【強い心臓を作る方法】 心拍数110/ガッテン
事前の酸欠で、スーパーミトコンドリアに変身。
少ない酸素でも生き延びようとし、心筋梗塞などの発作から、守ろうとしてくれる。
それが、プレコンディショニング現象。
狭心症があった人の方が、予後がいい?
<スーパー心臓になる方法>
心拍数が110くらいの運動。
軽い筋トレを加えると、なおよい。
リハビリの現場。
心筋梗塞 早期発見のポイント。
解説:群馬県立心臓血管センター 安達仁 部長。
2017年4月19日放送の「ガッテン」より、「STOP突然死! 強い心臓をめざせSP」からのメモ書きです。

□ スーパー心臓

日々頑張ってくれている「心臓」ですが、ある日、酸欠状態になることも。
心臓を取り巻く血管が詰まることで、酸素が届かなくなるのだ。
そう、それが、「心筋梗塞」。
こうなると、心臓の細胞が、次々に死んでいってしまう。
たった一つの、大事な臓器。
そんな心臓について、すごい研究が行われているらしいぞ。
ある研究者は言った。
「人間の潜在能力を引き出すことによって、強い心臓を作れる」
なんと、酸素が少ない状態に負けない、強い心臓を作る研究が進んでいるのだ。
最初の話題は、これ。
「酸素が無くても、大丈夫な心臓」
そんなの、あるんだろうか?
そんな強い心臓の持ち主とは、「ゼブラフィッシュ」という熱帯魚でした。(学名:Danio rerio)
国立循環器病研究センターの室長で、大阪大学 共同研究員の、山崎悟さんに、教えてもらいましょう。
「魚というと、だいぶ、人とかとは違うような印象があるかもしれないですけど、基本的な心臓の構造を考えた場合、魚と人は あんまり変わりません」
ゼブラフィッシュの稚魚の心臓。
ちゃんと、心房と心室がありますね。
人間の心臓の原型ともいえる形を、持っているのだ。

