「総合診療医ドクターGスペシャル NHK」
「G ではじまる単語。その中には、医療の世界で俄然脚光を浴びる単語がある。 “GENERAL” この番組は、総合診療の扉を開く、医療エンターテイメントである」
こんな出だしではじまった「総合診療医ドクターGスペシャル」ですが、もともとはNHK BShiで2010年3月から半年にわたって放送されていた番組らしい。
総合診療を中心にした番組らしいのですが、さて、どんなものか。

□ 総合診療科
様々な診療部門に分かれ、高度な医療が受けられる大学病院。
でも、病名が分からない場合、どの科へ行けばよいのか分かりません。
そんな時に頼りになるのが、総合診療科。
番組によれば、謎の病気を探り当てる医療の世界の名探偵。
その最大の武器は、問診だといいます。
検査に頼らず、患者を一人の人間として、診ていく。
そのため医療面接にかかる時間は、長い場合だと、30分~1時間ということもあるらしい。
そんな総合診療医がスタジオに登場し、実際の症例をもとにしたドラマで、出題。
そして回答者として、ゲストのタレントさんと共に、研修医のみなさんも登場。
若手研修医が、カンファレンスを通して、ドクターG の難解な症例に挑むというスタイルで、番組は進行します。
□ 症例VTR 前半
患者さんは、39歳の女性。
左胸がすごく痛いとの訴え。
昨夜、急に痛くなった。
少し前から痛かったのだけれど、昨日からひどく痛むように。
胸の痛みをなんとなく感じはじめたのは、2週間くらい前から。
コンビニで働いており、普段から体は使う。
重い物を持つと腰が痛かったり、肩が凝ったりすることも多かったので、胸の痛みもそれと同じようなものかと思っていた。
でも、息子を養うために、頑張るしかなかった。
最近は疲れがひどくて、職場でも同僚に迷惑をかけるようなことも多くなってしまった。
息子に不自由はかけまいと思うのだけれどうまくいかず、自分にイライラすることも増える。
疲れるし、やたらと喉も乾くし、体のあちこちにガタがきているような気がした。
若いつもりでも、もう40が近い。
夜、眠れない。
体は疲れているのに、熟睡できない。
元々はよく食べる方だったが、ここしばらくは食欲がない。
でも、まったく食べないわけではなく、スープとかシチューとか、そういうものなら食べられる。
休日には、息子と一緒に、キャッチボールをする。
そういえば息子に、だんだん下手になってきてるんじゃないかと言われた。
体のあちこちが痛い。
10日前のこと、体の不調だけでなく、問題が起こった。
父が脳梗塞で倒れた。
慌てて病院に向かうと、父は後遺症が残るとのことで、今後は介護が必要になるという話だった。
これからは、仕事に子育て、それに父親の介護も加わる。
体調不良が続いているのにすべてをやりきれるだろうかと、不安でいっぱいになった。
そしてクリスマスイブの昨日、朝からひどいだるさを感じた。
レジからお釣りをとろうとしても力が入りにくくて取れなかったり、疲れがピークに達している感じだった。
でも、クリスマスイブくらいは楽しいことをしようと、息子と約束をしていた。
いつも一人でさみしい思いをさせているから、無理をしてでもプレゼントを渡して、ケーキを食べて、ささやかなパーティーを開こうと思っていた。
そして帰宅し、息子にプレゼントを見せたその時、急に左胸に激痛が走り、そのまま倒れて動けなくなった。
これまでのなんとなくの痛みではなく、昨日の痛みは、ズキ~ンとする感じだった。
この女性の基礎データは、
体温:36.9℃
脈拍:86回/分
血圧:140/75
□ 研修医のみなさんの診断
A研修医:糖尿病
B研修医:血管炎
C研修医:全身性エリテマトーデス
D研修医:下垂体梗塞・尿崩症
ドクターG によるカンファレンスが開始されます。
