【脳動脈瘤手術】 坂井伸幸/健康カプセル! ゲンキの時間(2/2)
スーパードクター二人目は、神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科部長 脳卒中センター長の坂井伸幸 先生。
人呼んで、巨漢のゴッドハンド。
未破裂脳動脈瘤の治療で、7500人以上の命を救ってきた。
先生の考える、医者の在り方とは?
2017年2月19日放送の「健康カプセル! ゲンキの時間」より、「密着名医!脳卒中&謎の病」からのメモ書きです。

□ 脳外科医 坂井伸幸

続いてのスーパードクターは、この方。
兵庫県は神戸市にある、神戸市立医療センター中央市民病院。
脳神経外科部長で 脳卒中センター長の、坂井伸幸 先生。
体重およそ 100kg という、巨漢です。
太い指で操るのは、およそ 1mm のカテーテル。
繊細な技術力が求められる 脳外科の権威なんです。
坂井先生が考える、医師の在り方とは?
先生は言います。
「僕らは、職人や」
「最新の技術、機器の上に成り立つ医療やから、あたかも すごいこと やってるみたいに見えるけど、ま、基本的にはさ、道具と経験を使いこなして、目的を達する」
「まあ、職人や」
そんな職人技が発揮されるのが、「未破裂脳動脈瘤の予防治療」。
脳動脈瘤とは、血管の壁に強い圧力がかかり、膨れてできた、やわらかい瘤(こぶ)のようなもの。
一度破裂してしまうと、くも膜下出血を引き起こし、およそ半数の人は命を落とす危険性があるため、破裂する前に処置することが大切なんです。
脳は言うまでもなく、とてもデリケートな場所。
その治療には、細心の注意と、高い技術力が要求されるのだ。
先生は、この動脈瘤の破裂を防ぐ治療を、年間200例行い、これまで救った命は、7500人以上。
飛び抜けた治療件数にもかかわらず、驚異の成功率を誇っているのだとか。
[治療の現場]
61歳の女性、Bさん。
自覚症状は、まったくなかったという。
昨年の5月、5年ごとに受けていた脳ドックで、2つの動脈瘤が見つかりました。
検査入院の結果、その大きさが発覚。
旦那さんの強い勧めで、治療を決めました。
一般的に治療した方がよいとされている動脈瘤の大きさは、5mm 以上。
Bさんの場合、1つは 5.4mm ですが、もう1つは 2.8mm という小ささ。
小さい方は 一般的には治療しないでよいとされる大きさですが、2つが隣り合っているのが、悩ましいところです。
けた外れの経験を持つ坂井先生をも、悩ませる症例でした。
そして、手術の日を迎えた。
今回行うのは、「脳動脈瘤コイル塞栓術(そくせんじゅつ)」。
太ももの付け根の大動脈から、脳までカテーテルを挿入。
丸くなるように形状記憶された プラチナ製のコイルを、動脈瘤の中に詰める方法です。
コイルが詰まった動脈瘤には、血液が流れ込まないため、破裂を防ぐことができるのです。
日本では、1997年3月から、保険適用になった。
血管内治療のため、X線で透視しながら、カテーテルを進めます。
まずは、全長およそ 150cm のカテーテルを、太ももの付け根から、動脈瘤の入り口まで進めていく。
ただ入れればいいというわけではなく、血流のわずかな抵抗を、指先で読み取り、血管のカーブに合わせて、微妙にスピードを調節していかねばならない。
坂井先生は、わずか1分で、動脈瘤の手前に到着させました。
これは、通常の倍以上の速さだという。
患者さんは、カテーテルが脳に入った状態で、先生と会話しています。
実は、局所麻酔なので、患者さんは起きたまま。
会話などで様子を見ながら、治療を進める。
患部に到達し、いよいよコイルを挿入します。
コイルを詰めすぎれば破裂し、隙間が残ると血流を止められない。
職人技がものを言うのだ。
コイルの放出を数回繰り返し、隙間なく詰めていく。
コイルを入れ始めてからおよそ20分で、大きい方の動脈瘤が終了しました。
続いて、小さい方に着手する。
小さい方が難しいはずですが、さずか10分で終了。

治療は無事、終わりました。
通常3時間以上かかるという治療を、約60分という驚異的なスピードで完了。
治療時間を短くすることで、ストレスや薬の量を減らし、患者の負担を軽くできます。
坂井先生は言う。
「一番大事なことは、治療の目的を見失わないこと」
「予防治療だから、完全を目指して 危険なことをやってはいけません」
患者さんの不安を、全力で取り去る。
坂井先生は、これからの患者の人生をも考慮して、治療にあたっているんです。
「医者は、ひと言で患者さんを、ホントに毎日、暗くしてしまうことができる職業なので、『大丈夫だと思う』という ひと言をいう」
「大丈夫じゃなかった時の医者にとってのリスク。だから、予防線を、医者が張りすぎない」
「自分の身を守るために、患者さんを不愉快な思いにさせるくらいだったら、自分の身がちょっと危うくても、科学的な根拠とか、医者の勘で、これは大丈夫やと思ったら、あえて、あんまり予防線を張らない」
「滅多に起こりそうもないような危険を、誇大に説明しない」
今回密着した、二人のスーパードクター。
その素晴らしい技術の裏には、たゆまぬ努力と、燃えるような情熱が秘められていました。

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