この研究室では、ゼブラフィッシュに遺伝子操作を行うことで、様々な種類を生み出しているのだそう。
例えば、光る心臓のゼブラ、身体が透明なゼブラなど。
これも、より詳しく心臓を観察できるようにするためです。
心臓を強化した、「スーパーゼブラフィッシュ」。
その実力は、いかに?
普通のゼブラフィッシュと、スーパーゼブラの稚魚を、容器に並べます。
顕微鏡で見てみると、両方とも、心臓が元気に動いていますね。
ここで、シャーレから空気を抜いてゆき、心筋梗塞のような低酸素状態にする。
40分後、普通のゼブラは、酸素不足で大ピンチ。
十分に動くことができません。
しかし、スーパーゼブラの方は、ピンピンしてるぞ。
1時間以上たっても、心臓は動いてる。
国立循環器病研究センター 北風政史 先生のコメント。
「心機能がいいというのは、驚くべきことです」
「不思議な強さを持っている。心臓が、スーパーマン化してるというような言い方が、できるかもしれません」
低酸素状態に強い「スーパー心臓」を作ることに成功したというわけ。
でも、実は、北風先生がコメントしたのは、「人間の持つスーパー心臓」についてなのだ。
というのも、これから紹介するような心臓を見て、遺伝子操作して、スーパーゼブラを作ったんです。
つまり、人間の方が先だったんですね。
さて、スーパー心臓の正体とは?
[体験談]
青梅市にお住いの 73歳男性、Aさん。
15年前のある日、午前4時のことでした。
寝ているAさんを、突然、胸の痛みが襲った。
あまりの苦しみ方に、奥さんもビックリするほどだった。
汗びっしょりで、顔も真っ青だったという。
実はこの時、心臓の周りの太い血管が、詰まっていたのだ。
心臓に酸素が届かず、細胞が次々と死んでゆく、心筋梗塞です。
すぐに救急車を呼び、少しでも早く乗れるようにと、外へ。
病院に到着すると、緊急手術。
危ないところで、一命を取り留めました。
医師からは、「5分遅かったら、もう駄目だった」と言われたそう。
話はここで終わりません。
心筋梗塞から6年後、ある晩に、またもや異変が。
なんと、二度目の心筋梗塞を発症したんです。
再び、緊急手術。
実はこの時、心停止していたらしい。
何回かの心臓マッサージと電気ショックで、蘇生したのでした。
再び、生還した、Aさん。
Aさんの心臓が持つ不思議な強さには、専門家もビックリだという。
北風先生のコメントは、Aさんの心臓について、だったんですね。
「2回 心筋梗塞を起こしたにもかかわらず、心臓の動きが落ちていない、正常である」
「心機能がそれだけいいというのは、驚くべきことです」
でも、奥さんは言いました。
「弱いんだか、強いんだか、よく分かんないわよね」
こんなことを言えるのも、Aさんが無事だから。
Aさんの心臓は、大きな後遺症なしだという。
しかし、Aさんの心臓の強さの秘密って、いったい何なのだろうか?
<心筋梗塞とは?>
心臓というのは、周りを血管に取り囲まれています。
血液を心臓自身に送る太い血管。
この血管のおかげで、酸素や栄養分が、心臓自身に届いているんです。
ですが、ここに血の塊が詰まってしまうと、酸素や栄養分が行き届かなくなり、心臓の細胞がどんどん死んでいってしまいます。
これが、心筋梗塞。
心筋の細胞が死んでしまえば、拍動もできなくなる。
そして、一度死んでしまった細胞は、再生しません。
そのため、もし早く救急車が来てくれて助かったとしても、非常に重い後遺症が残ることが多いんです。
【心筋梗塞】
冠状動脈に血栓などが生じて血液の循環障害が起き、その部分の心筋が壊死えしする疾患。胸部前面に激しい疼痛(とうつう)が起こり長時間持続し、呼吸困難・不整脈・チアノーゼ・ショック状態などを呈する。(大辞林)
心臓の冠状動脈の、血栓などによる閉塞、急激な血流の減少により、酸素と栄養の供給が止まり、心筋が壊死(えし)した病態。激しい狭心痛、ショック状態などが起こる。中年以後に多い。MI(myocardial infarction)。(大辞泉)
Aさんは、2002年に一度目の心筋梗塞になっています。
そして、2008年には、二度目を経験。
実は、Aさんは、あるきっかけがあって、スーパー心臓になったと考えられているらしい。
心筋梗塞の前に、あることがあって、そうなったと。
1回目の心筋梗塞では、2週間前から。
2回目の心筋梗塞では、1時間前から。
それは起こっていました。
それは、「胸の痛み」。
心筋梗塞の少し前に、一時的な胸の痛みがあったんです。
Aさんによれば、「ギュギュギュギュっと、ペンチでひねられるような痛み」とのこと。
それが何回か続いたという。
胸の痛みとスーパー心臓の関係は、いったい、何なんだ?
<メカニズム>
心臓に酸素などを送る血管、それが冠動脈。
そこを通って、酸素がやってきます。
心臓の細胞に住んでいる「ミトコンドリアくん」が、この酸素を食べるんですね。
それによって、エネルギー(ATP)が生まれる。
このエネルギーのおかげで、心臓は動くことができるというわけ。
「ミトコンドリアが作るエネルギーで、心臓は動く」