まずは、「なぜ、その病名をあげたのか?」「それは、VTRのどのシーンから、そう考えたのか?」。
A研修医:疲れやすい、水を多く飲む・おしっこが多くなる(他飲多尿)、食欲不振
お父さんが脳梗塞で倒れられたということで、
もしかしたら糖尿病の家系なのかもしれない、
この人も若いけれど発症していて、狭心症のようなものを引き起こしたのかもしれない
B研修医:若い女性で心筋梗塞を起こす危険因子がないであろうという前提で、
全身の筋力低下、頻尿を起こしうるものと考えると、血管炎があげられると思った。
胸痛は、心臓の血管の炎症と推測。
C研修医:39歳の若い女性、症状の経過が長い、
疲れやすい、脱力がある、発熱など、全身が蝕まれている
左胸痛は、締め付けられたり圧迫する痛みではなく、ズキンとする痛み、
だから、狭心症じゃないのではと思った、
心筋炎ではないかと
D研修医:出産の経験、父が脳梗塞、
痛みやだるさは電解質の異常なのかと思う
□ 痛みの身体診察
ドクターG によれば、狭心症や心筋梗塞の痛みは、締め付けられるような痛み。あるいは、押されるような痛み。人によっては、象にのしかかられている感じがするという。
痛みの身体診察で、いろんなことが分かるとドクターGは話します。
[1]
立ったまま踵を上げて、トンと下ろす。
これは、盲腸(虫垂炎)の時に、重要な検査になる。
これで痛がらない時は、盲腸は高い確率でないのだそう。
逆に、響くようなら、ご用心。
[2]
1秒間に2~3回、頭を左右に振る。
これで100% 分かるわけではないが、髄膜炎の人はこういう動きはできないのだそう。
これができれば、高い確率で髄膜炎ではないことが分かる。
このような診断は、安く、早く、安全に、またある程度確実に診断が絞り込めるというメリットがある。
□ カンファレンスの続き
ドクターG が注目したのは、どんな時に痛みが発生したか?
激痛は、帰って来てプレゼントを渡そうとした瞬間に、発生した。
他は、お茶を入れていた時。
また、キャッチボールしていた時も、痛そうだった。
そう考えると、どんな痛みだと思うか?
D研修医:筋骨格系の痛み
筋肉や骨が動いた時に、痛みが走る。
□ 症例VTR 後半
激痛がしたあたりを押してみる。
痛む部分は限られており、周辺(上下)には痛みがない。
肋骨に沿う感じ?
他に気になることといえば、2年前に離婚して息子と暮らしはじめたころから、目に違和感を感じるようになった。
あと、唾が出にくいことも。
目の違和感は、かゆみがあったり、コロコロする感じがした。
それと、やたら喉が渇いて、夜中に何度も起きて、水を飲むようになった。
また、1ヶ月前の夜には、腰やお腹に激痛が走った。
救急車を呼ぼうとしたが、しばらく我慢していたら、スッと痛みは引いた。
こんな痛みは、初めてだった。
□ 研修医のみなさんの最終診断
ドクターG によれば、胸が痛いといってもいろんな病気がある。
胸が痛いと聞けば、30~40の病名が浮かぶ。
ただ、患者さんの症状の組み合わせによって、だんだんと絞られてくる。
A研修医:シェーグレン症候群+筋炎
B研修医:MCTD(混合性結合組織病)
C研修医:シェーグレン症候群+多発筋炎
D研修医:MCTD(混合性結合組織病)
4人があげたのは、いずれも、“自己免疫疾患”。
これは、体を守る免疫システムが自分自身を攻撃してしまう疾患。
“シェーグレン症候群”は、唾液や涙液の分泌低下をきたす疾患。
口や目の渇きが、主な症状。
時に、臓器障害も引き起こす。
“MCTD(混合性結合組織病)”とは、複数の膠原病の症状が合わさった疾患。
様々な症状が全身に及び、シェーグレン症候群が併発することがある。
全員が、目と口の渇きから、シェーグレン症候群を考えたようです。
では、胸の痛みは?
