金属アレルギーは、汗と菌と傷が原因/ためしてガッテン
今週のテーマは、「金属アレルギー」。
そのスイッチは、「金属+汗+菌+傷」だという。
ネックレスだけじゃない、歯のブリッジにも要注意。
東北大学 加齢医学研究所が発見した、メカニズムとは?
関東裕美先生による、予防と対策。
アーマード・バトルまで、出てきちゃったよ。
触れなくてもなる、全身型とは?
2013年9月18日放送の「ためしてガッテン」より、「あぁ突然! 金属アレルギー 体質改善の謎一挙解明」からのメモ書きです。

□ 金属アレルギー

今回のテーマは、金属アレルギー。
まずは、こんな体験談から。
高知県にお住いの、50歳の女性。
あるアレルギーが悪化し、肌に重い症状が出ました。
手首と首回りに、ただれのリングができた。
その原因は、金属アレルギー。
10年以上も使っていた時計とアクセサリーが、今になって突然、牙をむいたのです。
さらに、化粧品までもが、原因となった。
実は、化粧品の中にも、金属のパウダーが混ざっている場合がある。
そして、点滴の針や注射針にも、アレルギーが出てしまった。
皮膚科の専門医は、こうおっしゃいます。
「金属アレルギーは、誰もがある日突然、発症する可能性があります」

誰もが、ですか?

はい。
金属アレルギーは、年齢、性別、関係なし。
誰でも、ある日突然、始まってしまうかもしれないものなんです。
その数は予備軍も含めると、推定1000万人。

我々は、どういう風に、金属アレルギーになっちゃうんでしょう?

そもそも私たちは、体に、金属アレルギー体質になるスイッチを持っているんです。
みんな、ですよ。
金属アレルギーなのかどうかは、単にスイッチがオンになってるかオフになっているかの違いだけ。

ああ…。
□ 突然の発症
<ケース(1)>
大阪府の、27歳の女性。
4年ほど前から、謎の肌荒れに悩んでいました。
場所は、目の周りです。
ただれがひどくって、汁みたいなものが出る。
こうした症状が繰り返し現れ、3年以上も、原因不明の状態でした。
やがて原因が明らかになったのですが、それはビューラーでした。
アイラッシュカーラー。まつ毛を上向きにさせる化粧具ですね。
これを知って、女性は驚きました。
毎日1分も使わない器具で、まさか、こんなことになるとは。
<ケース(2)>
熊本県に住む、73歳の男性。
口の中に、症状が出ました。
両側の頬とか歯ぐきが、白くただれてしまった。
原因は、歯のブリッジや差し歯の根元に使われる、金属。
辛いものを食べた時など、飛び上がるぐらい痛いのだという。
さらには、冷たいものや酸っぱいものまで、しみてしまう。
原因が原因だけに、すべてを取り除くには多額の費用が。
なので、今は、我慢の日々。
<ケース(3)>
山形県の、7歳の男の子。
症状が現れた場所は、手や腕でした。
最初、水いぼのようなものができて、そこから汁が出た。
どうしても寝ている間に かきむしってしまうので、血が出るぐらい ひどい状態になったといいます。
原因の1つとなっていたのは、ミニカー。
今は、直接手に触れないようにと、ラップでカバーして遊んでいる。
この男の子は、5歳の時に、アレルギーが始りました。
もしかして遺伝かと思いましたが、家族で金属アレルギーなのは、この子だけだという。
この3名の方々、原因は、ビューラー、歯のブリッジ、ミニカーと、様々です。
共通しているのは、それまで大丈夫だったのに あの日突然 発症していること。
女性はずっと同じビューラーを使っていたし、男性は前から歯のブリッジを入れていたし、男の子は前からミニカーで遊んでいました。
それがある日突然、金属アレルギーに。
そのきっかけとは、何だったのでしょうか?
□ 汗と金属
詳しく話を聞いていると、もう1つ共通項が出てきました。
それは、「汗」。
汗と金属アレルギーは、関係あるのでしょうか?
ここはもちろん、ためしてガッテン大実験!
協力してくれたのは、汗の研究を続けて15年というこの方。
神戸大学 皮膚科の、尾藤利憲 講師。
3人のスタッフがそれぞれ、100円玉、時計のベルト、ネックレスという金属を手で持ってもらいます。
その状態で手をビニール袋に入れ、走ってもらいました。
気温30℃を超える炎天下の中、水分補給しながら、1時間、ひたすら走る。
BGMは、グレートマジンガーだ。
ダッシュ! ダッシュ! ダンダンダダン!
ダッシュ! ダッシュ! ダンダンダダン!
ダッシュ! ダッシュ! ダンダンダダン!
スクランブル~~~ ダッシュ!
すると、涙は流れませんでしたが、汗が大量に流れた。
この汗を持って、東北大学 薬学部へ。
平澤研究室に協力していただき、特殊な装置で、汗を分析してもらいます。
その結果、ニッケルが出ていることが分かりました。
100円玉、時計の金属ベルト、ネックレス、それらを握った手の汗すべてから、ニッケルが検出されたのです。
ニッケルは、ステンレスやホワイトゴールドなど、合金の原料になる身近な金属。
それが、アレルギーを引き起こす金属、ナンバーワンだといわれてるんです。
<アレルギーを起こす金属>
ニッケル、クロム、コバルト、
鉄、亜鉛、銅、
水銀、スズ、パラジウム、
アルミニウム、マンガンなど。
金属は汗に溶けると、イオンと呼ばれる非常に小さな粒になります。
その大きさは、0.0000001mm。
微小なので、それが肌に、しみ込むようになってしまいます。
金属+汗=肌にしみ込む
ただ、金属アレルギーのスイッチは、それだけじゃない。
それを知るために、ある趣味の方たちに、密着します。
多田敬一さん、52歳。
この方は12年前から、あるスポーツにハマっているのです。
海外では大きな大会があり、おそらく数万人がやっているのではないかという、そのスポーツ。
そうとうハードらしいですよ。
その名は、「アーマード・バトル」。
身につけているステンレス製の鎧は、総重量がなんと、28kg!
専用の刀で、思いっきり打ち合うんだ。
海外では、1000人以上が参加して戦う団体戦なども、あるそう。
人気なんですよ。
かなり激しく打ち合うのですが、鎧のおかげで、ケガは無し。
でも、すごく息が上がっています。
それに、汗だく。
夏場なんて、もう…。
ということは、「金属+汗」。
もしかして、金属アレルギーってことは…。
ないそうです。
みなさん、金属のアレルギーは持ってない。