普通の心臓が、何がきっかけで、スーパー心臓になるのか?
Aさんが経験した、胸が締めつけられるような痛み。
あの時、Aさんの心臓では、こんなことが起きていたと考えられます。
心臓の血管が詰まりかける、心筋梗塞の一歩手前、「狭心症」が起きていた。
狭心症とは、血管が狭くなって、血液が流れにくくなった状態のこと。
この時、血液の通り道が狭くなったため、酸素がたくさん入ってくることができません。
入ってきても、ほんの少し。
ミトコンドリアくんは酸素をあまり食べることができず、当然、十分なエネルギーも生み出せないので、心臓は満足に動けない状態に。
「酸素が足りないと、心臓は動けず、危険な状態になってしまう」
この危機に、ミトコンドリアくんが変身。
スーパーミトコンドリアくんに、なっちゃった。
この状態だと、酸素が少ししか入ってこなくても、ちゃんとエネルギーを生み出してくれるんです。
言うなれば、節約モードに。
少ない酸素でも効率よく、心臓が動けるようになるのでした。
というわけで、事前に酸欠を経験していると、心筋梗塞のダメージが少なくて済む場合があるのだそう。
急に心筋梗塞になると、心臓は酸欠になり、動けなくなります。結果、大ダメージに。
けれど、事前の酸欠でスーパーミトコンドリア化していれば、少ない酸素からでもエネルギーを生み出せるので、心臓はある程度 動いて、ダメージを軽減できると。
酸欠状態になった心臓が、少ない酸素でも生き延びようとするモードに変身。
そして、心筋梗塞などの大きな発作から、心臓を守ろうとする。
これを、「プレコンディショニング現象」という。
そもそも、心臓の専門家の間では、以前から、心筋梗塞に関する ある不思議な現象が知られていました。
狭心症発作が重なって、何回も起こっている人の方が、予後がいい。
心筋梗塞の前に、狭心症の発作(胸の痛み)があった人の方が、その後の治りがいいのではないか。
そんな不思議な逆転現象が、語られてきたのです。
実際に詳しく調べてみたら、事前に胸の痛みがなかった患者さんに比べ、痛みがあった患者さんの方が、入院中に亡くなる確率が、半分ほどに抑えられていました。
<心筋梗塞で入院した患者の死亡率>
事前に狭心症なし:14%
事前に狭心症あり:6%
胸の痛みがあった時、心臓に何か特別な変化が起こっているに違いない。
研究の結果、酸欠状態に陥った心臓では、一時的にミトコンドリアが頑張ったり、血管が増えたりして、生き延びる力が上昇することが、分かったんです。
最初の方に出てきたスーパーゼブラフィッシュも、この現象を解明する研究の中で、生み出されたものなんですよ。
ただし、注意点があります。
心臓を守る効果は、一時的。
数日で消えると考えられています。
なので、胸の痛みがあっても、安心してはダメ。
胸の痛みは、心臓に問題が起きている大事なサインです。
胸の痛みがあったら、すぐ病院に行きましょう。
□ スーパー心臓になる方法

強い心臓を安全に手に入れるには、どうしたらよいのでしょう?
ポイントは、心臓はピンチになったら変化すること。
ひょっとしたら、軽い負荷を心臓にかけてやれば、いいんじゃないだろうか?
通称「胸突坂」と呼ばれる急こう配の坂があります。
上れば息が切れて、心臓がバクバク。
心拍数が上がっちゃいます。
こういうのが、いいではないだろうか?
その辺を、専門家に聞いてみましょう。
群馬県立心臓血管センターの 安達仁 先生です。
安達先生は、心臓のリハビリテーションのガイドライン作成に、携わってらっしゃるのだ。
病気の心臓を、運動などで治療することに取り組んでいる。
さて、軽い負荷で、心臓は鍛えられるのでしょうか?
負荷をかけるということは、心臓の動きを早くさせること。
その際、心臓がたくさんエネルギーを必要とするから、酸素をたくさん必要とするんですね。
ということは、普通のミトコンドリアの能力だと足りなくなるから、スーパーミトコンドリアが出てきて、育つというわけ。
全身を含むミトコンドリアの能力の改善や、心臓の機能が安定。心保護機能が高まると考えられている。
「軽い負荷で酸素が足りないと感じると、心臓は変わる」
じゃあ、どのくらいの負荷がいいんだろう?
安達先生によると、ただ歩くだけでは不十分で、坂道とか、筋トレ。
それらの強度が強ければ強いほど、よいらしい。
ポイントはこちら。
<心臓を強くするおススメ運動>
目安:心拍数が110くらいの運動。
有酸素運動という持続的な運動がおススメなんですが、心拍数が「110」ぐらいでやるのが、よい。
心臓病予防の運動指導でも、「心拍数110程度」が強さの目安になっているのだとか。
つらくてしょうがないというペースではなく、「ニコニコ隣の人と会話できるくらいのペース」がそれにあたります。
ということで、スタジオでゲストのみなさんが、心拍数110を体験することになりました。
ビビる大木さんと大島麻衣さんが、腕につけるタイプの脈拍計を装着。
踏み台昇降運動に挑戦だ。
(「心臓に不安のある方は、この運動はしないでください」とのこと)
トントン、トントンと、早いペースで、昇り降り。
やがて脈拍が、110を超えました。