A&C研修医は筋炎、B&D研修医は MCTD と診断。
そうすると、夜中の腹痛は、どう説明する?
A研修医:激痛からゼロになるということで、何かが詰まったか、捻じれたのではないか
シェーグレン症候群の合併症は、どういう臓器に影響があるか?
B研修医:腎臓尿路結石
尿管結石の石の成分は?
C研修医:カルシウム
シェーグレン症候群、尿管結石(カルシウム)、胸の激痛、
これらを考えると?
胸痛を、どうとらえるか?
A研修医:痛みが走る部分は、筋肉全体というより、肋骨に沿うかたちだった
ということは、骨の異常ではないか?
ドクターGによれば、骨には3つの働きがあるという。
1つは体を支える役割、2つ目は内臓を守ること、そして3つ目はカルシウムを調節(貯蔵)する役割。
では、骨が悪くなるような病態は?
有名なのは、骨粗しょう症。
他には、がんの骨転移。
それに、骨軟化症。
39歳の女性で普通に生活をし、食事も通常に摂っている人に、骨粗しょう症は考えにくい。
がんの骨転移は、頭の片隅には置いておくものの、39歳女性ということで、その可能性は遠くに置いておく感じ。
そうすると、残るのは、骨軟化症。
まずあったのは、胸痛。そして腰背部の激痛。目の渇きや、喉の渇き。体がだるい。
このいろんな症状、人間をひとつの有機体と考え、全部を総合的に考えたら、どうなる?
ここで4人の研修医に、話し合う時間が与えられました。
そして本当の最終診断。
導き出されたのは、
シェーグレン症候群からの遠位尿細管性アシドーシスが引き起こした骨軟化症。
研修医のみなさんは、結論にたどり着きました。
左胸の激しい痛みは、骨軟化症による病的骨折だったのです。
検査の結果、他にも微細な骨折が見つかったという。
この骨折を引き起こしたのは、実は腎臓。
シェーグレン症候群によって、腎臓の尿細管に障害が発生し、体が酸性に傾いたことが原因。
わたしたちの体は、この尿細管などで、必要なものとそうでないものを、選り分けている。
しかし、尿細管が障害されると、酸の排出がうまくいかず、体は酸性に傾き、吸収されるはずのカルシウムが尿に大量排泄され、結石が発生しやすくなる。
カルシウムの貯蔵や調節をする骨は、正常な場合は、骨の内外でバランスがとれている。
しかし、体が酸性に傾くと、骨にカルシウムを貯めることができずに、血液中に溶け出しやすくなる。
こうして体内のカルシウム量が減少し、骨軟化症による病的骨折が起こった。
治療としては、ステロイドを使うことで、腎臓がグンとよくなったそう。
また、体の中の酸性を少し調整するために、重曹を投与した。
これで症状がまったくなくなった。
現在、患者さんは元気に暮らしている。
最後にドクターG が、研修医のみなさんに言葉を送りました。
“医師というのは、患者さんとのやり取りの中から、挫折とか苦しみやジレンマ、そんなものが吹き飛んでしまうような大きな勇気をもらえるんです。大丈夫です、みなさん、もうそういう2年間を送ってきたわけですから。明日から、また患者さんの傍らに立たせていただいて、そういう真摯な姿勢で、謙虚な態度で、一緒にがんばりましょう。
未来にはたくさんの患者さんが、君たちを待っています”


□
すごいな、こんな濃縮な番組を毎週やってたの?
なんか、壮大だなあ。
何かと叩かれやすいお医者さんたちだから、イメージアップするといいのだけれど。
お医者さんがいなくなったら心底困りますもんね。
過労や訴訟など、いろいろたいへんそうだけど、いてくれることがありがたい。
なので、みんなで守らないとね。
すぐにお医者さんを悪者にしたがるやつには、グーパンチだ!
