の計算法/ガッテン
検査結果が正常値なのに、脳梗塞になる人が多い。
その理由は?
健康診断の項目にある、「総コレステロール」。
でも、善玉(HDL)と悪玉(LDL)を足しても、イコールにはならないぞ。
カギとなるのは、第3の存在「レムナント」。
こいつが、動脈硬化の主な原因だった。
総悪玉の基準値と、計算方法も紹介。
群馬大学医学部 中嶋克行 研究員。
カーティン大学 ジョン・マモ教授。
岩手医科大学 講師 田中文隆。
2017年11月15日放送の「ガッテン」より、「コレステロールの新常識SP ~ 注意すべきはコレだ!」からのメモ書き。
その前編です。

□ 善玉と悪玉

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「コレステロールの新常識」です。
値が高いと、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの危険もあるという、コレステロール。
ところが、2万人以上のコレステロール値を専門家が詳しく調べたところ、ある意外な新事実が分かったのだという。
専門家は、こう言いました。
「今回、我々の結果ですと、心筋梗塞を発症された方の約半数である49%の方が、実は健康診断の LDLコレステロールが正常値だったという結果が」
コレステロールが正常値でも、心筋梗塞に?
その謎を解き明かしてくれるのが、血液検査の結果が書かれた「検査表」だという。
いったい、何が隠されているのでしょう?
ガッテンでコレステロールが取り上げられるのは、9回目だという。
今回、新しい情報が、もたらされたようですね。
健康診断の結果表を見ると、このような項目が。
総コレステロール。
HDLコレステロール。
LDLコレステロール。
下の2つは、こう呼ばれていますよね。
HDLコレステロール=善玉
LDLコレステロール=悪玉
ちなみに、これの略です。
HDL=High-Density Lipoprotein
LDL=Low-Density Lipoprotein
でも、何が善で、何が悪なんだろう?
スタジオに、模型が運ばれました。
これは、人間の身体の中を、簡単に表したもの。
そもそもコレステロールは、細胞の中にあります。
コレステロールは、細胞が細胞自身を作る材料にするために、持っているもの。
細胞膜を作る材料になる、大切なものなのだ。
そんな大切に持っているコレステロールですが、次第に古くなっていきます。
劣化するんですね。
すると、回収屋さんが、やって来ます。
古くなったコレステロールを、持って行ってくれるんです。
次に来るのは、配達屋さん。
新鮮なコレステロールを、細胞に届けてくれる。
では、回収屋さんと配達屋さん。
どちらが善玉で、どちらが悪玉でしょうか?
実は、こうなんです。
回収=善玉
配達=悪玉
新鮮なコレステロールを配達してくれるのに、どうして、悪玉なんだろうか?
実は、コレステロールを細胞に届けた後が、問題なんですね。
食生活の乱れなどで 積み荷が多くなっている時、余分なコレステロールが残ってしまう。
この細胞に必要な分を超えた「余った分」を、捨てちゃうんです。
こうして、血液中に、コレステロールが…。
ここで登場するのが、ガッテンではおなじみ、「マクロファージ」くん。
身体の中を掃除してくれる、白血球の一種です。
マクロファージは血管中に余分なコレステロールを見つけると、食べてくれます。
おかげで、血管の中は、きれいな状態に。
ですが、余った量が多すぎて、食べ過ぎると、マクロファージくんは 死んでしまうのでした。
しかも、このマクロファージの死骸が、血管の壁をグンと持ち上げて、血管を詰まらせ、細くしてしまうんです。
こうして起こるのが、動脈硬化や「プラーク」という瘤(こぶ)の状態。
配達する量が正常範囲内の場合は、問題ありません。
少ないと、細胞膜を作る材料が無くて、困る。
多すぎると、余った分が血管に出ていくので、よくない。
というわけなんですね。
□ 善玉でもない、悪玉でもない

さて、ここからが本題です。
善玉と悪玉の意味が分かりました。
検査表を見ると、「総コレステロール」という項目があります。
これは、善玉と悪玉を足したもの。
って、あれ?
足りなくない?
計算が合わないぞ。