麻木久仁子さんも、110を体験。
「心拍数110は、階段を普通に上がったくらいの運動量」とのこと。
「息が苦しくなる直前くらい」の運動強度だそうです。
「軽い筋トレなど、少し強い刺激を織り交ぜると、効果が上がりやすい」
<運動についての注意点>
・心臓に疾患をお持ちの方は、医師と相談の上、行ってください。
・足腰やヒザなどに痛みがある方は、悪化させる恐れがあるので、ご注意を。
・運動して、強い動悸、息切れ、胸の痛みなどが出たら、速やかに中止してください。
まとめは、こうなる。
<心臓を強くする運動>
<有酸素運動のおススメ回数>
目安は、心拍数110ぐらい。
1回30分程度の有酸素運動を、週に3回くらい行うのが理想的。
自転車を少し頑張って漕ぐと、心拍数が110ぐらいになります。
エアロバイクだと、心拍数が測れたりしますよね。
ウォーキングの時は、早歩きで。
ゆるい坂道などを交ぜると、なお効果的です。
<軽い筋トレを交ぜる>
今回教えてもらったのは、「壁立て伏せ」。
壁に手をついて、ゆっくり腕立てします。
丈夫な壁に手をついて、行いましょう。
1日に10回くらいから、どうぞ。

運動を続けると、人によっては、ある変化が見られることも。
安静時の脈拍数が、落ち着いてくるんです。
□ リハビリにも

群馬県立心臓血管センター。
大動脈弁の手術をした女性も、運動しています。
今では、力コブが出るほどだ。
心臓の機能が大きく落ちる病気の治療中だという、男性。
最初は軽いのから始めて、息切れの程度や脈を見ながら、運動を続けました。
今では、汗ばむほどの運動も可能に。
1か月で 3割くらい、心臓がよくなったそうです。

2000年までは、心臓病の厚い教科書に、「心不全の人は安静に」と書いてあったそう。
実際、心筋梗塞などを起こすと、動いてはいけなかった。
ところが、ガイドラインが変わって、運動をした方がいいということになったんですね。
(「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン 2012年改訂版」)
「運動療法を加えると、心臓の変化と全身の筋肉が鍛えられ、血液を送り出す力が増える」
運動をした方が、心臓病の再発が減るし、別の病気が出づらくなると。
<注意点>
安全に行える運動の量は、人によって異なります。
運動療法は、必ず医師の指導の下で行ってください。

心臓は、軽い負荷をかけてあげることで、機能をよくすることができます。

ガッテン! ガッテン!
□ 早期発見のポイント
日常のちょっとした負荷が、心臓を強くしてくれます。
しかし、それでも、いつ誰に起きてもおかしくないのが、心筋梗塞の怖いところ。
というわけで、いざという時のために、これを覚えておきましょう。
<心筋梗塞 早期発見のポイント>
胸の痛み、圧迫感が、大きなサインです。
お年寄りなどの場合は、痛みが少ない場合もある。
そんな時は、突然の息苦しさや、冷や汗、気持ち悪さなどに、注意してください。
少しでも早く病院へ!
早期治療で、心臓へのダメージを減らすことができる。



次回は、これ。
「大型連休の前に! 交通事故から家族を守りたいSP」。
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