【血圧サージ 前編】 危険度チェック/NHKスペシャル
健康診断で正常でも、要注意!
朝、血圧が急上昇しているかもしれません。
そのメカニズムとは?
血管の伸び縮みが繰り返され、壁が硬く厚くなり、柔軟性を失う。
結果、脳卒中や心臓病、認知症のリスクが上昇。
自分で調べる方法は?
8つの質問からなる、危険度チェックも紹介。
司会:青井実、寺門亜衣子。
ゲスト:石田純一、榊原郁恵、小島よしお。
2017年10月29日放送の「NHKスペシャル」より、「“血圧サージ”が危ない ~ 命を縮める血圧の高波 ~」からのメモ書き。
その前編です。

□ 血圧サージとは?

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「血圧サージ」です。
39歳男性。
働き盛りで、体力に自信がありました。
にもかかわらず、脳卒中を発症。
原因は、血圧サージ。
そのリスクを抱える人は、推定で 1800万人。
他人事ではないかもしれません。
生活の中で、緩やかに変動している、血圧。
それがある時、急激に跳ね上がるのだ。
まるで、高波のように。
正常な人に比べ、血圧が高い状態が続くのが、「高血圧」。
これに対し、血圧サージは、瞬間的に高くなる現象です。

血圧が、急激に変動。
その度に、血管は、伸びたり縮んだり。
結果、血管にダメージが蓄積してしまうんですね。
もともと高血圧の人なら、より深刻な事態になることも。
「脳卒中」「心臓病」「認知症」
それらのリスクを大幅に高めることが、分かってきました。
イタリア高血圧学会 会長の話。
「“血圧サージ”は、深刻な病気につながる、病の窓です」
「今すぐ、対処しなければなりません」
先ほどのグラフを、もう一度見てみましょうか。
これは、1日の血圧。
いわゆる、上の血圧(収縮期血圧)を、グラフに表しています。

健康な人だと、朝から日中にかけて、緩やかに上がって、夜になると、下がります。
高血圧の人は文字通り、血圧が高い状態が続くんですね。
健康診断で、最高「140」/最低「90」mmHg 以上
家庭で、最高「135」/最低「85」mmHg 以上
最近、正常といわれる人の中でも、ある時だけ血圧が急上昇し、高い値を示すケースがあることが、分かってきました。
これが血圧サージ。
「サージ( surge )」とは英語で、「高波」のことです。
<血圧サージのリスク>
3年前に発表されたデータがあります。
全国のおよそ2万1000人の、脳卒中や心臓病のリスクを調べた結果です。
正常な人のリスクを、「1」とします。
高血圧の人では、これが「1.4倍」に。
そして、朝に血圧が高く、血圧サージが疑われる人では、「約2.5倍」。
さらに、高血圧と血圧サージが共にあると、「約4倍」にまで跳ね上がっています。

<大調査>
実際に、血圧サージは、どれほど広がっているのでしょう?
参加者は、20代~60代の男女80名。
健康診断での血圧は、正常範囲内です。
でも、ある方法で調べてみると、血圧サージが続々と発見されました。
使うのは、血圧計。
1人1台ずつ持ち帰り、家で血圧のデータを測定してもらう。
みなさん、昼間の健康診断では、異常なしでした。
でも、朝と夜は、分かりません。
それを調べてみようってわけ。
さあ、血圧サージは、どれくらいの人に潜んでいるのでしょう?
翌日、データが回収され、分析が始まりました。
朝か夜に、1回でも最高血圧が「135mmHg」を超えていた人を、血圧サージありとします。
結果は、こうでした。
80人中、25人に、血圧サージが見つかった。
(ちなみに、小島よしおさんも、165mmHg で、血圧サージありでした)
久留米大学 甲斐久史 教授の解説。
「大規模な調査によると、外来や健康診断で まったく血圧が正常だと思われてる方でも、全国だと、900万人に血圧サージの可能性があると言われてるんです」
「さらに、高血圧をお持ちの方は、4300万人いらっしゃるんですけれども、そういった方々は血圧サージを起こしやすくて、また影響も受けやすいので、用心が必要です」
□ 体験談

