【胆石】 胆のうがんの前兆と予防法/ガッテン
インドにいる胆石ギネス記録のカンカリア先生。
日本では、持っている人の数は、約1千万人。
でも、半数は、痛みが出ないとも言われている。
本当に怖いのは、激痛ではなく、がんだった。
壁が厚くなったら、要注意。
危険なサインは、白い便と黄疸。
解説:千葉大学医学部附属病院 消化器内科 露口利夫。
2017年9月6日放送の「ガッテン」より、「油断大敵! 保有者数1000万人“胆石”の真実」からのメモ書きです。

□ 胆石のメカニズム

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「胆石」です。
ものすごく痛いイメージがありますが、必ずしもそうではないらしい。
そして、別の怖いことが…。
下の画像、何だと思います。

実はこれ、全部、胆石なんです。
スタジオに、セットが運ばれてきました。
「胆のう」の模型ですね。
胆のうは、袋のようになった臓器です。
ここに、油ものを食べた時に必要な「消化液」をためている。
番組曰く、肝臓で作られた油もの専用のスペシャル消化液。
それをいったん、ためます。
そして、食べた時に、必要に応じて、液を出すと。
その消化液の名前が、「胆汁(たんじゅう)」です。
胆汁は、茶褐色をしていて、ドロドロ。

ドロドロしているので、結晶ができることがあるんです。
その結晶が、胆石なんですね。
(尿路結石は、また別)
でも、胆石って、なぜ、できるんだろう?
向かったのは、インドのジャイプール。
ここに、胆石に関する数々の世界記録を持つお医者さんが、いるんです。
地元の外科医、カンカリア先生だ。
先生の部屋には、いろんな種類の胆石が保存されています。
2万人の患者さんたちから、集めたものなのだとか。
カンカリア先生は、1日に10件もの手術をこなすこともあるらしい。
自ら執刀した胆石の手術で、いくつものギネス世界記録を持ってるんですよ。
胆石を集める目的は、治療や研究に役立てるため。
長年の経験の中、カンカリア先生は、あることに気づきました。
実は、石を持っていても、痛くない患者さんが多いんです。
中には、17年間も胆石を持ったままだった女性がいたくらい。
別の男性は、1万1816個もの胆石を持っていたのだとか。

一方で、日本では、こんな方々が。
「胆石の痛いのは、本当に、ギュッて、痛くなりますので」
「寝られませんでしたね」
「寝ている時に、3日間ほど続けて、痛みが背中の方に来たんですよね」
「ちょっと、異常な痛みだった」
今、日本人で胆石を持っている人は、およそ 1000万人。
その中で、実際に痛みが出る人は、半数以下とも言われている。
でも、一度痛みだすと、突然、激痛が走ることもあるようです。
痛くなかった、インドの人。
痛かった、日本の人。
どうして、違いが出るのでしょうか?
(国の違いは、関係ありません)
そもそも、どういう時に、激痛が走るんでしょうね。
実は、胆のうの中にできた石は、中でゴロゴロしている限りにおいては、まったく痛くありません。
というのも、胆のうの中でいくら転がっても、それを感じる仕組みが、人体にはないのです。
胆汁が出る際、胆石も一緒に出て、運ばれていく場合も、痛みません。
便と一緒に、排出される。
痛いのは、こんなパターン。
胆石が、胆のうの出口や、十二指腸の出口に、詰まっちゃうケース。
そうなると、胆のうは、詰まった胆石を、一生懸命出そうとします。
実はこれが、激痛のもとなんですね。
胆のうの中で胆石がすごく大きくなった場合、出口よりも大きいので、出ていくことができません。
この場合、前述のとおり、痛みは出ない。
じゃあ、それでいいのかというと、実は、そんなことはないんですね。
□ 本当の怖さ

専門家の話を聞いてみましょう。
千葉大学医学部附属病院の 露口利夫 先生。
胆のうの病気の治療を専門的に行っている、お医者さんです。
「胆石の本当の怖さは、痛みがあるかどうかではなく、別のところにあるんです」
これは、どういう意味なんでしょうか?
[体験談(1)]
77歳の女性、Aさん。
9年前、胆石があることが分かりました。
ある日突然、朝起きた時に、横の胸(右側)が、チクチク痛んだ。
やがて、少しずつ痛みが強くなり、1か月が過ぎた頃、耐えきれなくなってしまいました。
病院で精密検査を受けると、胆のうに、40個もの胆石が詰まっていることが判明。
直ちに手術が行われ、無事、成功しました。
ところが、話はそこで終わりませんでした。
手術後、驚きの事実が伝えられたのです。
胆のうに がんがあることが、医師から告げられました。
胆のうや その周りにできる がんは、自覚症状の出ることが少ないため、見つけにくいのが現状。
そのため、様々な部位にできる がんの中でも、5年生存率が低いことで知られています。

