天気痛に酔い止め薬&痛み日記/ためしてガッテン
今週のテーマは、「天気痛」。
犯人は、内耳。
リンパ液とセンサー細胞。
「気のせい」ではなく、「気圧のせい」だった。
名古屋大学 大学院 佐藤純 教授の解説。
(愛知医科大学病院 痛みセンター 非常勤医師)
治療に使う特効薬は、「酔い止め」。
飲むタイミングは、予兆を感じた時。
ヨガの達人 川上光正さん。
瞑想で、洗濯バサミ攻撃を無効化?
週間天気 見るだけ治療法。
2015年1月21日放送の「ためしてガッテン」より、「天気が悪いと痛み出す~肩こり 頭痛 古傷 関節痛 大解消SP」からのメモ書きです。

□ 天気による痛み

なぜか長引く痛み。
中でも、日本人の3人に1人が経験している、不思議な痛みがあります。
天気が悪くなると、古傷がうずいたり、持病が悪化したり。
そんなことは、ありませんか?

雨が降ると腰が痛むとか、ヒザが痛くなるとか、時々、聞きますね。

番組ではこの症状を、「天気痛」と名づけました。
痛む箇所は、様々です。
頭痛、歯痛、首、肩こり、神経痛、リウマチ、腰痛、関節痛、骨折、ねんざ、外傷、手術後の傷、ひざ痛。
しかも、体の調子が悪いのが天気のせいだと、気づいてない方も多い。
ゲストの照英(しょうえい)さんは、元やり投げの選手。
ヒジと肩に故障があって、今も雨が降ると、痛むそうです。
「天気痛」という言葉を聞いただけで、痛い感じがするそう。
ところ変わって、ドイツ。
なんと、天気痛の発生を予測する「天気痛予報」なるものがある。
地域ごとに、どんな痛みが、どのくらい強くなりそうか、毎日予報してくれるのだそう。
頭痛、関節痛など、痛みの種類を選択して、確認することができます。
これは、ドイツ気象庁(DWD)が提供している公共サービスなんですよ。
ヨーロッパ各国やアメリカでも、このような国の機関による天気痛予報サービスが、あるのだそうです。

いろんなサービスが、あるもんなんですね~。

ガッテン隊が向かったのは、稚内(わっかない)。
雪と風で、寒そう~。
風速12メートル、気温は-2℃です。
さて、天気痛の人はいるでしょうか?
ある男性は、北風で痛みが悪化するのだという。
別の人は、悪天候が何日も続いて湿っぽくなると、お腹の手術傷が痛むのだと教えてくれた。
続いては、雨降る新潟で、調査。
風速は 2メートルで、気温は13℃です。
ある女性は、雪が降る1~2週間前から、足がムズムズするのだという。
大雪が降る前は完璧に痛くなる。
ご本人は、「しもやけ予報」と呼んでいます。
[体験談]
4年前に交通事故で右足をケガした女性。
以来、天気が悪くなると、足が痛むようになりました。
台風の時などは、1週間ぐらい前から、痛くて痛くてしょうがなくなる。
痛みだけでなく、腫(は)れも出るのだそう。
足がパンパンに腫れて、そのせいで、皮膚がツルツルに。
赤く腫れた日は、必ず天気が崩れるのだといいます。
いろんな方に話を聞いて分かったのは、悪天候で痛む場所はバラバラであること。
ところが、諸悪の根源、犯人は1人だけなのだという。
それは、たった1つの、私たちの身体の、ある部分。
それは、どこなのでしょうか?
ヒントは、「天気予報ができる部分」。
□ 犯人は誰だ?

