【血圧サージ 対策編】 タオルグリップ法/NHKスペシャル
「交感神経が過敏になる要因」と「引き金」が重なって、血圧が急上昇。
これを避けることが、カギになる。
<対策(1)> 測る → 意識するようになる → 引き金や要因の解消につながる。(南三陸町の取り組み)
<対策(2)> 握る → カナダのハンドグリップ法 → 日本用のタオルグリップ法。
解説:
自治医科大学 苅尾七臣 教授
久留米大学 甲斐久史 教授
京都府立医科大学 牛込恵美 講師
南三陸病院 西澤匡史 副院長
2017年10月29日放送の「NHKスペシャル」より、「“血圧サージ”が危ない ~ 命を縮める血圧の高波 ~」からのメモ書き。
その後編です。

□ 交感神経との関係

血圧サージの怖さは、分かりました。
では、対策は、どうしたらよいのでしょう?
まず大事なのは、なぜ血圧サージが起きるのか?
それを知ることだという。
異常な血圧の変動、それが「血圧サージ」。
カギを握るのは、身体の活動を高める、「交感神経」です。
手や足にある「末梢血管」。
その周りを取り囲むようにあるのが、交感神経なんですね。
交感神経が興奮すると、「ノルアドレナリン」という物質が出されます。
すると、末梢血管が収縮し、血圧が上昇。
これによって、身体の活動性が上がるのです。
例えば、朝起きた時。
活動に備え、交感神経が働き、血圧が上がります。
一方、夜になると、眠りに備えて 交感神経は働きを鎮め、血圧は下がる。

ところが、血圧サージの可能性がある人では、以下のようなことが起きているかもしれません。
朝起きた時、交感神経が働き過ぎて、血圧が急上昇。
夜に、交感神経の働きが収まらずに、かえって血圧が上昇。
こうして、血圧サージが起こる危険性があるのだ。

<交感神経は、なぜ、敏感になるの?>
甲斐先生の解説。
「実は、いくつかの要因が知られています」
<交感神経が過敏になる要因>
・加齢。
・肥満。
・塩分。
・飲酒。
・喫煙。
・ストレスなど。
「実は先ほど(前編)のチェックは、こういった点を見てるんですね」
苅尾先生のお話。
「こういった交感神経が高進する(高ぶる)ような要因があると、すると体質が変わるわけですね」
「血圧がちょっとしたことで、上がりやすい体質っていうのになるんです」
「そういう体質のところにですね、誘因となるようなトリガー、すなわち引き金が引かれて、初めて血圧が、どわ~っと、上がってしまうんですね」
「両方必要なんです」
加齢や生活習慣などの「要因」があると、交感神経がいわば、過敏な状態に。
そこに「引き金」が加わると、血圧サージになってしまうんです。
<引き金の例>
・力仕事。
・会議。
・医師の診察。
・怒り。
・コーヒー(カフェイン 300mg)。
・月曜日。
・飛び起きる。
・冷たい床。
・トイレ(大)。
・ダッシュ、筋トレ。
・くしゃみ、せき。
・気温が低い。
・冷水で洗顔。
・タバコを吸う。
・睡眠時無呼吸症候群。
・降圧剤の切れ目。
<降圧剤の切れ目>
牛込先生の解説。
「(例えば)朝に飲んだお薬の効き目が、次の日の朝まで効かなくって、翌日の朝、(血圧が)ぐ~っと上がってしまうことがあったり」
「もしくは、お薬の飲み忘れ等もあると、そういう場合は、お薬の効果が切れてきますと、そこから、ぐっと上がることがあるので、気をつけないといけないと思います」
□ 対策(1) はかる