幸い、Aさんのがんは 広い範囲への転移もなく、再発することもありませんでした。
Aさんが手術を受けた病院の医師。
都立駒込病院 神澤輝夫 先生のお話。
「半年から1年遅れていれば、手術できない状態になっていたのではないか」
「今回、たまたま(胆石の)症状が出て、来られたということで」
「そういう意味では、運がよかったんだと思います」
本当に怖いのは、激痛ではなく、がんになることだったんですね。
胆のう、そして、その周りの胆管にできる がんの死亡者数を調べたグラフ。

見ると、この30年で、死亡者数が倍増しています。
高齢者が増えていることもあるのですが、2015年現在で、約1万8000人が年間亡くなっています。
□ 露口利夫先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
千葉大学医学部附属病院 消化器内科の 露口利夫 先生です。
「実際に、胆石の人を毎年、様子を診ても、それほど がんが出てくるわけではないんです」
「ですから、そこまで怖れることはないんですが…」
その一方で、こんな話も。
「胆石と胆のうがんというのは、何らかの因果関係があるということは、知られています」
「胆石を持っている場合ですね、慢性的な炎症から、胆のうの がんができるということは、昔から考えられています」
胆のうの中の石は、いつも同じところにあるわけではありません。
身体の向きを変えれば、石も一緒に、動いてるんです。
これがずっと、石がある間、日常生活を送っている間、続くわけです。
だから、胆石が粘膜を、ある程度、炎症を起こす原因になっている。
そして、炎症をずっと繰り返すことによって、だんだんと、がん化へとつながってくるのだという。
長年、胆石を持っていいる人だと、胆のうの壁が厚くなったりという問題が出てくる。
壁が厚くなっているところは、炎症が起きている部分。
胆のうの壁が厚くなってないかチェックして、もし壁が厚くなってきたら、症状が無くても、精密検査をして、手術を含めて考えた方がいいのではないかと、露口先生は言います。

アメリカのデータでは、胆石は大きいものほど悪いという話も。
3cm 以上になると、胆のうがんのリスクが高いらしい。
大きな石があるということは、長年、石が居座っていたということになりますから、長年にわたり炎症を繰り返していた可能性が出てくる。
胆石で必ず がんになるわけではありませんが、注意は必要なんですね。
でも、やっぱり、石ができないのが一番。
予防法が気になります。
□ 胆石の予防

さて、胆石ができやすいのは、どんな人なんでしょう?
<胆石ができるわけ>
・食べ過ぎる。
・食事を抜く。
・運動不足。
・家族に胆石。
(胆石症診療ガイドライン2016より)
食べることによって、肥満、特に内臓脂肪型肥満で、胆汁中のコレステロールが、非常に高くなる。
すると、結晶を作って石になりやすいという状態になります。
ところで、そもそも、胆石の正体とは、何なのでしょう?
胆石を持っている人の胆汁。
これを、人の体温に近い37℃にしておくと、日を追うごとに、あるものがどんどん成長していきます。
その物質が、「コレステロール」。
胆石の多くは、コレステロールの結晶からできているんです。
女性の場合、妊娠の時に、ホルモンが過大に出るなどの問題があるので、若くても(40代ぐらい)胆石ができる人が、けっこういるのだとか。
運動不足は、基本的に、コレステロールの管理の問題が入ってきます。
コレステロールが多い胆汁を作るような形になってしまうと、石ができやすくなる。
また、胆石と一緒に、脂肪肝が見つかることが非常に多いのだそう。
食事を抜くというのは、どうなんでしょうか?
ダイエットもそうなんですが、食べないでいる間は、胆汁を濃縮し続けることになります。
どんどん濃くなればなるほど、結晶を作りやすくなるんですね。
間隔をきちんと守って、三度三度、食事をきちんと摂ることが大切。
定期的に食事をして、胆のうから胆汁を出さないと、淀んで、石ができやすくなるんです。
特に、食事を抜くような急激なダイエットは、危険。
また、水分を摂らないような状態が続くと、胆汁が濃くなるので、よくないのだとか。
さらに、胆石がある人も、水分をしっかり摂っていれば、痛みの発作が起こりにくくなるといいます。
胆石の検査には、どのようなものがあるのでしょうか?
「腹部超音波検査」、いわゆる「エコー検査」ですね。
ゼリーを塗って、探触子(たんしょくし)で、お腹の中を診ます。