ためしてガッテン、天気予報 大実験!
天気痛患者である、男女1人ずつに参加してもらいました。
共通の犯人は、見つかるかな?
もう一人の参加者は、立正大学 地球環境学科の、福岡義隆 名誉教授です。
福岡先生は、天気予報にまつわる「ことわざ」を、科学的に検証し予想する達人なんですよ。
下駄による天気予報を、先生はこう説明してくれた。
「雨が降るのが近づいてくると、鼻緒が湿ってきます。湿って重くなるので、鼻緒が下になる」

天気痛の2人と、福岡先生。
3人に入ってもらったのは、湿度、温度、気圧を変えられる、特別な部屋。
晴れや雨、曇りなど、その天気とそっくりな状態を作ることができる。
さて、3人は天気を予想できるでしょうか?
まずは、<晴れの状態>。
福岡先生は、ごはん粒の変化、納豆の匂いなどを、確認しています。
天気痛の2人は、痛みを感じないので晴れと推理。
結果は、3人とも正解でした。
お次は、<今にも雨が降り出しそうな曇り>。
男性は、足の痛みと重みを感じた。
女性も、肩や腕に違和感がありそう。
2人とも、雨が近い曇りだと回答し、正解。
<台風>の時も、天気痛の2人は正解。
<梅雨>でも、正解。
雨の降り具合まで、分かるようです。
2人とも、的中率 100%でした。
すご~い!
福岡先生も、「人体気象予報士」だと驚いていた。
(2問目からの先生の結果は、不明です)
一度休憩して、実験再開です。
でも、天気痛の2人の様子が、おかしいぞ。
<晴れ>が、分からなくなってる。
<今にも雨が降り出しそうな曇り>など、先ほどは正解してたものが、当てられません。
いったい、どうしたのでしょうか?
休憩中したのは、見晴らしのいいレストランでの食事。
これが影響したのかな?
レストランがある場所は、高層階。
エレベーターに乗ったら、2人とも、耳がキンキンすると言い出した。
そして、天気痛を訴え始めました。
この痛みがずっと続いたので、天気を当てるどころじゃなくなったのです。
実は、天気痛の犯人は耳。
でも、どうして、耳が全身の痛みを引き起こすの?
□ 気圧のせい
ここでスタジオに、模型が登場。
天気を感じる部分は、耳の鼓膜の内側の、さらに奥。
「内耳(ないじ)」という部分。
中に満たされているのは、リンパ液です。
身体を傾けたりした場合に生じる リンパ液の流れを、脳が感知することによって、人間は体のバランスをとることができる。
内耳には、「気圧センサー細胞」があります。
低気圧がくると、気圧センサー細胞が興奮。
リンパ液に、波が起きる。
この時、体を動かしていないにもかかわらず、まるで体が動いたり傾いたりしたかのような情報が、脳に送られてしまいます。
そうすると、「目から入ってくる情報」と「リンパ液が伝える情報」が食い違うので、脳は大混乱。
この大混乱が、脳にとって大きなストレスになる。
脳がストレスを感じると、全身に張り巡らされている交感神経が興奮。
しかも、この交感神経は、末梢の古傷や持病のある部分の「痛覚神経」と、つながっているんですね。
交感神経が興奮すると、それにつられて、痛み神経も興奮してしまう。
結果、治ったはずの古傷が痛み出したり、持病が悪化したりしてしまうのです。
腫れや むくみが出るのも、このため。
交感神経は血管の周りに張り巡らされていて、血管をギュッと締め付ける働きがあります。
そうすると、血流が悪くなるので、腫れや むくみが起きてしまう。
気圧センサーの細胞自体は、みんな持っています。
けれど、敏感さに個人差がある。
気圧センサーに刺激が与えられた時、天気痛の人と正常な人で、どのぐらい反応が違うか、調べた実験があります。
天気痛の人は、正常な人に比べ、1/3の刺激で反応。
敏感なんですね。
しかも、不快感は3倍持続する。
痛みは、「気のせい」ではなく、「気圧のせい」だったのです。
□ 治療薬

