【難聴&耳鳴り】治す方法は、聴覚ネットワークと補聴器/ゲンキの時間
今回のテーマは、「難聴」「耳鳴り」。
認知症とも関係が?
耳が遠くなる理由。
蝸牛と有毛細胞。
耳元で大きな声を出すのは、NG。
聴覚ネットワークを鍛える<聴覚筋トレ>。
耳鳴りの正体は、脳が作り出した音だった。
改善する方法は、補聴器。
ドクネット:東京大学医学部 耳鼻咽喉科学室 山岨達也 教授。
ゲンキリサーチャー:ずん(飯尾和樹&やす)。
2016年7月24日放送の「健康カプセル! ゲンキの時間」より、「~ 年を取っても良く聞こえる! ~ 解明! 聴力アップの秘訣」「難聴で認知症防ぐ簡単訓練」からのメモ書きです。

□ 聴覚ネットワーク

今週のテーマは、「難聴」と「耳鳴り」。
年を取ると、耳が聞こえにくくなるのは、仕方ない。
そう思ってないでしょうか?
専門家の先生は、こうおっしゃってますよ。
東京大学医学部 耳鼻咽喉科学室の、山岨(やまそば)達也 教授。
「難聴を、あきらめてはいけません!」
「年を取っても、高い聴力を維持することは、できるんですよ」
その難聴ですが、「聞き間違い」が、難聴が始まっているサインだという。
と、ここで披露されたのが、三宅裕司さんの奥さんのエピソード。
日曜のラジオでも、おなじみですよね。
「キッチンで仕事しながら、テレビの音だけ聞こえてくるわけ」
「『手の荒れに効く』って聞くと、『アレじゃ分かんないでしょ』って言ってね」
それはともかく、街の声から。
「聞こえるんですけれども、言ってる言葉が、はっきり分からない」
「高い音がね、聞こえにくくなるのと同時に、高い音が煩わしい」
「飲み込めなかったり、聞き取りにくかったりするの」
やっぱり、ある程度の年齢になると、体験する人は多いようです。
なのに、対策はというと、してないみたい。
病院には行かないらしい。
1つは、半ば、あきらめているから。
もう1つは、それほど生活に支障がないから。
こうした老人性難聴ですが、高齢者の孤立を招くことも。
耳が聞こえにくい → テレビの音を大きくする → ケンカになる
耳が聞こえにくい → 聞き間違いをする → トラブルに
耳が遠くなると、コミュニケーションでトラブルが生じ、孤立や引きこもりにつながるケースが、増えているのだとか。
そして、孤立から、さらなる問題が。
アメリカでの調査では、耳がいい人と悪い人で、認知症へのリスクを調べたところ、こんな結果に。
軽度の難聴の人:リスクが 2倍に。
中度の難聴の人:リスクが 3倍に。
重度の難聴の人:リスクが 5倍に。
でも、なぜ、年を取ると耳が遠くなるのでしょう?
<メカニズム>
音は耳に入ると、鼓膜で増幅され、「蝸牛(かぎゅう)」で電気信号に変換されて、脳に伝わります。
その蝸牛の中には、まるで毛のような「有毛細胞」があり、それらが伸縮することで、電気信号に変換しているんですね。

ところが、年を取ると、この有毛細胞が壊れてしまう。
その際、外側にある高い音を感知する細胞から壊れていくため、高齢者は、高い音が聞こえづらくなるのです。
じゃあ、有毛細胞を再生させる方法は、無いのでしょうか?
山岨先生の答えは、こうでした。
「残念ながら、有毛細胞は再生しません」
ということは、年を取って難聴になるのは、仕方ない?
いやいや、答えを出すのは、まだ早い。
次に向かったのは、千葉県は船橋市。
目指すは、「ニチオン」という会社です。
そこである製品を作っているらしい。
その製品とは、「音叉(おんさ)」。
音叉とは、楽器の調律などで、音の高さを確認する道具。
ピアノやギターの調律などで使われているのを、よく見ますよね。
医療現場では、聴覚検査などに使われているそうです。