エコー検査は、女性の場合、少し若めの世代から受けた方がいいそう。
出産を契機に石ができることもあるので、女性は 40歳ぐらいから検査を受けた方がよいそうです。
露口先生によると、男性は50歳ぐらいからで十分ではないかと。
市区町村の健康診断だと、オプションになることが多いのだそう。
人間ドックだったら、5000円程度。
症状があるなど、保険適用される場合は、その 1~3割負担らしい。
超音波検査では、肝臓や すい臓、腎臓などと合わせて、胆のうのチェックを行っています。
人間ドックを受けていれば、自動的に、胆石があるかどうか調べられているらしいですよ。
(詳しくは、担当のお医者さんに聞いてみましょう)
ちなみに、X線検査では、胆石は見つかりません。
X線はコレステロールを通り抜けてしまうので、胆石をうまく写すことができないのです。
<胆石の予防>
(1) 食べ過ぎを控え、内臓脂肪を溜めないようにする。
(2) コレステロールを溜め過ぎない。
(3) 食事を抜かない、水分をしっかり摂る。
(4) 運動する。
(5) 女性40歳以上、男性50歳以上は、検査を受ける。

胆石を持っていても、痛みが出ないことがよくあります。
なので、石を持っていることを知らないまま、長年過ごす可能性も、多々ある。
女性なら40代以降、男性なら50代以降、一度は腹部超音波検査を受けましょう。

ガッテン! ガッテン!
□ がんに気づける?

痛みなどの症状は なかなか出ないという、胆のう周辺のがん。
ところが、自分自身で がんに気づけるケースがあるのだとか。
[体験談(2)]
千葉県に住む 67歳の男性、Bさん。
去年、胆管がんであることが判明しました。
MRI画像を見ると、正常な部分は白く写るんですが、胆管の先で、白い部分が途切れています。
ここにがんができて、管が詰まってしまったんですね。
当時、Bさんに、痛みなどの自覚症状は無かったのだそう。
ところが、Bさんは、ある場所で異変に気づきました。
その場所とは、「トイレ」。
便が真っ白になっていたので、ビックリしたそうです。
この不思議な現象のカギを握っているのが、胆汁。
胆汁の色は、便の色のもとになっているんですね。
ふだん、十二指腸へと流れている胆汁は、胆管に がんができていると、せき止められてしまうことがあります。
すると、胆汁は 便に色をつけることができず、白っぽい便が出ることがあるんです。
一方、せき止められてしまった胆汁の色が、顔や目に出ることがあります。
「黄疸(おうだん)」と呼ばれる症状。
白目の外側から、黄色くなってくるのが、特徴なのだとか。
□ 古代の胆石
人類と胆石には、壮大な歴史の物語があるのだという。
1991年6月、アルプス山脈。
氷河の中から、ミイラ化した遺体が発見されました。
調べてみると、遭難した登山者ではなく、約5300年前の古代人だと判明。
「アイスマン」と名付けられました。
アイスマンの身体を解剖し、どんな病気にかかっているのか調べたところ、胆のうの中に胆石が3個見つかりました。

胃の中を調べると、動物の肉が。
アイベックスというヤギの仲間の肉などを、好んで食べていたようです。
ミイラ・アイスマン研究所の アルベルト・ツィンク博士のお話。
「たいへん驚くべきことですが、5300年前の古代人であるアイスマンは、ただ何かを食べるというだけではなく、動物の肉など、おいしい食材を食べることに、かなりこだわっていたようなんです」
我々人類は、豊かな食事を求め始めた頃から、胆石と歩む宿命にあったのかもしれません。
![NHKガッテン! 2017年 11 月号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/411681A%2BXAL._SX270_.jpg)


次回は、これ。
全世界に広がる、原因不明の手首の痛み。
ついに、日本まで?
カギは、手首の進化にあった。
「新・現代病! 世界に広がる謎の痛み」。
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