メカニズムは、分かりました。
では、どうやって治したらいいのでしょう?
実は、薬があります。
みなさん知っていて、ドラッグストアでも売ってるもの。
天気痛治療薬の正体とは?
愛知医科大学病院。
ここには、「痛みセンター」がある。
いわば、日本で唯一の天気痛外来。
佐藤純 教授は、世界でも数少ない天気痛のスペシャリストなんですよ。
診療を受けるため、全国から患者さんが訪れます。
佐藤先生が研究を始めたきっかけは、テレビ番組。
NHKの『疲労回復テレビ』だった。
1994年10月放送、「関節の痛みで なぜ 天気が予測できるか?!」。
20年前、先生も出演していたのです。
番組の実験で、天候の変化により、関節が腫れたり、痛みが生じることを、目の当たりにしました。
その時、「何かあるんでしょうけど、研究が追いついていない」と、コメントした。
以来、その原因を追い求め、9年前、ついに発見したのです。
気圧の変化を耳で感じているということを、世界で初めて突き止めました。
佐藤純 先生は、天気痛治療には超重要なポイントがあると、教えてくれた。
「この病気の治療の重要な点は、薬を飲むタイミング」
患者さんは、痛む前に予兆を感じる人が、多いようです。
気圧が変わったことを、感じとるんですね。
この予兆のタイミングで薬を飲めば、とってもよく効くらしい。
「薬の効果を最大限に生かす」→「予兆のタイミングで薬を飲む」
じゃあ、どんな薬を飲むのでしょう?
特別なものかと思いきや、ただの「酔い止め」でした。
□ 佐藤純先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
名古屋大学 大学院の、佐藤純 教授。(愛知医科大学病院 痛みセンターでは、非常勤医師)
さて、どうして酔い止めの薬が、天気痛に効くのでしょうか?
酔い止めの薬は、内耳にある神経を鎮(しず)めて、リンパ液の流れを大人しくする効果がある。
天気痛と乗り物酔いは、メカニズムが近いんですね。
酔い止めの薬は、乗り物に乗る30分ぐらい前に飲みます。
天気痛の場合も、天気が悪くなる前に飲むのがいい。
<気圧変化により感じる 主な予兆>
・耳が詰まった感じがする。
・眠気がする。
・頭がボーっとする。
・めまいがする。
・首や肩が重くなる。
・こめかみが締め付けられる。
予兆の種類も、出る時間も、人によって様々です。
なので、自分の予兆を自覚することは難しい。
そこで利用するのが、「痛み日記」と呼ばれるもの。
項目は上から、「日付」「天気」「日記(気づいたことや行動など)」「痛みの度合い」。

痛み日記を書くことで、痛みの強さと天気の変化が連動していることが、分かります。
どんな時に、痛むのか?
自分で予兆に気づくためのポイントを、これで見つけていくわけです。
予兆のタイミングで酔い止めを服用すると、痛みが強くなるためのきっかけを抑えるので、効果が長くなるそう。
佐藤先生によると、自分の予兆が酔い止めの効能に書いてあれば、飲んでみてもよいとのこと。
(例えば、眠気がするとか、めまいがするとか)
(購入の際は、内耳に作用するタイプの酔い止めか、専門家に確認してください)
(また、副作用や他の薬との飲み合わせもあるため、かかりつけ医と相談の上、服用してください)

天気痛の原因は、「耳」。
治療薬は、「酔い止め」です。

ガッテン! ガッテン!
□ 夢の物質「リキッド」

治療は、薬だけではないようですよ。
スタジオで、実験が始まりました。
鎮痛に関して研究している、エキスパートの女性が登場。
痛みの度合いを測定できる機械を、持って来てくれました。
照英さんの腕に、電極が貼られましたよ。
痛みが耐えられないレベルになったら、スイッチを押してもらいます。
さあ、実験スタート。
一度、実験し、次に、ゴムボールを持って、再度実験。
このゴムボール、南米の特殊なゴムの樹から採られた樹脂「リキッド」で、できている。
痛みの神経にくる信号をブロックする効果があります。
つまり、このゴムボールは、強力な痛みを抑える物質。
さあ、リキッドを手にして、実験だ。
照英さんは、「ぜんぜん痛くない」と言っています。
設定電流リミットを超えたので、機械の方が停止してしまいました。
これは、「普通の人は耐えられる痛みではない」とのこと。
すごいぞ、「リキッド」。
でも、小野史惠アナは、口をおさえて笑っています。
「リキッド」を反対から読むと、どうなるか?
「リキッド」→「ドッキリ」。
つまり、これ、ドッキリだったのです。
リキッドなんて物質は、ない。
あれ?
でも、耐えられましたよね。
実は、「痛みというのは、心と深く関係している」のです。
これが、天気痛のもう一つの大事な治療法と関係している。
□ 週間天気で軽減
痛みと心の領域には、深い関係がある。
それを、この方が教えてくれます。
ヨガの達人、川上光正さん。
本場インドで修業を積み、ヨガの指導歴は 40年。
日本のヨガの、草分け的存在です。
「ヨガには強力な痛みでも抑えてしまう効果がある」のだという。
生理学研究所の 柿木隆介 教授は、こうおっしゃった。
「ヨガの方が瞑想に入ると、急に痛くないという特別な状況になるんですよね」
そこで、実験することに。
まずは川上さんに、瞑想してもらう。
その状態で、洗濯バサミを、はさんでいきます。
お腹、ホッペ、胸、肩。
たくさんの洗濯バサミをつけて、一気にヒモを引っ張った。