血圧サージが繰り返されると、何が起きるのでしょう?
ある日突然、命の危険にさらされた方がいます。
[体験談]
39歳の男性。
健康には、自信を持っていました。
ところが、2年前、突然、異変が。
急に、ガッと眠気がきた。
足がもつれて、ほとんど動かない状態になったという。
救急車で病院に運ばれる途中、男性は意識を失いました。
検査で、脳に出血があることが判明。
脳の血管が破裂し、脳卒中を起こしていたのです。
あと1日待って、意識が回復しなかったら、脳死と考えてください。
そう言われたと、奥さんは振り返ります。
なので、24時間、気が気でなかった。
薬による治療を受けて、4日後、男性は意識を取り戻しました。
しかし、後遺症は残り、右手の握力は、以前の「1/3」になってしまったという。
脳卒中は一般的に、高血圧や高血糖が原因で起きるとされています。
しかし、この男性の場合、健康診断などでの血圧は正常範囲。
血糖値やコレステロールも、問題ありませんでした。
それなのに、脳卒中が起きてしまったのです。
そして、その原因こそが、血圧サージだったのだ。
突き止めたのは、担当医であるこの方。
おんが病院 循環器内科部長の 吉田哲郎 先生。
使ったのは、夜間から朝までの血圧を測定する機械。
普段は調べない時間帯の血圧を測ったところ、分かったきました。
日中の血圧は、120台。
それが就寝時には、「135」に。
さらに睡眠中、血圧は、何度も上昇を繰り返していました。
最も高くなった時は、「197」まで上がっていた。

睡眠中、幾度も血圧サージが繰り返されていたのです。
□ メカニズム

なぜ、血圧サージが脳卒中を引き起こすのでしょう?
イタリアで行われた最新研究で、メカニズムが見えてきました。
サンタ・マリア・テルニ病院。
血圧サージを度々起こす 150人の血管を、徹底的に調べました。
すると、共通してある特徴が見られたのだという。
ペルージャ大学 ジャコモ・プッチ博士のお話。
「血管の壁が厚く、硬くなっているのが分かります」
「血圧サージが度々起きた結果だと考えられます」

血圧サージによって血圧が上がると、大量の血液によって血管の壁は押され、引き延ばされます。
その後、血圧が下がると、壁は元通りに縮みます。
この伸び縮みが負担となり、壁が傷むのだ。
その修復を繰り返すうちに、壁は硬く厚くなる。
結果、血管は柔軟性を失い、もろくなってしまうのです。
やがて、血圧サージによる圧力の上昇を吸収できなくなり、最悪の場合、血管の破裂につながってしまうことも。

これが、血圧サージの怖さ。
苅尾先生の説明。
「血管が、ず~~っと引き伸ばされて、テンションが かかってるのが、高血圧なんですね」
「血管が、ギュッと引っ張られて、収縮して、またグッと引っ張られて、収縮して。これが繰り返されると、内壁に負担がかかって、血管が硬くなって、分厚くなってしまうという、動脈硬化が進行していくんです」
京都府立医科大学 牛込恵美 講師のお話。
「血管が変動している場合は、いつも高い場合と違いまして、見つけられないことがあります」
「なので、(これまで)あまり注目されてなかったんですね」
「ただ、血圧サージがありますと、脳梗塞とか心筋梗塞が起こるという報告が出てきまして。それで国内外問わず、(今)非常に注目されていると思います」
□ 認知症との関係

血圧サージによる、血管へのダメージ。
他にも、怖い事態につながる可能性があることが、分かってきました。
もう一つのリスク、それは「認知症」。
山形県立中央病院 神経内科医の 山口佳剛 博士。
この日は、患者さんに、もの忘れの簡単な質問をする検査をしていました。
「Mini-Mental State Examination(MMSE)」
山口先生たち 山形大学の研究グループは、200人を超える高齢者に対し、記憶力など、認知機能のテストを、4年にわたって実施。
血圧との関係を調べたのだそうな。
結果は、こうなりました。