音の高さは世界基準で定められており、音楽用の場合、「ラ」=440ヘルツ。
この会社に、すごい耳を持つ ご長寿さんがいるといいます。
音叉一筋 59年、本田泰(ほんだ ゆたか)さん 83歳だ。
本田さんの仕事は、音叉を 440ヘルツの響きに最終調整すること。
事前に調整されている音叉ですが、どうしても、1ヘルツほどの誤差が生じてしまいます。
そこで、本田さんが調節するのです。
見本となる音叉と、検査する音叉を、同時に鳴らし、音を聴き比べて、わずかな響きの違いを感じ取る。
まさに、職人芸ですね。
440ヘルツの音叉と、441ヘルツの音叉を、共鳴箱の上で、同時に鳴らします。
すると、「うわ~ん」という音のうなりが聴き取れる。
しかし、本田さんが挑む響きの違いは、こんなに分かりやすいものではありません。
その誤差は、「0.05ヘルツ以内」。
ここまでくると、常人には判別が難しいのだ。
本田さんは、わずかな「うなり」を頼りに、音叉を やすりで少しずつ削って、限りなく 440ヘルツに近づけます。
このように、わずかな音の違いを聞き取る 驚きの耳を持つ、本田さん。
聴力検査をしたところ、意外にも、平均的な80歳代の聴力でした。
これは、どういうわけなんでしょう?
山岨先生の見解は、こう。
「年を取ると、一般的に、誰でも聞こえは悪くなります」
「本田さんの検査結果を見ても、年齢の影響があると考えられます」
「ただ、本田さんの場合、長い間 音の高さを聞き分けていますので、聴覚のネットワークを鍛えることで、ある程度の年齢までいっても、音の聞き分けができていると考えられます」
難聴改善のカギを握るのは、「聴覚ネットワーク」。
これは、音にまつわる全てに関係している 脳内の神経ネットワークのこと。
その働きを知るために、まずは「ずん」の二人が、老人性難聴を体験。
スピーカーから男性の声が聞こえますが、雑音が多くて、何て言っているのか分かりません。
これは機器を使い、老人の聞き取り方をマネしたもの。
騒がしい日常を想定して、あえて雑音を加えているのです。
私たちは本来、耳からの情報を脳に伝達する際、邪魔な雑音をシャットアウトし、自分の聞きたい音を選択して、聞いています。
しかし、年を取ると、それが選択できなくなるのだ。
次は、雑音を外し、男性の声のみに。
でも、こもった感じで、うまく聞き取れません。
これも、老人性難聴の特徴だという。
年を取ると、高い音から次第に聞き取りづらくなります。
人の声の場合、「あいうえお」といった母音は低音なので、比較的、聞き取れる。
でも、子音は高い音が多く、中でも、「か行・さ行・た行・は行・ぱ行」は、聞き取りづらい。
最後に、全く加工してない音を聞いてみます。
これだと、はっきり分かりますね。
若い時には はっきりと聞き取れていたものが、年を取ると、雑音の聞き分けや、子音の聞き取り低下で、何を言われているのか、分からなくなってしまうようです。
そんな老人性難聴の予防・改善に役立つのが、「聴覚ネットワーク」。
会話を理解する上で、キーワードとなる言葉を予想できるか できないか、それが実は、とっても大切なんです。
人間が会話している時、100%全ての音声を聞き取っているわけではありません。
会話の際に、重要なキーワードを取り出しているんです。
この「キーワードを取り出す」ということが、類推(るいすい)ということで、聴覚ネットワークの大切な働きの1つ。
例えば、「#ぁようびですよ」と聞こえたとします。
最初の方が、聞きづらい。
こんな時でも、音に関する神経がカバーし合って類推し、「火曜日ですよ」と正しい答えを出してくれる。
それが、脳内の聴覚ネットワーク。
脳が頑張ってくれているのだ。
他にも、例えば、病院の受付で、「#ぉえんしょう」と聞こえたとします。
この時、「ああ、保険証のことだな」と脳が類推する。
では、この聴覚ネットワークを強化するには、どうしたらいいのでしょうか?
山岨先生がおススメしてくれたのが、これ。
<聴覚筋トレ>
大事なのは、類推する聞き取りを、鍛えることです。
(1) 音の響きが似た言葉を書きます。
例) 「一(いち)」「七(しち)」「吉(きち)」「父(ちち)」とか。
「知る」「散る」「着る」「居る」「昼」など。
これをランダムに、一人が読み上げ、もう一人が復唱する。
(2) 口の動きで類推できないように、背後から出題しましょう。