すごく痛そうですが、達人は平然として、瞑想を続けています。
まさに、無我の境地。
ちなみに、瞑想してない状態だと、痛いようです。
そりゃ、そうだ。
でも、なぜ、こうなるのでしょうか?
柿木先生は、こう説明してくれた。
「ヨガの達人は瞑想状態に入ると、いわゆる脳内麻薬をたくさん出して、痛みを抑えているんだと考えられています」
達人の脳の活動を、MRIで詳しく調べてみました。
強い刺激を与えた時、通常では痛みを感じると黄色く光る部分が、瞑想中では、まったく反応が見られない。
では、普通の人は、どうすればいいのだろうか?
いきなり、ヨガの達人のようにはなれません。
でも、ご安心を。
実は、最新の研究で、痛みを抑える脳内麻薬を簡単に出す方法が分かってきたんです。
脳には、「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる部分がある。
これは、痛みの制御に関係している箇所。
痛みが起こると、神経を伝わって、脳に運ばれます。
そして、痛いと感じるのですが、この時、側坐核が活性化。
脳内麻薬が働き出します。
すると、痛みを抑える信号が送られて、痛みが治まる。
この脳内麻薬は、モルヒネの6.5倍に相当する鎮痛効果がある。
実は、この人間に備わっている鎮痛機能が、天気痛の治療に応用されています。
カギは、ヨガではなく、天気予報。
ドイツの天気痛予報ですが、患者さんは、見ているだけで治療になると話してくれた。
「予報を見るだけで、通院回数も減り、薬の服用も少なくなりました」
「予報から情報を得ることで、とてもリラックスできるんです」
天気痛も、慢性痛の一つ。
慢性痛は、ストレスによって悪化します。
ストレスは側坐核の動きを悪くして、脳内麻薬の量を減らしてしまうのです。
なので、ストレスを減らすということは、天気痛の治療にとって、たいへん重要になる。
天気予報を見れば、天気がどのぐらい悪くなるか、事前に予想できます。
それだけでも、ストレスの軽減につながる。
<週間天気「見るだけ治療法」>
晴れから雨に移っていく時など、内耳が影響を受けて、調子が悪くなっていく。
要注意の日なので、無理をしないようにしようと考えます。
また、やがて晴れになることも分かる。
「天気が良くなれば痛みが楽になる」と考えるので、ストレスの軽減になります。
天気予報で、ある程度、痛みを予見できる。
そして、「天気がよくなる → 調子がよくなっていく」と、明るい予見も得られるってわけ。
最悪のストレスは、「このままずっと痛みが続くんじゃないか」と思うことだから。

天気痛は、気のせいじゃなかった!
原因や治療法がある病気なのです。

ガッテン! ガッテン!