足りない分は、いったい、何なんだろう?
今から、約24年前。
四半世紀前に、日本人のあるお医者さん、研究者が、回収屋と配達屋以外に、もう一つあるものを突き止めたのだそうな。
これが、足りない分ってわけか。
善玉でもない、悪玉でもない、残りの数字の正体は、何なのでしょう?
この謎を明らかにしたのが、この方。
群馬大学医学部の 中嶋克行 研究員。
「私の研究は、コレステロールの中でも、善玉でもない、悪玉でもない、(そんな)コレステロールの存在を明らかにしたことです」
中嶋さんが成功したのは、それまで誰も取り出すことのできなかった「謎のコレステロール」を血液から抽出すること。
1993年に論文を発表したのですが、当時、世界中から、驚きの声が上がったといいます。
そして中島さんは、2011年に、「ザック賞」を受賞(これは、日本人初)。
ザック賞とは、コレステロールの研究で、優れた功績をあげた人に与えられる、栄誉ある賞なのだ。
ちなみに、ザックとは、アメリカの科学者 ベニー・ザック博士のこと。
1957年、コレステロールの測定法を確立し、コレステロールの検査を 広く普及させた人です。
中嶋さんが発見した方法が、これ。
まず、血液を遠心分離器にかけます。
すると、赤いドロドロと黄色い部分に分かれる。
善玉と悪玉、2種類のコレステロールが含まれるのは、この黄色い部分。
本来なら、分析できるのは、ここまでです。
しかし、中嶋さんは、ここに自身が開発した薬剤を加えて、謎のコレステロールだけを分離させるのだ。
丁寧にかき混ぜること、2時間。
それが抽出されました。
透明だったのが、さらに2層に分かれてますね。
実は、一見、何の変哲もない上澄み部分に、謎のコレステロールが隠れているらしい。
その名も、「レムナントコレステロール」。
「レムナント(remnant)」とは英語で、「残りもの」という意味。
(他に、断片、はぎれ、なごり、面影など)
映画「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ小説の副題にも「レムナント」がありました。
さて、この、「レムナントコレステロール」。
善玉なのでしょうか? 悪玉なのでしょうか?
あるいは、善でも悪でもない、第3勢力か?
□ レムナントの正体

第3のコレステロール、レムナント。
これはいったい、どういうコレステロールなのでしょう?
血液中のレムナントコレステロールの画像があります。
食べ物から吸収されたコレステロールが、血液中に漂っている状態だという。

しかし、その詳しい働きは、長らく、謎に包まれていました。
それを明らかにした研究者が、オーストラリアにいた。
カーティン大学の ジョン・マモ教授。
コレステロールと血管の専門家です。
「我々がこの実験を行ったのは、どういったコレステロールが動脈硬化の原因となるかを突き止めるためで、その結果は驚くべきものでした」
マモ教授は、生まれつき動脈硬化になってしまうウサギを使って、研究を続けてきたのだそうな。
ウサギの血管の中で、コレステロールがどんな悪さをしているのか、独自の方法で観察しました。
その結果、こんなことが判明した。
血管の壁に溜まっている悪玉コレステロールは、全体の30%ほど。
全体の70%以上が、レムナントコレステロール。
つまり、レムナントコレステロールが 動脈硬化の主な原因だったのです。
こんな実験もあります。
掃除屋さんである、白血球の一種、マクロファージ。
このマクロファージに、悪玉とレムナントを、それぞれたっぷり与えました。
マクロファージが、どちらのコレステロールを多く取り込むかという実験です。
結果は、圧倒的に、レムナントの方でした。
取り込む量が、レムナントの方が かなり多いんです。
なんと、悪玉の約4倍。
これが何を意味するか?
前述のとおり、マクロファージは、余ったコレステロールを食べ過ぎると、死んでしまいます。
ということは、レムナントが多ければ、取り込む量も多くなって、マクロファージに与えるダメージも大きくなると。
例えば、こんな検査結果があるとします。
総コレステロール:210
HDLコレステロール:45
LDLコレステロール:120
この場合、210-(45+120)=45
レムナントコレステロール:45
善玉と悪玉以外の数値のほとんどが、レムナント。
この時、悪玉であるLDLと、極悪玉であるレムナントを足すと、45+120=165。
総悪玉:165
そして、この総悪玉には、基準値が。
<総悪玉の基準値>
総悪玉=総コレステロール-HDL(善玉)コレステロール。
(LDL(悪玉)+レムナント と同じ)
150以上:やや危険
170以上:危険

検査表によっては、総コレステロールが書かれていない場合があります。
そんな時は、悪玉コレステロールの値に、「30」を足してください。
総悪玉の、おおよその目安になるとのこと。
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後半に続く。
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