【ビタミンD欠乏】 豊富な食材は鮭+1日15分の日光浴/ガッテン
1985年頃まで、「日焼け=健康」というイメージでした。それが、オゾンホール問題で一変。美白ブームに。
やがて、別の問題を生んでしまいました。それが、「ビタミンDの欠乏」。
極端に不足すると、骨密度が低くなって、将来、骨粗しょう症になるリスクが上昇。特に若者は、要注意だという。
また、妊婦さんも、気をつけてほしい。
1日に10分から15分、日を浴びましょう。
食事から摂るなら、鮭や干しシイタケを。
解説:帝京大学ちば総合医療センター 岡崎亮 教授。
2017年6月7日放送の「ガッテン」より、「緊急報告! 日本人のカラダに異変!? 骨・筋肉のパワーがよみがえるSP」からのメモ書きです。

□ 時代の変化と ある成分の欠乏

1980年代、日本中が沸き立っていました。
原宿 代々木公園の「竹の子族」、「ローラースケート」、「ディスコ」に「ボディコン」。
いや~、元気でしたね。
しかし、ブームは当然、終わりを告げるのでした。
さだめじゃ…。
時は流れて、現代。
日本人の身体の中に、ある異変が起きているといいます。
実は、ある栄養素が、減ってるんです。
これが、骨がスカスカになる原因に。
1980年代、小学校でも、「日焼けコンテスト(日焼け大会)」が行われていました。
当時、「日焼け=健康」という風潮だったんですね。
元気に遊んで、夏には真っ黒。
「まぶしい肌は小麦色」なんてキャッチフレーズも、ありました。
時代の流れは、こんな感じ。

1970年代の日焼け大会。
1980年代の小麦色ブームがあって。
やがて、美白ブームに。
その境目に、何があったのでしょうか?
1985年のビーチでは、大胆に肌を焼く人たちの姿が。
それが2015年になると、日よけのテントがいっぱいです。
海に入っている人も、Tシャツ姿。
肌は出さず、ラッシュガードを着たりする。
日差しに対する意識は、こんなに変わっちゃったんですね。
小麦色から美白に変わるきっかけは、1985年頃 話題になったある出来事だという。
ヒントは、ニュースや学術誌です。
理系では、ちょっとした話題になっていた。
ちなみに、「ガングロブーム」ではありません。
あれは、1990年代後半。
一部の若者に流行したファッションで、かなり黒くなるまで日焼けやメークをした格好が特徴でしたね。
「ガングロ娘」「ヤマンバ」なんて言葉も、流行ったっけ。
転機となったのは、これ。
「オゾンホール問題」です。
フロンガスの問題として、記憶している人も多いかも。
1998年6月7日放送の「NHKモーニングワイド」。
そこでも、オゾン層破壊の現状と、日本の観測研究の最前線について、報告されていました。
オゾン層とは、地球を取り囲み、太陽からの有害な紫外線を吸収するエリアのことです。
ところが、1985年頃、このオゾン層に穴が開いている、つまり、「オゾンホール」の存在が、世界的に発信された。
これにより、紫外線の危険が意識されるようになったんですね。

オゾンホール問題をきっかけに、紫外線への意識が高まり、小麦色ブームが終わりに向かった。
(*諸説あります)
長く続いている、美白ブーム。
それが今、ある問題を生もうとしているようです。
それに関係するのが、このグラフだ。

1980年の、20代女性の、血中のある濃度。
季節によって、変動していますね。
神戸の研究者さんたちが集めた、今となっては貴重なデータです。
ちょうど、小麦色ブーム真っ只中の頃。
これが、2016年には、こうなっている。
青い線は、大阪の20代女性のデータです。

全体的に、減少傾向。
緑の点線が、欠乏ラインです。
2016年に厚生労働省の調査研究班・日本骨代謝学会・日本内分泌学会が策定した、判定基準。
比べると、2016年では、かなり欠乏しているのが分かります。
では、何が足りなくなってるんでしょうか?
それは、このようにして作られます。
紫外線が皮膚の中にある「コレステロール」に届くと、「ビタミンD」に変わるのだ。
ということで、上のグラフは、「20代女性の血中ビタミンD濃度」。
それがいかに必要なのか、先生に教えていただきます。
□ 岡崎亮先生の解説