□

天気によって痛むというのは、ちゃんと証明されていたのか。

酔い止めが効くなんて、意外でした。

天気痛の人にとっては、朗報ですね。

関係するのが、またもストレス。
ストレスって、ホントに、健康によくないんですね。
来週は、お休み。
次回の放送は、2月4日。
「クラッとしたら… そこに潜む病気解明SP」。


→ 「ためしてガッテン 2013年のアーカイブ 4月~6月」
犯人は、内耳。
リンパ液とセンサー細胞。
「気のせい」ではなく、「気圧のせい」だった。
名古屋大学 大学院 佐藤純 教授の解説。
(愛知医科大学病院 痛みセンター 非常勤医師)
治療に使う特効薬は、「酔い止め」。
飲むタイミングは、予兆を感じた時。
ヨガの達人 川上光正さん。
瞑想で、洗濯バサミ攻撃を無効化?
週間天気 見るだけ治療法。
2015年1月21日放送の「ためしてガッテン」より、「天気が悪いと痛み出す~肩こり 頭痛 古傷 関節痛 大解消SP」からのメモ書きです。

□ 天気による痛み

なぜか長引く痛み。
中でも、日本人の3人に1人が経験している、不思議な痛みがあります。
天気が悪くなると、古傷がうずいたり、持病が悪化したり。
そんなことは、ありませんか?

雨が降ると腰が痛むとか、ヒザが痛くなるとか、時々、聞きますね。

番組ではこの症状を、「天気痛」と名づけました。
痛む箇所は、様々です。
頭痛、歯痛、首、肩こり、神経痛、リウマチ、腰痛、関節痛、骨折、ねんざ、外傷、手術後の傷、ひざ痛。
しかも、体の調子が悪いのが天気のせいだと、気づいてない方も多い。
ゲストの照英(しょうえい)さんは、元やり投げの選手。
ヒジと肩に故障があって、今も雨が降ると、痛むそうです。
「天気痛」という言葉を聞いただけで、痛い感じがするそう。
ところ変わって、ドイツ。
なんと、天気痛の発生を予測する「天気痛予報」なるものがある。
地域ごとに、どんな痛みが、どのくらい強くなりそうか、毎日予報してくれるのだそう。
頭痛、関節痛など、痛みの種類を選択して、確認することができます。
これは、ドイツ気象庁(DWD)が提供している公共サービスなんですよ。
ヨーロッパ各国やアメリカでも、このような国の機関による天気痛予報サービスが、あるのだそうです。

いろんなサービスが、あるもんなんですね~。

ガッテン隊が向かったのは、稚内(わっかない)。
雪と風で、寒そう~。
風速12メートル、気温は-2℃です。
さて、天気痛の人はいるでしょうか?
ある男性は、北風で痛みが悪化するのだという。
別の人は、悪天候が何日も続いて湿っぽくなると、お腹の手術傷が痛むのだと教えてくれた。
続いては、雨降る新潟で、調査。
風速は 2メートルで、気温は13℃です。
ある女性は、雪が降る1~2週間前から、足がムズムズするのだという。
大雪が降る前は完璧に痛くなる。
ご本人は、「しもやけ予報」と呼んでいます。
[体験談]
4年前に交通事故で右足をケガした女性。
以来、天気が悪くなると、足が痛むようになりました。
台風の時などは、1週間ぐらい前から、痛くて痛くてしょうがなくなる。
痛みだけでなく、腫(は)れも出るのだそう。
足がパンパンに腫れて、そのせいで、皮膚がツルツルに。
赤く腫れた日は、必ず天気が崩れるのだといいます。
いろんな方に話を聞いて分かったのは、悪天候で痛む場所はバラバラであること。
ところが、諸悪の根源、犯人は1人だけなのだという。
それは、たった1つの、私たちの身体の、ある部分。
それは、どこなのでしょうか?
ヒントは、「天気予報ができる部分」。
□ 犯人は誰だ?