血圧サージが少ない人に比べ、多い人は、認知機能が低下した割合が、「38.5% → 59.7%」と、およそ「1.5倍」になっていたんです。
脳を調べると、ある特徴が浮かび上がりました。
血圧サージが多い人の脳には、MRI画像に、いくつもの小さな点が見られます。
これは、神経細胞が死んでしまっている場所。
血圧サージが繰り返されるうち、脳の末端の血管が傷つき、その先の神経細胞に、酸素や栄養が届かなくなった結果だという。
それが積み重なり、認知機能の低下につながったと、考えられます。
南三陸病院の 西澤匡史 副院長。
西澤先生も、血圧サージと認知症の関係について、調査を行っています。
「血圧サージは、脳卒中や心臓病などの突然発症する病気のリスクとなることが、分かってきてるんですが」
「最近では、自分で気づかないようなダメージですね、それが時間をかけて、脳に蓄積して、認知症のリスクを高めるということが、分かってきました」
気づかないうちに、ダメージが蓄積してしまう…。
自分で調べる方法は、無いのでしょうか?
苅尾先生のお話。
「測るタイミングなんですけど、やっぱり一番サージが出やすいのは、普通の人はですね、朝なんですね」
<自分で調べる方法>
朝の血圧を測定します。
・最高 135mmHg 以上が頻発する。
・5日間の変化の幅が、20mmHg 以上。
これらに当てはまると、血圧サージの危険あり!
例えば、朝食前に、血圧を測定します。
そのレベルが、135mmHg を超えだしたら、要注意。
数日間、測って、高低の差が 20以上あれば、変動しやすいことになります。

□ 危険度チェック

自分が血圧サージを起こしやすい状態なのかどうか?
今回、専門医の監修のもと、それを調べるためのテストが作られました。
監修してくれたのは、帝京大学医学部の 大久保孝義 教授です。
<血圧サージ 危険度チェック>
選択肢に それぞれ点数があって、それを足していき、合計点が高ければ高いほど、リスクも高くなります。
Q1)あなたの年齢は?
65歳未満(0点)
65歳以上(1点)
Q2)あなたの BMI(体格指数)は?
25未満(0点)
25以上(1点)
* BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例) 体重 47kg 身長 155cm の場合
BMI=47÷1.55÷1.55=19.6
Q3)深夜にトイレに行く?
0回(0点)
1回(1点)
2回以上(2点)
Q4)日中 眠くなることは?
あまりない(0点)
よくある(1点)
Q5)味の濃いものが好きですか?
好きではない(0点)
好き(1点)
とても好き(2点)
Q6)果物を食べる?
よく食べる(0点)
あまり食べない(1点)
Q7)お酒を飲む習慣は?
(1日1合以上を 週4日以上が、基準になります)
(ビールなら、500ml缶 を週4日以上)
ない(0点)
ある(1点)
Q8)タバコを吸いますか?
吸わない(0点)
吸う(1点)
質問ごとの点数を、足していきます。
6点以上:リスク高
4~5点:リスク中
3点以下:リスク低
<血圧サージに自覚症状はあるの?>
西澤先生の解説。
「自覚症状は、ありません」
「無いから、怖いんです」
「だからこそ、毎日、血圧を測定することをお勧めします」
<血圧サージになっても、頻度が少ない場合は、問題ないの?>
甲斐先生の解説。
「健康診断などで、血圧が正常であれば、頻度が少なかったら、あまり心配し過ぎることは無いかもしれません」
「しかしですね、先ほど、苅尾先生がお話しになられたように、2日に1回とか、1週間に4回ぐらい、朝の血圧を測って 135 を超えているような方は、要注意かもしれません」
「もともと高血圧がある方は、もっと注意が必要になりますね」


後編では、タオルを使った対策を紹介!
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