こんな出だしではじまった「総合診療医ドクターGスペシャル」ですが、もともとはNHK BShiで2010年3月から半年にわたって放送されていた番組らしい。
総合診療を中心にした番組らしいのですが、さて、どんなものか。

□ 総合診療科
様々な診療部門に分かれ、高度な医療が受けられる大学病院。
でも、病名が分からない場合、どの科へ行けばよいのか分かりません。
そんな時に頼りになるのが、総合診療科。
番組によれば、謎の病気を探り当てる医療の世界の名探偵。
その最大の武器は、問診だといいます。
検査に頼らず、患者を一人の人間として、診ていく。
そのため医療面接にかかる時間は、長い場合だと、30分~1時間ということもあるらしい。
そんな総合診療医がスタジオに登場し、実際の症例をもとにしたドラマで、出題。
そして回答者として、ゲストのタレントさんと共に、研修医のみなさんも登場。
若手研修医が、カンファレンスを通して、ドクターG の難解な症例に挑むというスタイルで、番組は進行します。
□ 症例VTR 前半
患者さんは、39歳の女性。
左胸がすごく痛いとの訴え。
昨夜、急に痛くなった。
少し前から痛かったのだけれど、昨日からひどく痛むように。
胸の痛みをなんとなく感じはじめたのは、2週間くらい前から。
コンビニで働いており、普段から体は使う。
重い物を持つと腰が痛かったり、肩が凝ったりすることも多かったので、胸の痛みもそれと同じようなものかと思っていた。
でも、息子を養うために、頑張るしかなかった。
最近は疲れがひどくて、職場でも同僚に迷惑をかけるようなことも多くなってしまった。
息子に不自由はかけまいと思うのだけれどうまくいかず、自分にイライラすることも増える。
疲れるし、やたらと喉も乾くし、体のあちこちにガタがきているような気がした。
若いつもりでも、もう40が近い。
夜、眠れない。
体は疲れているのに、熟睡できない。
元々はよく食べる方だったが、ここしばらくは食欲がない。
でも、まったく食べないわけではなく、スープとかシチューとか、そういうものなら食べられる。
休日には、息子と一緒に、キャッチボールをする。
そういえば息子に、だんだん下手になってきてるんじゃないかと言われた。
体のあちこちが痛い。
10日前のこと、体の不調だけでなく、問題が起こった。
父が脳梗塞で倒れた。
慌てて病院に向かうと、父は後遺症が残るとのことで、今後は介護が必要になるという話だった。
これからは、仕事に子育て、それに父親の介護も加わる。
体調不良が続いているのにすべてをやりきれるだろうかと、不安でいっぱいになった。
そしてクリスマスイブの昨日、朝からひどいだるさを感じた。
レジからお釣りをとろうとしても力が入りにくくて取れなかったり、疲れがピークに達している感じだった。
でも、クリスマスイブくらいは楽しいことをしようと、息子と約束をしていた。
いつも一人でさみしい思いをさせているから、無理をしてでもプレゼントを渡して、ケーキを食べて、ささやかなパーティーを開こうと思っていた。
そして帰宅し、息子にプレゼントを見せたその時、急に左胸に激痛が走り、そのまま倒れて動けなくなった。
これまでのなんとなくの痛みではなく、昨日の痛みは、ズキ~ンとする感じだった。
この女性の基礎データは、
体温:36.9℃
脈拍:86回/分
血圧:140/75
□ 研修医のみなさんの診断
A研修医:糖尿病
B研修医:血管炎
C研修医:全身性エリテマトーデス
D研修医:下垂体梗塞・尿崩症
ドクターG によるカンファレンスが開始されます。
まずは、「なぜ、その病名をあげたのか?」「それは、VTRのどのシーンから、そう考えたのか?」。