ためしてガッテン、天気予報 大実験!
天気痛患者である、男女1人ずつに参加してもらいました。
共通の犯人は、見つかるかな?
もう一人の参加者は、立正大学 地球環境学科の、福岡義隆 名誉教授です。
福岡先生は、天気予報にまつわる「ことわざ」を、科学的に検証し予想する達人なんですよ。
下駄による天気予報を、先生はこう説明してくれた。
「雨が降るのが近づいてくると、鼻緒が湿ってきます。湿って重くなるので、鼻緒が下になる」

天気痛の2人と、福岡先生。
3人に入ってもらったのは、湿度、温度、気圧を変えられる、特別な部屋。
晴れや雨、曇りなど、その天気とそっくりな状態を作ることができる。
さて、3人は天気を予想できるでしょうか?
まずは、<晴れの状態>。
福岡先生は、ごはん粒の変化、納豆の匂いなどを、確認しています。
天気痛の2人は、痛みを感じないので晴れと推理。
結果は、3人とも正解でした。
お次は、<今にも雨が降り出しそうな曇り>。
男性は、足の痛みと重みを感じた。
女性も、肩や腕に違和感がありそう。
2人とも、雨が近い曇りだと回答し、正解。
<台風>の時も、天気痛の2人は正解。
<梅雨>でも、正解。
雨の降り具合まで、分かるようです。
2人とも、的中率 100%でした。
すご~い!
福岡先生も、「人体気象予報士」だと驚いていた。
(2問目からの先生の結果は、不明です)
一度休憩して、実験再開です。
でも、天気痛の2人の様子が、おかしいぞ。
<晴れ>が、分からなくなってる。
<今にも雨が降り出しそうな曇り>など、先ほどは正解してたものが、当てられません。
いったい、どうしたのでしょうか?
休憩中したのは、見晴らしのいいレストランでの食事。
これが影響したのかな?
レストランがある場所は、高層階。
エレベーターに乗ったら、2人とも、耳がキンキンすると言い出した。
そして、天気痛を訴え始めました。
この痛みがずっと続いたので、天気を当てるどころじゃなくなったのです。
実は、天気痛の犯人は耳。
でも、どうして、耳が全身の痛みを引き起こすの?
□ 気圧のせい
ここでスタジオに、模型が登場。
天気を感じる部分は、耳の鼓膜の内側の、さらに奥。
「内耳(ないじ)」という部分。
中に満たされているのは、リンパ液です。
身体を傾けたりした場合に生じる リンパ液の流れを、脳が感知することによって、人間は体のバランスをとることができる。
内耳には、「気圧センサー細胞」があります。
低気圧がくると、気圧センサー細胞が興奮。
リンパ液に、波が起きる。
この時、体を動かしていないにもかかわらず、まるで体が動いたり傾いたりしたかのような情報が、脳に送られてしまいます。
そうすると、「目から入ってくる情報」と「リンパ液が伝える情報」が食い違うので、脳は大混乱。
この大混乱が、脳にとって大きなストレスになる。
脳がストレスを感じると、全身に張り巡らされている交感神経が興奮。
しかも、この交感神経は、末梢の古傷や持病のある部分の「痛覚神経」と、つながっているんですね。
交感神経が興奮すると、それにつられて、痛み神経も興奮してしまう。
結果、治ったはずの古傷が痛み出したり、持病が悪化したりしてしまうのです。
腫れや むくみが出るのも、このため。
交感神経は血管の周りに張り巡らされていて、血管をギュッと締め付ける働きがあります。
そうすると、血流が悪くなるので、腫れや むくみが起きてしまう。
気圧センサーの細胞自体は、みんな持っています。
けれど、敏感さに個人差がある。
気圧センサーに刺激が与えられた時、天気痛の人と正常な人で、どのぐらい反応が違うか、調べた実験があります。
天気痛の人は、正常な人に比べ、1/3の刺激で反応。
敏感なんですね。
しかも、不快感は3倍持続する。
痛みは、「気のせい」ではなく、「気圧のせい」だったのです。
□ 治療薬