あれ?
そうすると、「金属+汗」の方程式が成り立たないんでは?

実は、この式には、続きがあります。
「金属+汗+?」
まだ、加わるんですね。
100円玉など金属を握って走った、先ほどの実験。
実は、握ってない方の手も、測定していました。
そして、その持ってない方の手からも、金属がけっこう検出されていたんです。

んんん?
どういうこと?

実はですね、私たちは金属を、体の中に持ってるんです。
<体内に存在する金属>
ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、
鉄、亜鉛、銅、
ニッケル、クロム、コバルト、
アルミニウム、マンガンなど。
ミネラルと呼ばれるものの ほとんどは、金属。
そしてそれらは、体の中にも存在している。

ああ、鉄分の摂取とか、亜鉛不足とか、言いますもんね。
それが汗に含まれて、出るのか。
って、ん?
むむむ?
元々あるのに、アレルギーになる?
よく分からなくなってきましたよ。

例の式に戻りますが、金属と汗だけで体質が変わるということは、ありません。
でも、ある条件が加わることで、100%に近い確率で、アレルギー体質になってしまうそうなのです。
最後の条件は、何なんでしょうか?
□ アレルギーになるメカニズム
なぜ、金属アレルギーになってしまうのか?
その謎を解く重要な手がかりを見つけたのが、東北大学。
研究グループのリーダーである、東北大学 加齢医学研究所の、小笠原康悦 教授に、話を聞きました。
発見までの道のりは、苦難の連続。
なかなか結果が出ませんでした。
初め、金属アレルギーのメカニズムを、マウスで探ろうとした。
液体に金属を溶かし、マウスに塗ってみます。
でも、何度試しても、マウスは金属アレルギーにならない。
そこで今度は、金属をエサに混ぜて、食べさせてみました。
しかし、それでも、マウスには変化なし。
それならと、注射で直接注入しましたが、それでもマウスは金属アレルギーにはならなかったんです。