聴覚ネットワークのトレーニングで大切なのは、音に集中すること。
また、耳が元気なうちから 聴覚ネットワークを鍛えることで、難聴予防に役立つと考えられている。
□ ドクネット
引き続き、東京大学医学部 耳鼻咽喉科学教室 教授の 山岨達也 先生に、教えていただきます。
実は、会話する時に、耳元で大きな声を出すのは、よくないのだそう。
また、お年寄りは、情報を処理する能力も遅くなるので、ゆっくりと分かりやすく話すことも、大切です。
<お年寄りに話しかける時の注意点>
・音が聞こえていないわけではない。
・耳元で大声で話しかけると、耳を痛めてしまう。
・自分の口元が見えるように、ゆっくりと丁寧に、正面から話す。
言葉を工夫するのも、よい。
時間を伝える時、「しちじ」だと分かりにくいので、「ななじ」にするなど。
□ 耳鳴り改善アイテム

続いては、「耳鳴り」です。
現在、耳鳴りに悩む人は、全国で 約1000万人だという。
街の人たちも、経験しているようです。
「ガンガンガンガン鳴ったり、ジーって鳴ったり」
「キーンって声が高くなる感じで」
「心臓の音と同じ速さで、ふわっ、ふわっ、ふわって、いうんですね」
この耳鳴りの音は、どこで鳴っているのでしょうか?
なぜ、こんな音が聞こえるのでしょう?
山岨先生が教えてくれました。
「耳鳴りはですね、実際に鳴っている音が聞こえるのではなくて、頭の中でですね、何か音が聞こえるというのが、耳鳴りなんですね」
実際の音じゃなくて、頭の中で聞こえる?
そして、こんなことも。
「キーンという耳鳴りは、時々、普通の人でも、感じることがあります」
「ただ、難聴のある人がですね、耳鳴りを感じやすいといわれています」
耳鳴りに悩む人は、実は、老人性難聴が原因であることが多い。
音が聞きづらくなると、脳は聞こえなくなった音を必死に聞こうと、興奮状態に。
その結果、脳内の様々な電気信号を、音として感知してしまい、耳鳴りがしてしまうのです。
耳鳴りの正体は、脳が作り出した音だった。
神経が異常に興奮し、感じ取っていたのだ。
耳鳴りは、ひどくなると「睡眠障害」になったり、精神的に追い詰められて「うつ」になったりと、実は、大きなリスクがあるんです。
ずっと耳元で音がしていると思えば、それもうなずけますよね。
かつては治療法がなく、気にしないようにするしか方法がなかったといいます。
けれど、現在、光明が。
難聴がある場合には、よい治療法がある。
それは、「補聴器を使う」こと。
補聴器は、音を大きくする装置。
耳鳴りに悩んでいる人には向いてないように思えますが、実は、そうじゃないんです。
なぜなら、実際の音ではないから。
老人性難聴で聞こえが悪い人などに、補聴器を使うと、聞こえがよくなる。
そして、聞こえがよくなることによって、周囲のいろんな音が入ってくることで、耳鳴りを抑えることができると考えられている。
聞こえない音を聞こうとして、脳が興奮し、耳鳴りに。
なので、その音を聞かせてあげることで、興奮した脳を落ち着かせるってわけ。
そんなことができるのも、デジタル化による補聴器の進歩のおかげなのだ。
使う人の難聴のレベルに合わせ、聞こえない音域だけを増幅することが、可能になりました。

[体験談]
68歳の女性。
補聴器を使うことで、耳鳴りが改善しました。
症状が出たのは、4~5年前。
最初は、耳鳴りだと分かりませんでした。
読書が好きなのですが、耳鳴りに集中してしまい、内容が頭に入らなくなったという。
そして、1年前、補聴器を付け始めたところ、症状が改善。
読書に集中できるようになった。
補聴器を購入する際は、全国に約4000人いるという「補聴器相談医」がいる病院を受診し、「認定補聴器専門店を紹介してもらう」とよいそうです。
今では、周りの雑音を下げる効果を持つ補聴器もあるらしい。
けれど、何でも音を大きくすればいいというものでも、ありません。
その人その人の「聞き取り・難聴の度合い」を検査した上で、各人に合った補聴器を作ることが大切。
ある日、突然、片方の耳だけ聞こえなくなるといったケースも。
これは、「突発性難聴」。
耳の脳梗塞のようなものだという。
耳の細胞が死んでしまう前に治療することが、重要になります。
遅くても1週間以内に受診しないと、症状が治りづらくなる。
「あれ?」と思ったら、病院へ。
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