対策としては、要因を解消し、引き金を避けることになりそう。
では、具体的に、どのようにすれば、よいのでしょう?
対策は、2つあるといいます。
まずは、1つ目から。
南三陸病院 副院長の 西澤匡史 先生。
西澤先生は、東日本大震災で被害を受けた南三陸町で、血圧サージを予防する取り組みを進めています。
町の住民300人に血圧計を配り、毎日、測定してもらっているのだとか。
<血圧サージ対策(1)>
はかる(測る)。
西澤先生が取り組みを始めたきっかけは、6年前。
災害の後には、脳卒中や心臓病の患者が増えることが、知られていました。
その背景に、「ストレスによる血圧サージの増加」があることを、西澤先生は疑ったのです。
調べてみると、大勢の人に、血圧サージが見つかりました。
ところがその後、不思議なことが起こったのだそうな。
測り続けていくと、血圧サージを起こす人が、減っていったのです。
その結果は、南三陸の救急車の出動記録にも、現れています。
取り組みの前、脳卒中や心臓病での出動は、48回でした。
それが 2014年には、23回に。

半分以下にまで、減ったのだ。
なぜ、測ることで、血圧サージが減ったのでしょうか?
[体験談]
この取り組みに参加した、男性。
毎日血圧を測ってみると、朝に度々、血圧サージが起きていることに、気づきました。
時には、180を超えることもあったという。
さらに、何をすると起きやすいのかも、分かりました。
仕事をすると、血圧が上がる。
以前は、朝起きてすぐに、農作業をしていたそうです。
寝起きは、活動に備えて、交感神経が敏感な状態になっています。
そんな時にしていた力仕事が引き金になり、交感神経が過剰に興奮。
血圧サージを引き起こしていたと、考えられます。
そこでこの男性は、朝起きたら、朝食を摂り、ゆっくりしてから、畑に出るようになりました。
こうして「引き金」を、解消したんですね。
さらに、タバコを控え、味の濃い食事を避けるなど、「要因」の解消にも努めるようになりました。
以前は「180」を超えることもあった上の血圧は、「100前後」に安定したといいます。
測ることで自分の血圧を意識するようになり、血圧サージの改善につながったんですね。
西澤先生のお話。
「朝晩、血圧を測定することで、どのようなことをすると血圧が上がって、どのようなことをすると血圧が下がるかということを、知ることができるんですね」
「そうすると、自然に、血圧が上がるような行為をですね、避けるようになります」
「こうして、血圧サージを防ぐことができるようになるんですね」
苅尾先生のお話。
「測らないと分からないんですね、血圧は」
「症状がなかなか出ることは、少ないんでね」
「予防においても、治療においても、測ると」
「その血圧をガイドにしながら、生活を組み立てていくと」
「生活習慣を改善していくということが、大事になってきます」
「この11月、12月、1月、2月ぐらいまでが、循環器の疾患って、増えていくんですね」
「血圧も上がっていくんです。変動しやすくなりますから」
「この番組を契機として、朝を測っていただいて、リスクを知って、脳卒中や心不全というものが減らせたらなと、思いますね」
□ 対策(2) にぎる

さあ、対策の2つ目は、何なのでしょう?
キーワードは、「にぎる」。
世界最先端の対策らしいのですが、どういうこと?
カナダはトロント。
高血圧や心臓病など、病気を抱える人専用の施設があります。
そこに、何かの器具を握っている人がいるぞ。
インストラクターに指示されて、握る。
名前は、「ハンドグリップ法」。
器具を、全力の30%で、2分間 握るだけです。

やってみた男性のお話。
「ただ握るだけで血圧が下がるなんて、信じられないよ」
でも、スタッフの女性は言います。
「場所を取らず、どこでもできるし、お金もかかりません」
「普段の生活に取り入れるには、とてもよい方法です」
ハンドグリップ法を2か月半続けた結果があります。
血圧サージの頻度が、半分以下にまで下がってますね。