これはもう、スーパーマウスですね。
マイティマウスも、ビックリだ。

みんなで様々なアイデアを出し合う中、こんな意見が出ました。
東北大学 加齢医学研究所の、佐藤直毅 講師。
佐藤さんは、ある物質に注目した。
これを金属と一緒にマウスに注射すると、なんと、それまで金属アレルギーにならなかったマウスが、ほぼ100%の確率で、発症するようになったんです。
スタジオに、その物質が運ばれました。
試験管に、白い粉が入っています。
小野史惠アナが、教えてくれた特徴は、これ。
・身近にあるもので、
・フタは開けない方がいい。
実はこれ、「菌」。
あの方程式は、こうなります。
「金属+汗+菌」
佐藤先生が注目したのは、細菌の体の一部。
そのメカニズムは、こうでした。
体内に、菌と金属が、一緒に入ってくる。
すると、体の警備係である白血球が、それを発見します。
白血球は増殖して仲間を増やし、菌への攻撃を始める。
この時の白血球は、いわば戦闘モード。
かなり気が立っています。
活性化した白血球たちは、たまたま一緒に入ってきただけの、金属にも反応。
悪者だと認識し、攻撃を加えるんですね。
こうして、金属担当の白血球が増殖。
そう、この瞬間こそが、アレルギー体質に変化した瞬間なんです。
これこそが、スイッチオンの、まさにその時。
一度こうなると、金属担当の白血球は、金属を見つける度に、攻撃を仕掛けるようになる。
こうして、白血球が炎症物質をまき散らして戦うので、湿疹や かゆみが起きてしまう。
これが、金属アレルギーになるメカニズムなんです。
私たちの体には、どんなに清潔にしていても、「皮膚の常在菌」と呼ばれるようなものが、必ずいるんです。

あれ?
でも、ちょっと待ってください。
金属、汗、菌(常在菌)。
これ、3つとも、人間は必ず持っているもんなんでしょ。
じゃあ、なぜ、発症する人としない人が、いるんですか?

みんながみんな金属アレルギーにならないのには、理由があります。
それが、「皮膚バリア」。
私たちの体には、優れた防衛機能が備わっているのです。
なので、菌が常に皮膚にあっても、しみ込まないようになっている。
ということで、あの方程式には、まだ先がありました。
金属をつけて、汗をかいた場所を、ひっかいてしまいがちですよね。
実はその時、バリアが壊れているんです。
汗で蒸れて、ついつい、かいてしまう。
この時、皮膚バリアが壊れて、菌の入り口ができているんですね。
もちろん、かいたからといって、必ず金属アレルギーになるわけじゃありません。
ただ、何度も繰り返すと、体質変化のきっかけになりやすい。
方程式の完成形は、こう。
「金属+汗+菌+傷」
特に気をつけていただきたいケースがあります。
<要注意ポイント>
・ピアスの穴を開けるような時。
消毒がいい加減だと、危ない。
皮膚科や形成外科など、きちんと専門家に頼みましょう。
・合わない入れ歯。
金具の部分が、口の中を傷つけてしまう場合がある。
なので、早めに直してもらった方がいい。
金属アレルギー体質になるきっかけは、金属+汗+菌+傷でした。

ガッテン! ガッテン!
□ 予防と対策
ここで、専門家の先生が登場。
東邦大学医療センター 大森病院の、関東裕美 教授。
金属アレルギーを予防するには、金属、汗、菌、傷、この4つをそろえないことが大事。
スポーツをして汗をかいたような時、あるいは、肌をひっかいてしまったような時、そんな時には、直に金属をつけないようにする。
また、口の中を清潔に保つため、歯磨きをきちんとすること。
では、すでに金属アレルギーになってしまっている人は、どうすればいいのか?
先生がおっしゃるに、金属アレルギーを甘く見ている人は多い。
例えば、ちょっとかゆくても、ピアスなどをつけてしまう。
腫れてもつける人だって、いる。
同じものを、続けて つけてしまいます。
でも、そうすると、かぶれを繰り返すようになり、活性化した血球成分が、どんどん活動してしまうことに。
これで症状が、どんどん悪化することになる。
なので、症状が出る金属はつけないというのが、とても大事になります。
体の中で過剰に戦っている白血球を、うまく鎮めてあげることが大切。
金属を外すこと、つけないことで、戦いが過剰にならないようにすることに、つながるんですね。
また、症状を出さない生活を続けることは、根本的な治療につながる。
何が原因なのかは、金属はたくさんあるので、なかなか特定できない場合も。
なので、可能であれば、病院でパッチテストを受けるとよい。
<早期発見のポイント>
・遅いかぶれに注意。
3~4日たってから症状が悪化するものもある。
・意外な原因
革製品や化粧品が原因となることも。
革は なめしに、クロムが使われるケースがある。
化粧品にも、金属が入っているものがある。
関東先生曰く、皮膚は感覚器で、信号を出している。
なので、「これぐらい、いいや」ではなく、「ヘンならやめる」こと。
皮膚からの信号を、ちゃんと受け止めましょう。
□ 全身型金属アレルギー