専門家が、緊急提言。
「ビタミンD徹底対策!」
教えてくださるのは、この方。
ビタミンD欠乏に警鐘を鳴らす医師、帝京大学ちば総合医療センターの 岡崎亮 教授です。
専門はズバリ、「骨」。
その中で、数々のビタミンD欠乏の症例を診てきたという。
先生は、近年行われた様々な研究から、「日本人のおよそ5割が、ビタミンD欠乏状態」だと推定しているのだそう。
これは将来、重大なリスクになる可能性が!
講義の題は、「ビタミンDと私」。
冒頭、岡崎先生は、「私」というより、「日本人みんな」という方が正しいかもしれないと。
ビタミンDは、何に一番大切かというと、骨と血中のカルシウム濃度を保つために必要。
もし、ビタミンDが足りないと、骨はちゃんとできないし、血液中のカルシウム濃度が下がってしまうんです。
カルシウムが吸収されるためには、ビタミンDが十分ないと、吸収されないんですね。
だから、いくらカルシウムを摂取しても、ビタミンDが不足していると、あまり吸収されない。
逆に、ビタミンDがたっぷりあれば、少ないカルシウムでも効率アップするってわけ。
そういうことを教科書的に知っていた岡崎先生ですが、ある患者さんを診たことがきっかけに、その重要性に気づいた。
それが、「低カルシウム血症」。
患者さんは、若い女性だったといいます。
血中のカルシウム濃度が低いことで起こることは、手足が絶えずしびれるとか。口元がいつも、ピクピクしてる(筋肉の痙攣)とか。
調べてみると、この患者さんは、単なるビタミンD欠乏でした。
普段の生活を聞いてみると、自宅から買い物に行く時は、日傘を差していたそう。
運転手つきの車に乗って、ドアトゥドアでお店へ。
日差しには当たらず、真っ白な肌だった。
20以下が欠乏とされる「血中ビタミンD濃度」は、「6」か「7」だったらしい。
日本で、しかも東京で、そういう方がいるというのは、先生にとって本当に衝撃だったという。
しかも、この方、徹底的な菜食主義だったとのこと。
ビタミンDが含まれている食品も、ほとんど摂っていなかったのだそう。
それが確か、1989~90年ぐらい。
時代がガラリと変わり、「日に焼けるのはよくない」とドンドンなっていった時期です。
一般の方々も、外出する時、日焼け止めをつけるようになりました。
日傘、帽子、日焼け止めクリーム。
できるだけ日差しを避けるようにします。
先生が一番危惧しているのは、「若い人」だという。
10代20代の方々。
ほとんどがビタミンD欠乏になっているのではないかと。
そして、欠乏の度合いが ひどければひどいほど、例えば、「骨密度」が低いことが分かっている。
もちろん、10代とか20代だと、骨密度が低くても、骨粗しょう症になること、骨が折れやすくなるというところまでは、いきません。
ただ、40年後となると別です。
ビタミンDの欠乏状態が長期間続くと、骨粗しょう症や骨折などのリスクが上昇する。
このように、ビタミンDは、健康な体作りには欠かせない成分なんですね。
実は、ビタミンDが働くのは、骨だけではなく、筋肉や免疫細胞、脳や腎臓など、ほとんど全身なのだ。
筋力を上げたり、免疫の働きを維持したり、身体を健康に保つために、とても重要なんです。
そのため、ビタミンD欠乏の状態になると、身体に様々な異変が起きてしまう。
例えば、家にこもりがちな高齢者は、骨がもろくなる上、転倒しやすくもなるので、骨折の危険度が上がります。
また、ビタミンD摂取量が低い乳幼児では、全身性のけいれんを起こしたり、骨の健全な成長が妨げられる可能性があるのだとか。
さらに、10代20代の若者は、成長期にもかかわらず、ビタミンDが欠乏状態で、骨密度が低い人も多いとの報告が。
これでは将来、骨粗しょう症リスクが上がるのではないかとの懸念も。
1980年代くらいまでは、ビタミンDの問題は、危惧されていませんでした。
ところが、オゾン層の問題があって、皮膚がんの問題が浮上。
皮膚がんは避けたい。でも、ビタミンDは必要。
ということで、どのくらいでバランスが取れるんだろうかということが、いろんなところで研究されています。
一般的には、「1日10分から15分の日光では、皮膚がんのリスクはほとんどない」とのこと。
太陽を嫌うだけでなく、ちょっとだけ仲良くするとよい、と。
岡崎先生自身も、ビタミンDは欠乏しているのだとか。
だから、病院内で違う建物に移動する際、晴れてる日には、なるべく外を歩くようにしているそうです。
少なくとも、腕だけは日光を浴びようと、気をつけている。
□ 日焼けと皮膚がんの関係