<メカニズム>
物を握ると、腕の血圧が、一時的に高くなります。
その情報は、神経を通じて、脳に届けられる。
すると脳は、血圧が上がり過ぎていると判断し、交感神経の活動を抑えるんです。
これを繰り返すことで、交感神経の異常な興奮が抑えられ、血圧サージが減ったと、考えられる。
ゲルフ大学の フィリップ・ミラー博士。
「ハンドグリップ法は、脳に働きかけることで、血圧を左右する交感神経のバランスを、整えることができるのです」
ハンドグリップ法のポイントは、全力の30%で握ること。
カナダでは専用の器具を使っているのですが、日本では発売されていないそうです。
でも、でも、ご安心を。
実は、日本の医療機関で、身近なものを使った方法が、指導されてるんですよ。
東京都は港区にある、日野原記念クリニック。
ここでは、タオルを使っているのだ。
名付けて、「タオルグリップ法」。
この方法を編み出した、日野原記念クリニック 所長 久代登志男さんのお話。
「タオルを先ほどのような方法で、少し強めに握ると、だいたい最大握力の 2~3割になるということが、確認できました」

実験で 血圧サージありとされた人たちに、このタオルグリップ法を試してもらうことになりました。
ある女性は、夕食の下ごしらえの合間に、タオルをギュっ。
結婚を控えたある男性は、仕事をしながら、タオルをグリップ。
別の男性は、マイク代わりに、タオルを握る。
そして、1か月後、こんな結果になりました。
改善実験に参加してくれたのは、12名。
開始前の1週間と、開始してから4週目の1週間を、比較します。
その結果 ――
12人中、10人が、改善しました!
感想を聞くと、ただタオルを握るだけなので、負担はないのだそう。
<タオルグリップ法>
使うのは、一般的な、細長いフェイスタオル。
これを縦に1回、横に2回、折って、丸めて、握ります。
ポイントは、親指と他の指が、くっつかないこと。
(もし、くっつく場合は、細すぎるので、もう一度 折りたたむなどして、太さを調整してください)
これで無理なく2分間 握っていられれば、だいたい全力の30%の力だそうです。
タオルを、親指と他の指がつかない太さにする。
これを、2分間握る。
左右2回ずつ、計4回。
1日おきに、4週間。

甲斐先生のお話。
「これは本当に良い方法だと思うんですけど、あくまでもこれは治療じゃなくて、体質を改善するトレーニングなんですね」
「それをきちんと、理解していただきたいことと」
「お薬を飲んでらっしゃる方なら、このトレーニングをやっているからといって、お薬をご自分でやめるのは避けていただきたい」
お医者さんの治療が、まず第一。
それを忘れずに。
<運動すると血圧が上がる。これはサージだから、運動するなってこと?>
甲斐先生の解説。
「運動の種類によって、血圧に与える影響は、大きく違うんですね」
「例えば、ウォーキングやジョギングといった有酸素運動では、そんなに血圧は上がりません」
「むしろ、適度な血圧の上昇は、血圧サージを抑える物質を作ってくれるので、むしろ、良い影響が出るんですね」
「ですから、運動習慣のない方が、突然、激しい運動をやったりとかすると血圧サージが起きますけれど、日頃から余裕がある、ニコニコペースの有酸素運動に取り組んでいただければ、いいと思います」
<これから冬。うち寒いんですけど、気をつけることは?>
西澤先生の解説。
「気温の大きな変化も、引き金になるんですね」
「例えば、朝、ベッドから起きる前にですね、室温を高めたり」
「あるいはですね、冷たい床に、素足で触れないようにする。そのために、スリッパを履いたりとか、靴下を履いたりすることも、対策になるんですね」
<朝のシャワーは? 冬でも寒いと感じながら、浴びています>
牛込先生の解説。
「やはり、寒いというのが、血管収縮して血圧を上げますので、寒いという状況はよくないです」
「ですので、着替える場所、もしくは浴室、そういったところは暖かくして、対応されたらいかがかなと思います」
まずは、朝の血圧をチェックしてみては?
気になったら、専門医を受診。
改善トレーニングとして、タオルグリップ法を。


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