ここで、新情報が。
なんと、金属に触れてなくても、金属アレルギーになるというのです。

なんですと!
メガネが、ずり落ちちゃいましたぞ。
東京都にお住いの、75歳の男性。
2年ほど前、突然に、猛烈なかゆみに襲われました。
症状が最初に現れたのは、背中。
もう、かゆくて、かゆくて、どうしようもなかった。
痛みと かゆみで、眠ることも ままなりません。
症状はどんどん ひどくなり、背中からお尻、腕や足にまで広がったのだという。
ほぼ全身に、湿疹ができてしまいました。
1年半後、その原因が判明しました。
3つ目の病院(高野医科クリニック)で、コバルトや水銀などの金属アレルギーが原因だと、診断されたのです。
でも、男性は不思議で仕方ありません。
金属を背中につけることなんて、ないからです。
なのに、どうして、こうなってしまったのか?
男性と同じ症状の人の中には、足の裏に出る人もいるそう。
なので、水虫と間違うこともあるそうなのです。
手の平に症状が出る場合も、あります。
病名は、「全身型金属アレルギー」。
手の平に、水ぶくれや、乾いたカサカサが、できることもある。
足の裏がガサガサになったり、指の付け根に症状が出ることもあります。
男性がこうなった原因は、口の中にありました。
歯から金属が溶け出て、体内に入っていたのです。
なので、差し歯から入れ歯まで、全部取り替えたら、完全に湿疹がなくなりました。
全身型の金属アレルギーという概念がきちんと認められるようになったのは、最近だといいます。
原因は、歯の金属。
歯科金属が腐食し、金属が溶け出すのが、原因となります。
なので、口の中を清潔にすることが大切になる。
ただ、すべての歯の金属が全身型の金属アレルギーを導き出すわけではありません。
歯科金属が原因だとは、限らない。
歯科医の先生によく相談したり、皮膚科を受診することが大事です。
また、アトピー性皮膚炎の方で、金属アレルギーが合併している(隠れている)場合もあるそう。
なので、パッチテストなどを行いそれが判明すると、生活指導がうまくいくのではないかと、関東先生は教えてくれました。

金属に直接触れていない部分にも、症状が出ることがあるようですね。

ガッテン! ガッテン!
![NHK ためしてガッテン 2013年 11月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61LCe2T3dxL._SX200_.jpg)

□

誰もが金属アレルギーになる可能性を持っているとは、意外でした。

汗をかいた時や ひっかいて傷をつけた時など、金属をつけないことで予防できるようですね。

様子がおかしかったら、つけないようにするのも大事。

肌の信号を、ちゃんと受けとりましょう。
[まとめ]
・金属は汗に溶けると、
イオンとなって、
肌にしみ込む。
・その際、菌と一緒だと、
白血球が金属イオンまで
攻撃するようになる。
・これが、
金属アレルギーになる
メカニズム。
・汗をかいた時など、
皮膚をかいて傷をつけると
そこから菌が入り
金属アレルギーになってしまう。
・きっかけは、
「金属+汗+菌+傷」
・汗をかいたり
肌を傷つけた時などは、
金属をつけないこと。
・症状が出たら、
金属はつけないようにする。
・3~4日たって出る
症状が遅いものもあるので
注意が必要。
・原因の特定には、
パッチテストを。
次回は、「ふぁ~極上の熟睡感! グッスリ朝まで眠る術」。
![NHKためしてガッテン増刊 健康プレミアム Vol.05 2013年 09月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51dEXivQPWL._SX200_.jpg)

→ 「ためしてガッテン 2013年のアーカイブ 4月~6月」
そのスイッチは、「金属+汗+菌+傷」だという。
ネックレスだけじゃない、歯のブリッジにも要注意。
東北大学 加齢医学研究所が発見した、メカニズムとは?
関東裕美先生による、予防と対策。
アーマード・バトルまで、出てきちゃったよ。
触れなくてもなる、全身型とは?
2013年9月18日放送の「ためしてガッテン」より、「あぁ突然! 金属アレルギー 体質改善の謎一挙解明」からのメモ書きです。

□ 金属アレルギー

今回のテーマは、金属アレルギー。
まずは、こんな体験談から。
高知県にお住いの、50歳の女性。
あるアレルギーが悪化し、肌に重い症状が出ました。
手首と首回りに、ただれのリングができた。
その原因は、金属アレルギー。
10年以上も使っていた時計とアクセサリーが、今になって突然、牙をむいたのです。
さらに、化粧品までもが、原因となった。
実は、化粧品の中にも、金属のパウダーが混ざっている場合がある。
そして、点滴の針や注射針にも、アレルギーが出てしまった。
皮膚科の専門医は、こうおっしゃいます。
「金属アレルギーは、誰もがある日突然、発症する可能性があります」

誰もが、ですか?