日焼けと聞くと、一番気になるのが、皮膚がんとの関係ですよね。
日本皮膚科学会のホームページには、こんな記述が。
小麦色の肌を求めて海岸で身体を焼くというような、不必要な日光浴は避けるべきです。
つまり、気をつけるのは、日光浴後、肌の色が赤くなるほど浴びること。
一方、ビタミンDに必要な日光浴は、先生によれば、1日10分~15分ほどだという。
<ビタミンDと日光>
正午前後なら、半袖で 15分ほどの日光で OK。
皮膚がんのリスクも、ほとんどないと考えられている。
太陽とちょっとだけ仲良くするのが、ポイントです。
それでも日光を浴びたくないという人は、食事でビタミンDを摂取するように心がけましょう。
岡崎先生によれば、70代女性のビタミンD濃度を測ると、そんなに低くないのだそう。
一番よくないのは、美白にこだわっている世代。
さらに、食品の摂り方にも、問題があるケースが。

時代の変化の中で、大きく減っていた、ビタミンD。
太陽とちょっとだけ仲良くして、健康をパワーアップしましょう。

ガッテン! ガッテン!
□ ビタミンD欠乏を気にしてほしい方

岡崎先生は、10代20代の若者について、危惧されていました。
でも、他にも、気にしてほしい方々がいるらしいですよ。
それは、妊婦さん。
妊婦は、お腹の中の赤ちゃんに送るため、大量のカルシウムを必要とします。
ところが、ビタミンDが足りてないと、食事からカルシウムをうまく吸収できず、自分の骨をより多く溶かしてしまうんです。
すると、出産後、骨密度が低下し、骨折のリスクが高まってしまうのだという。
主産後の大切な時期に体調を崩すことがないよう、ちょっとだけ、太陽と仲良くしてくださいね。
□ 食事でビタミンDを摂る方法

ここからは、普段あまり日光を浴びられない方に、おススメ。
食事からのビタミンDの摂り方です。
と、ここでスタジオに登場したのは、金メダリストの画像。
リオ オリンピック 女子レスリングで、吉田沙保里選手を破り、53kg 級で金メダルに輝いた、ヘレン・マルリース選手。
このマルリース選手に貢献したのが、この男性。
ロブ・スキナーさん。
オリンピックチーム専属の栄養士です。
実は、アメリカのオリンピックチームでは、強い選手を育てるため、ビタミンDの力を、積極的に取り入れてるのだ。
スキナーさんは、選手たちに、食事の作り方を指導しています。
この日のテーマは、ビタミンD。
指導を受けるのは、ふたり。
女子フライ級ボクシングの、バージニア・フックス選手。
グレコローマンスタイル レスリングの、ロビー・スミス選手。
まずは、オリーブオイルたっぷりのサラダを作ります。
さらには、ハチミツ入りソースを塗った、焼き魚。
マッシュルームのリゾットも。
牛乳も、プラスされました。

さて、この中で、ビタミンD食材は、どれなんでしょう?
1つは、マッシュルーム。
キノコには、ビタミンDがたっぷり入っています。
そして、一番注目していただきたいのは、「牛乳」。
アメリカでは、ビタミンD入りの様々な食品が、売られているんです。
例えば、牛乳も、ビタミンD入りのものが。
他にも、パンに塗るバターのようなもの。
オレンジジュース、シリアルなどにも、入っています。
では、日本には、どんなビタミンD食材が?
その食材を、知らず知らずのうちに食べている地域の、血中ビタミンD濃度のグラフ。

