すい臓がんの早期発見! 血糖値の急上昇&すいのう胞で/ためしてガッテン
今週のテーマは、「すい臓がん」。
早期発見法に貢献した、高松康子さん。
血糖値の急上昇が、サインだった。
ミルクティを飲んでからの超音波エコー検査。
すいのう胞(膵嚢胞)とは?
精密検査を受ける目安。
大阪府立 成人病センター 膵がんセンター 井岡達也 先生の解説。
2015年5月20日放送の「ためしてガッテン」より、「早く! すい臓がん発見 自己判定ガイド初公開」からのメモ書きです。

□ すい臓の声

こわ~い「がん」ですが、専門家たちが最も危険だという がんがあります。
それは、「すい臓がん」。
なぜかといえば、早期発見が極めて難しいから。
その結果、すい臓がんになった人は、5年後には95%以上が亡くなっているのだという。
がんの生存率(5年後)のグラフ。

医療の進歩により、生存率は上がってきています。
けれど、すい臓がんは、たった7%。
データによっては、5%以下という報告も。
大阪府立 成人病センター。
年間1万4000人もの、すい臓の検査を行っています。
片山和宏 先生は、こう教えてくれました。
「通常の検診や人間ドックで、すい臓がんの早期発見に十分なデータを得るのは、難しい」
エコー検査でも、見えればラッキーという感じなのだとか。
すい臓は、食物を分解するための消化液を作っている臓器。
大腸や胃の、さらに奥にあります。
なので、見えにくいんです。
ここで、朗報!
すい臓がんの早期発見に革命を起こした女性がいるらしい。
名前を、高松康子さんという。
福岡県在住。
来月、90歳を迎えます。
この高松さん、すい臓の声が聞こえたらしいのですが…。
どういうことでしょうか?
高松さんは2004年に、すい臓がんの宣告を受けました。
ところが、早期発見だったため、事なきを得ています。
がん発見から11年になりますが、もう、元気、元気!
でも、何から、気づいたのでしょうか?
ある生活習慣のおかげだといいますが…。
それは、「少な目の食事」。
おかげで、体の中に起こっている「ある異変」に気づくことができました。
すい臓の声とは、この「体の異変」のこと。
ここで、テーマが読み上げられます。
「こんな特徴を内蔵した内臓、他にはないぞ~!」
当時、高松さんに、自覚症状はありませんでした。
健康そのもので、痛みもない。
すい臓がんの人の体には、どんな特徴が現れるのでしょう?
解剖学のエキスパート。
東京歯科大学 解剖学講座 主任教授の阿部伸一 先生に、お話をうかがいました。
地下の解剖実習室で見せてくれたのは、「全身の神経の標本」。
すい臓があるあたりを見てみると、糸がこんがらがったみたいに、なってます。
それだけたくさんの神経が、集まってるんですね。
すい臓の周りは多くの臓器があるため、異変を早く察知できるように、神経が集中しているのだと、いわれています。

?
でも、すい臓は 痛くならなかったんですよね?
自覚症状は無かったのでは?