A研修医:疲れやすい、水を多く飲む・おしっこが多くなる(他飲多尿)、食欲不振
お父さんが脳梗塞で倒れられたということで、
もしかしたら糖尿病の家系なのかもしれない、
この人も若いけれど発症していて、狭心症のようなものを引き起こしたのかもしれない
B研修医:若い女性で心筋梗塞を起こす危険因子がないであろうという前提で、
全身の筋力低下、頻尿を起こしうるものと考えると、血管炎があげられると思った。
胸痛は、心臓の血管の炎症と推測。
C研修医:39歳の若い女性、症状の経過が長い、
疲れやすい、脱力がある、発熱など、全身が蝕まれている
左胸痛は、締め付けられたり圧迫する痛みではなく、ズキンとする痛み、
だから、狭心症じゃないのではと思った、
心筋炎ではないかと
D研修医:出産の経験、父が脳梗塞、
痛みやだるさは電解質の異常なのかと思う
□ 痛みの身体診察
ドクターG によれば、狭心症や心筋梗塞の痛みは、締め付けられるような痛み。あるいは、押されるような痛み。人によっては、象にのしかかられている感じがするという。
痛みの身体診察で、いろんなことが分かるとドクターGは話します。
[1]
立ったまま踵を上げて、トンと下ろす。
これは、盲腸(虫垂炎)の時に、重要な検査になる。
これで痛がらない時は、盲腸は高い確率でないのだそう。
逆に、響くようなら、ご用心。
[2]
1秒間に2~3回、頭を左右に振る。
これで100% 分かるわけではないが、髄膜炎の人はこういう動きはできないのだそう。
これができれば、高い確率で髄膜炎ではないことが分かる。
このような診断は、安く、早く、安全に、またある程度確実に診断が絞り込めるというメリットがある。
□ カンファレンスの続き
ドクターG が注目したのは、どんな時に痛みが発生したか?
激痛は、帰って来てプレゼントを渡そうとした瞬間に、発生した。
他は、お茶を入れていた時。
また、キャッチボールしていた時も、痛そうだった。
そう考えると、どんな痛みだと思うか?
D研修医:筋骨格系の痛み
筋肉や骨が動いた時に、痛みが走る。
□ 症例VTR 後半
激痛がしたあたりを押してみる。
痛む部分は限られており、周辺(上下)には痛みがない。
肋骨に沿う感じ?
他に気になることといえば、2年前に離婚して息子と暮らしはじめたころから、目に違和感を感じるようになった。
あと、唾が出にくいことも。
目の違和感は、かゆみがあったり、コロコロする感じがした。
それと、やたら喉が渇いて、夜中に何度も起きて、水を飲むようになった。
また、1ヶ月前の夜には、腰やお腹に激痛が走った。
救急車を呼ぼうとしたが、しばらく我慢していたら、スッと痛みは引いた。
こんな痛みは、初めてだった。
□ 研修医のみなさんの最終診断
ドクターG によれば、胸が痛いといってもいろんな病気がある。
胸が痛いと聞けば、30~40の病名が浮かぶ。
ただ、患者さんの症状の組み合わせによって、だんだんと絞られてくる。
A研修医:シェーグレン症候群+筋炎
B研修医:MCTD(混合性結合組織病)
C研修医:シェーグレン症候群+多発筋炎
D研修医:MCTD(混合性結合組織病)
4人があげたのは、いずれも、“自己免疫疾患”。
これは、体を守る免疫システムが自分自身を攻撃してしまう疾患。
“シェーグレン症候群”は、唾液や涙液の分泌低下をきたす疾患。
口や目の渇きが、主な症状。
時に、臓器障害も引き起こす。
“MCTD(混合性結合組織病)”とは、複数の膠原病の症状が合わさった疾患。
様々な症状が全身に及び、シェーグレン症候群が併発することがある。
全員が、目と口の渇きから、シェーグレン症候群を考えたようです。
では、胸の痛みは?