メカニズムは、分かりました。
では、どうやって治したらいいのでしょう?
実は、薬があります。
みなさん知っていて、ドラッグストアでも売ってるもの。
天気痛治療薬の正体とは?
愛知医科大学病院。
ここには、「痛みセンター」がある。
いわば、日本で唯一の天気痛外来。
佐藤純 教授は、世界でも数少ない天気痛のスペシャリストなんですよ。
診療を受けるため、全国から患者さんが訪れます。
佐藤先生が研究を始めたきっかけは、テレビ番組。
NHKの『疲労回復テレビ』だった。
1994年10月放送、「関節の痛みで なぜ 天気が予測できるか?!」。
20年前、先生も出演していたのです。
番組の実験で、天候の変化により、関節が腫れたり、痛みが生じることを、目の当たりにしました。
その時、「何かあるんでしょうけど、研究が追いついていない」と、コメントした。
以来、その原因を追い求め、9年前、ついに発見したのです。
気圧の変化を耳で感じているということを、世界で初めて突き止めました。
佐藤純 先生は、天気痛治療には超重要なポイントがあると、教えてくれた。
「この病気の治療の重要な点は、薬を飲むタイミング」
患者さんは、痛む前に予兆を感じる人が、多いようです。
気圧が変わったことを、感じとるんですね。
この予兆のタイミングで薬を飲めば、とってもよく効くらしい。
「薬の効果を最大限に生かす」→「予兆のタイミングで薬を飲む」
じゃあ、どんな薬を飲むのでしょう?
特別なものかと思いきや、ただの「酔い止め」でした。
□ 佐藤純先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
名古屋大学 大学院の、佐藤純 教授。(愛知医科大学病院 痛みセンターでは、非常勤医師)
さて、どうして酔い止めの薬が、天気痛に効くのでしょうか?
酔い止めの薬は、内耳にある神経を鎮(しず)めて、リンパ液の流れを大人しくする効果がある。
天気痛と乗り物酔いは、メカニズムが近いんですね。
酔い止めの薬は、乗り物に乗る30分ぐらい前に飲みます。
天気痛の場合も、天気が悪くなる前に飲むのがいい。
<気圧変化により感じる 主な予兆>
・耳が詰まった感じがする。
・眠気がする。
・頭がボーっとする。
・めまいがする。
・首や肩が重くなる。
・こめかみが締め付けられる。
予兆の種類も、出る時間も、人によって様々です。
なので、自分の予兆を自覚することは難しい。
そこで利用するのが、「痛み日記」と呼ばれるもの。
項目は上から、「日付」「天気」「日記(気づいたことや行動など)」「痛みの度合い」。

痛み日記を書くことで、痛みの強さと天気の変化が連動していることが、分かります。
どんな時に、痛むのか?
自分で予兆に気づくためのポイントを、これで見つけていくわけです。
予兆のタイミングで酔い止めを服用すると、痛みが強くなるためのきっかけを抑えるので、効果が長くなるそう。
佐藤先生によると、自分の予兆が酔い止めの効能に書いてあれば、飲んでみてもよいとのこと。
(例えば、眠気がするとか、めまいがするとか)
(購入の際は、内耳に作用するタイプの酔い止めか、専門家に確認してください)
(また、副作用や他の薬との飲み合わせもあるため、かかりつけ医と相談の上、服用してください)

天気痛の原因は、「耳」。
治療薬は、「酔い止め」です。

ガッテン! ガッテン!
□ 夢の物質「リキッド」

治療は、薬だけではないようですよ。
スタジオで、実験が始まりました。
鎮痛に関して研究している、エキスパートの女性が登場。
痛みの度合いを測定できる機械を、持って来てくれました。
照英さんの腕に、電極が貼られましたよ。
痛みが耐えられないレベルになったら、スイッチを押してもらいます。
さあ、実験スタート。
一度、実験し、次に、ゴムボールを持って、再度実験。
このゴムボール、南米の特殊なゴムの樹から採られた樹脂「リキッド」で、できている。
痛みの神経にくる信号をブロックする効果があります。
つまり、このゴムボールは、強力な痛みを抑える物質。
さあ、リキッドを手にして、実験だ。
照英さんは、「ぜんぜん痛くない」と言っています。
設定電流リミットを超えたので、機械の方が停止してしまいました。
これは、「普通の人は耐えられる痛みではない」とのこと。
すごいぞ、「リキッド」。
でも、小野史惠アナは、口をおさえて笑っています。
「リキッド」を反対から読むと、どうなるか?
「リキッド」→「ドッキリ」。
つまり、これ、ドッキリだったのです。
リキッドなんて物質は、ない。
あれ?
でも、耐えられましたよね。
実は、「痛みというのは、心と深く関係している」のです。
これが、天気痛のもう一つの大事な治療法と関係している。
□ 週間天気で軽減
痛みと心の領域には、深い関係がある。
それを、この方が教えてくれます。
ヨガの達人、川上光正さん。
本場インドで修業を積み、ヨガの指導歴は 40年。
日本のヨガの、草分け的存在です。
「ヨガには強力な痛みでも抑えてしまう効果がある」のだという。
生理学研究所の 柿木隆介 教授は、こうおっしゃった。
「ヨガの方が瞑想に入ると、急に痛くないという特別な状況になるんですよね」
そこで、実験することに。
まずは川上さんに、瞑想してもらう。
その状態で、洗濯バサミを、はさんでいきます。
お腹、ホッペ、胸、肩。
たくさんの洗濯バサミをつけて、一気にヒモを引っ張った。