ここで、昔の放送をプレイバック。
2011年5月25日放送の「内臓が突然、溶ける!」という回。
すい炎の患者さんは、こんな風に語っておられました。
「胃が、両手で引きちぎられる感じ。剣山で中をゴリゴリやられるような、強烈な痛みなんですよ」
このように、すい臓は本来、痛くなってもおかしくない臓器なんです。
でも、すい臓がんの患者さんは、まったく痛くないのだという。
ここでスタジオに、白い粉が運ばれてきました。
これは、神経をマヒさせる物質。
高松さんは、この物質が体内で増えたことで、異常に気づくことができました。
つまり、この物質の増加こそが、すい臓からのお知らせ。
□ 血糖値の急上昇
早期発見のカギを握る物質とは、何なのでしょうか?
福岡赤十字病院の筒信隆 先生。
高松さんがある異変を感じた時、筒先生に、それを訴えたらしい。
でも、筒先生は、すい臓の専門家ではありません。
専門とするのは、糖尿。
実は、高松さんは、糖尿病だったからこそ、すい臓がんを自分で早期発見できたんです。
福岡赤十字病院では、高松さんが早期発見したのと同じ方法で、糖尿病の患者さんの中から、すい臓がんを見つけようとしている。
糖尿病・内分泌内科の佐々木信浩 先生に、現場を見せていただきました。
まず問診で、体重を聞きます。
体重の増加に注目。
食生活についても、聞きました。
同じ科の、川井希実 先生。
こちらでは、運動に注目しています。
筒先生は、どうでしょう。
暴飲暴食やお酒の量について、質問。
先生たちは、何をチェックしているのでしょうか?
スタジオに登場した白い粉の正体ですが、実は、「ブドウ糖」。
ブドウ糖の増加が、関係しているらしい。
「ブドウ糖の増加 = 血糖値の上昇」ですよね。
つまり、血糖値とすい臓がんに、深い関係があると。
<メカニズム>
すい臓に潜んでいるとても重要な細胞。
それが、「β細胞」。
食事を摂ると、血糖値が上昇します。
でも、血液中に糖が多くなりすぎると、血管が傷ついてしまう。
そこで、β細胞の出番。
血管中に、インスリンを分泌します。
インスリンは、血糖値をコントロールするホルモン。
分泌されると、血糖値が下がってくる。
これが、健康な状態です。
では、初期のすい臓がんの場合は、どうなるでしょうか。
がんは成長のために、酸素を大量に消費します。
すると、β細胞は、低酸素状態に。
この状態だと、血糖値が上昇しても、インスリンを分泌できません。
血糖値は急上昇し、糖尿病状態に。
高松さんの、当時の血糖状態の推移。
HbA1c(ヘモグロビン エー ワン シー)の値は、7%後半でした。
なのに、だんだんと増えて、3ヵ月で、10%を超えたんです。
高松さんが気づいたのは、この「血糖値の急上昇」。
すい臓がんに気づくための体の異変とは、思い当たる節のない「血糖値の急上昇」だった。
すい臓の声とは、この急上昇。
高松さんは糖尿病だったために、通院し、血糖値を観察していました。
そのおかげで異変に気づくことができ、すい臓がんの早期発見に つながったんです。
□ 井岡達也先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
大阪府立 成人病センター 膵(すい)がんセンターの、井岡達也 先生です。
井岡先生によると、すい臓がんと糖尿病の関係は、以前から明かだったのだそう。
それが最近、血糖値の急上昇が すい臓がんの早期段階で起きることが分かってきました。
2013年のアメリカの研究では、「すい臓がんになった人の85%が がん発覚の数年前に血糖値が上昇している」との報告も。
<すい臓がん 早期発見のコツ>
理由もないのに血糖値が急上昇。
・食べ過ぎや飲み過ぎの覚えがない。
・生活環境に変化がない。
・糖尿病の家族歴がない。
血糖の急上昇はだいたい、体重の増加や生活の乱れなどが原因になるはず。
それが無いのに上がるのは、おかしい。
引っ越しや職場の変化など、目立った影響によるストレスもないのに 血糖値が急上昇したら、要注意。
一般的に、糖尿病には、家族歴があると言われています。
身内に糖尿病患者がいないのに、糖尿病だと診断された時は、すい臓の病気が背景にある可能性も。
年に 1~2度は、血糖値の測定を!
前回の検査結果と比べることが重要です。
生活の乱れが無いはずなのに血糖値が急上昇していたら、専門医を受診してください。
尿糖や空腹時血糖などを要チェック!
より正確に知るには、HbA1c(ヘモグロビン エー ワン シー)を。
ところで、どうして、すい臓がんの患者さんは、痛みを感じないのでしょうか?
血糖値が高くなると、血液の流れに乗って、高い糖分がお腹の周りの神経に蓄積。
そうすると、神経が砂糖漬けのような状態になって、機能が悪くなってしまいます。
高血糖状態が続くと、神経が傷つくため、痛みを感じにくくなるケースも。

理由もないのに血糖値の上昇があった場合は、消化器内科、消化器外科、肝胆膵内科など、すい臓の検査ができる医師に相談を!

ガッテン! ガッテン!
□ 病院での最新検査
大阪府立 成人病センター。
片山和宏 先生に、最新検査を紹介してもらいました。
ミルクティーを飲んでからの、超音波検査。
超音波は、胃の中の空気を通りにくいという特徴があります。
でも、液体で満たせば、通りやすくなる。
おかげで、きれいに見えるようになるんですね。
いろいろ試したところ、空気をほとんど含まない市販のミルクティーが、最も超音波を通しやすかったそうです。
ミルクティーを使用した超音波検査は、現在、臨床研究中のため、一般の病院では受診できないとのこと。
超音波検査で、「すいのう胞」が見えることがあります。

すいのう胞とは、すい臓にできる 液体の溜まった袋。
これがあると、がんになりやすいとされるそう。
ある報告では、ガンのリスクが 22倍とも。
すいのう胞自体は、がんではありません。
ただ、すいのう胞がある すい臓は、要注意。
MRIでの検査。
輪切りにした画像を見ることができます。
でも、1センチに満たない 初期のすい臓がんは、見つけにくい。
すい臓がんは、すい管(の上皮)にできます。
最新のMRIでは、このすい管がはっきり把握できる。
「MRCP(MR膵管胆管撮影)」
すい臓周辺の観察に特化した、MRI検査。
早期段階のすい臓がんを、およそ9割、見つけることができるそう。
放射線による被ばくが無いため、体への負担が少ないという特徴もあります。
検査にかかる費用は、3割負担で 9千円程度。
<すい臓の精密検査を受ける目安>
・理由もないのに、血糖値が上昇。
・超音波検査で、すいのう胞が。
・アミラーゼ値が基準値を超える。
アミラーゼは、すい臓やだ液腺から出る酵素の1つ。
すい臓がんの場合、一時期上がって、また下がるということが、よくある。
一度でも上昇があれば、すい臓の検査ができる医師に相談を。
(アミラーゼ値の検査は、人間ドックなどの血液検査の項目に入っていることが多いとのこと)

すい臓がんのリスクがある人は、一度、すい臓がんを疑って、精密検査を!

ガッテン! ガッテン!
□ 今週の色紙
すい臓がんの早期発見には、自己申告も大事。
そこで…
「お言葉ですが…」
丁寧で、なおかつ、一歩踏み込む。
□

あまりなじみのない、すい臓がん。
早期発見が難しく、生存率も高くありませんでした。

でも、血糖値の急上昇というサインが発見されました。
これが早期発見につながるかもしれません。

健康診断をきっちり受けて、注意したいですね。
次回は、「あの高野豆腐がプルン ヘルシー激ウマ七変化」。
→ 「すい臓が溶ける? 急性すい炎とアルコール」
→ 「インスリンで糖尿病が完治する?」
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