冬場、日照時間がガクンと減る時期でも、ビタミンD濃度が高いですね。
ある名産品を食べているから、こうなっているらしい。
その地域は、日本海側。
志の輔さんの故郷、富山県の右隣です。
ガッテンボーイの宮森右京くんが、取材してくれました。
ビタミンDと生活習慣の関連を研究する、新潟大学 医学部の 中村和利 教授です。
中村先生は15年以上、新潟県内で、聞き取り調査を行ってきました。
その中のある地域で、あの不思議な結果が出てきたんです。
冬なのにビタミンDが上がっている秘密は、何なのでしょうか?
その答えがあるのが、新潟県の村上市。
ここが、中村先生が調査で新事実を突き止めた町なんです。
宮森くんが、街で聞き込み調査を開始。
すると、キーワードが出てきました。
「魚 さけ さけぼや」
「三面川から捕れる魚」
「さけぼや いよぼや」
そう、その食材とは、「鮭・さけ」だったのです。
地元の人は、「村上は、よその地区からすると、何倍も食べますからね」と。
様々な食べ方をするそうです。
秋に とれたてを食べるだけでなく、干して保存食にしたりもする。
身だけではなく、内臓や骨まで、さけを大切に食べる文化があるのだ。

街は、さけでいっぱい。
なんと、「さけの博物館」まである。
「こいのぼり」ならぬ、「さけのぼり」も。
マンホールまで、さけなのだ。
冬でもビタミンDが高い理由は、さけでした。
さけの場合、切り身 1切れで、食事から摂るビタミンDの 2日分が含まれてるんです。
海にも、地上と同じく、太陽の光が降り注いでいます。
そうすると、海面近くにいるプランクトンが、その紫外線を浴びて、ビタミンDを作るんですね。
そのプランクトンを食べて、魚たちも、ビタミンD豊富に。
さらに、その小さな魚を食べた魚も、ビタミンDをたっぷりと蓄えるというわけ。
この中でも、特に、さけに、ビタミンDは多いとされています。
<ビタミンD たっぷり食材>
サンマ、アジ、サバなどの魚類。
マイタケ、ほしシイタケ、エリンギなどのキノコ類。
ビタミンDは日光でできるので、干しキノコには特に多い。
100gあたりに含まれるビタミンDは、こうなります。
<100g 中のビタミンD>
さけ:33μg (べにざけ-生(切り身))
さば:5.1μg (さば・まさば-生)
あじ:8.9μg (あじ・まあじ・皮つき-生)
さんま:14.9μg (さんま・皮つき-生)
まいたけ:4.9μg (まいたけ-生)
エリンギ:1.2μg (ひらたけ・エリンギ-生)
ほししいたけ:12.7μg (しいたけ・乾ししいたけ-乾)
生しいたけ:0.4μg (しいたけ・生しいたけ-生 菌床栽培)
1日の摂取目安は、成人で 5.5μg/日。
ちなみに、ビタミンDの検査ですが、一般の健診には含まれていません。
血液中のビタミンD濃度の測定は、特定の病気の疑いがある場合に、医師の判断で行われる。
□ 足の裏でも大丈夫?

最後に、実験です。
「足の裏でビタミンD 作り実験」
ガッテンボーイの亀井賢治くんが、完全防備スタイルで挑みます。
顔と頭部は、麦わら帽子で、日差しをカット。
外に出たら、靴下を脱いで、足の裏を出します。
手の甲や足の甲は、日焼け止めで、しっかりガード。
出すのは、日焼けしづらい、手のひらと、足の裏だけ。
実験当日は4月。
まだ日光が弱いので、ちょっと長めに、20分、日光浴しました。
その結果が、こちら。

20分太陽に当たるだけで、血中ビタミンD濃度は、上昇しました。
手のひらと足の裏だけでも、上がるんですね。
でも、浴びすぎには、注意してください。



次回は、これ。
生乾き臭が、消える?
絶対に臭くならない方法とは?
「梅雨を快適に! いや~な部屋干し臭 一発解消SP」。
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