A&C研修医は筋炎、B&D研修医は MCTD と診断。
そうすると、夜中の腹痛は、どう説明する?
A研修医:激痛からゼロになるということで、何かが詰まったか、捻じれたのではないか
シェーグレン症候群の合併症は、どういう臓器に影響があるか?
B研修医:腎臓尿路結石
尿管結石の石の成分は?
C研修医:カルシウム
シェーグレン症候群、尿管結石(カルシウム)、胸の激痛、
これらを考えると?
胸痛を、どうとらえるか?
A研修医:痛みが走る部分は、筋肉全体というより、肋骨に沿うかたちだった
ということは、骨の異常ではないか?
ドクターGによれば、骨には3つの働きがあるという。
1つは体を支える役割、2つ目は内臓を守ること、そして3つ目はカルシウムを調節(貯蔵)する役割。
では、骨が悪くなるような病態は?
有名なのは、骨粗しょう症。
他には、がんの骨転移。
それに、骨軟化症。
39歳の女性で普通に生活をし、食事も通常に摂っている人に、骨粗しょう症は考えにくい。
がんの骨転移は、頭の片隅には置いておくものの、39歳女性ということで、その可能性は遠くに置いておく感じ。
そうすると、残るのは、骨軟化症。
まずあったのは、胸痛。そして腰背部の激痛。目の渇きや、喉の渇き。体がだるい。
このいろんな症状、人間をひとつの有機体と考え、全部を総合的に考えたら、どうなる?
ここで4人の研修医に、話し合う時間が与えられました。
そして本当の最終診断。
導き出されたのは、
シェーグレン症候群からの遠位尿細管性アシドーシスが引き起こした骨軟化症。
研修医のみなさんは、結論にたどり着きました。
左胸の激しい痛みは、骨軟化症による病的骨折だったのです。
検査の結果、他にも微細な骨折が見つかったという。
この骨折を引き起こしたのは、実は腎臓。
シェーグレン症候群によって、腎臓の尿細管に障害が発生し、体が酸性に傾いたことが原因。
わたしたちの体は、この尿細管などで、必要なものとそうでないものを、選り分けている。
しかし、尿細管が障害されると、酸の排出がうまくいかず、体は酸性に傾き、吸収されるはずのカルシウムが尿に大量排泄され、結石が発生しやすくなる。
カルシウムの貯蔵や調節をする骨は、正常な場合は、骨の内外でバランスがとれている。
しかし、体が酸性に傾くと、骨にカルシウムを貯めることができずに、血液中に溶け出しやすくなる。
こうして体内のカルシウム量が減少し、骨軟化症による病的骨折が起こった。
治療としては、ステロイドを使うことで、腎臓がグンとよくなったそう。
また、体の中の酸性を少し調整するために、重曹を投与した。
これで症状がまったくなくなった。
現在、患者さんは元気に暮らしている。
最後にドクターG が、研修医のみなさんに言葉を送りました。
“医師というのは、患者さんとのやり取りの中から、挫折とか苦しみやジレンマ、そんなものが吹き飛んでしまうような大きな勇気をもらえるんです。大丈夫です、みなさん、もうそういう2年間を送ってきたわけですから。明日から、また患者さんの傍らに立たせていただいて、そういう真摯な姿勢で、謙虚な態度で、一緒にがんばりましょう。
未来にはたくさんの患者さんが、君たちを待っています”


□
すごいな、こんな濃縮な番組を毎週やってたの?
なんか、壮大だなあ。
何かと叩かれやすいお医者さんたちだから、イメージアップするといいのだけれど。
お医者さんがいなくなったら心底困りますもんね。
過労や訴訟など、いろいろたいへんそうだけど、いてくれることがありがたい。
なので、みんなで守らないとね。
すぐにお医者さんを悪者にしたがるやつには、グーパンチだ!
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