すごく痛そうですが、達人は平然として、瞑想を続けています。
まさに、無我の境地。
ちなみに、瞑想してない状態だと、痛いようです。
そりゃ、そうだ。
でも、なぜ、こうなるのでしょうか?
柿木先生は、こう説明してくれた。
「ヨガの達人は瞑想状態に入ると、いわゆる脳内麻薬をたくさん出して、痛みを抑えているんだと考えられています」
達人の脳の活動を、MRIで詳しく調べてみました。
強い刺激を与えた時、通常では痛みを感じると黄色く光る部分が、瞑想中では、まったく反応が見られない。
では、普通の人は、どうすればいいのだろうか?
いきなり、ヨガの達人のようにはなれません。
でも、ご安心を。
実は、最新の研究で、痛みを抑える脳内麻薬を簡単に出す方法が分かってきたんです。
脳には、「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる部分がある。
これは、痛みの制御に関係している箇所。
痛みが起こると、神経を伝わって、脳に運ばれます。
そして、痛いと感じるのですが、この時、側坐核が活性化。
脳内麻薬が働き出します。
すると、痛みを抑える信号が送られて、痛みが治まる。
この脳内麻薬は、モルヒネの6.5倍に相当する鎮痛効果がある。
実は、この人間に備わっている鎮痛機能が、天気痛の治療に応用されています。
カギは、ヨガではなく、天気予報。
ドイツの天気痛予報ですが、患者さんは、見ているだけで治療になると話してくれた。
「予報を見るだけで、通院回数も減り、薬の服用も少なくなりました」
「予報から情報を得ることで、とてもリラックスできるんです」
天気痛も、慢性痛の一つ。
慢性痛は、ストレスによって悪化します。
ストレスは側坐核の動きを悪くして、脳内麻薬の量を減らしてしまうのです。
なので、ストレスを減らすということは、天気痛の治療にとって、たいへん重要になる。
天気予報を見れば、天気がどのぐらい悪くなるか、事前に予想できます。
それだけでも、ストレスの軽減につながる。
<週間天気「見るだけ治療法」>
晴れから雨に移っていく時など、内耳が影響を受けて、調子が悪くなっていく。
要注意の日なので、無理をしないようにしようと考えます。
また、やがて晴れになることも分かる。
「天気が良くなれば痛みが楽になる」と考えるので、ストレスの軽減になります。
天気予報で、ある程度、痛みを予見できる。
そして、「天気がよくなる → 調子がよくなっていく」と、明るい予見も得られるってわけ。
最悪のストレスは、「このままずっと痛みが続くんじゃないか」と思うことだから。

天気痛は、気のせいじゃなかった!
原因や治療法がある病気なのです。

ガッテン! ガッテン!
□

天気によって痛むというのは、ちゃんと証明されていたのか。

酔い止めが効くなんて、意外でした。

天気痛の人にとっては、朗報ですね。

関係するのが、またもストレス。
ストレスって、ホントに、健康によくないんですね。
来週は、お休み。
次回の放送は、2月4日。
「クラッとしたら… そこに潜む病気解明SP」。
→ 「ためしてガッテン 2013年のアーカイブ 4月~6月」
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