はい。
金属アレルギーは、年齢、性別、関係なし。
誰でも、ある日突然、始まってしまうかもしれないものなんです。
その数は予備軍も含めると、推定1000万人。

我々は、どういう風に、金属アレルギーになっちゃうんでしょう?

そもそも私たちは、体に、金属アレルギー体質になるスイッチを持っているんです。
みんな、ですよ。
金属アレルギーなのかどうかは、単にスイッチがオンになってるかオフになっているかの違いだけ。

ああ…。
□ 突然の発症
<ケース(1)>
大阪府の、27歳の女性。
4年ほど前から、謎の肌荒れに悩んでいました。
場所は、目の周りです。
ただれがひどくって、汁みたいなものが出る。
こうした症状が繰り返し現れ、3年以上も、原因不明の状態でした。
やがて原因が明らかになったのですが、それはビューラーでした。
アイラッシュカーラー。まつ毛を上向きにさせる化粧具ですね。
これを知って、女性は驚きました。
毎日1分も使わない器具で、まさか、こんなことになるとは。
<ケース(2)>
熊本県に住む、73歳の男性。
口の中に、症状が出ました。
両側の頬とか歯ぐきが、白くただれてしまった。
原因は、歯のブリッジや差し歯の根元に使われる、金属。
辛いものを食べた時など、飛び上がるぐらい痛いのだという。
さらには、冷たいものや酸っぱいものまで、しみてしまう。
原因が原因だけに、すべてを取り除くには多額の費用が。
なので、今は、我慢の日々。
<ケース(3)>
山形県の、7歳の男の子。
症状が現れた場所は、手や腕でした。
最初、水いぼのようなものができて、そこから汁が出た。
どうしても寝ている間に かきむしってしまうので、血が出るぐらい ひどい状態になったといいます。
原因の1つとなっていたのは、ミニカー。
今は、直接手に触れないようにと、ラップでカバーして遊んでいる。
この男の子は、5歳の時に、アレルギーが始りました。
もしかして遺伝かと思いましたが、家族で金属アレルギーなのは、この子だけだという。
この3名の方々、原因は、ビューラー、歯のブリッジ、ミニカーと、様々です。
共通しているのは、それまで大丈夫だったのに あの日突然 発症していること。
女性はずっと同じビューラーを使っていたし、男性は前から歯のブリッジを入れていたし、男の子は前からミニカーで遊んでいました。
それがある日突然、金属アレルギーに。
そのきっかけとは、何だったのでしょうか?
□ 汗と金属
詳しく話を聞いていると、もう1つ共通項が出てきました。
それは、「汗」。
汗と金属アレルギーは、関係あるのでしょうか?
ここはもちろん、ためしてガッテン大実験!
協力してくれたのは、汗の研究を続けて15年というこの方。
神戸大学 皮膚科の、尾藤利憲 講師。
3人のスタッフがそれぞれ、100円玉、時計のベルト、ネックレスという金属を手で持ってもらいます。
その状態で手をビニール袋に入れ、走ってもらいました。
気温30℃を超える炎天下の中、水分補給しながら、1時間、ひたすら走る。
BGMは、グレートマジンガーだ。
ダッシュ! ダッシュ! ダンダンダダン!
ダッシュ! ダッシュ! ダンダンダダン!
ダッシュ! ダッシュ! ダンダンダダン!
スクランブル~~~ ダッシュ!
すると、涙は流れませんでしたが、汗が大量に流れた。
この汗を持って、東北大学 薬学部へ。
平澤研究室に協力していただき、特殊な装置で、汗を分析してもらいます。
その結果、ニッケルが出ていることが分かりました。
100円玉、時計の金属ベルト、ネックレス、それらを握った手の汗すべてから、ニッケルが検出されたのです。
ニッケルは、ステンレスやホワイトゴールドなど、合金の原料になる身近な金属。
それが、アレルギーを引き起こす金属、ナンバーワンだといわれてるんです。
<アレルギーを起こす金属>
ニッケル、クロム、コバルト、
鉄、亜鉛、銅、
水銀、スズ、パラジウム、
アルミニウム、マンガンなど。
金属は汗に溶けると、イオンと呼ばれる非常に小さな粒になります。
その大きさは、0.0000001mm。
微小なので、それが肌に、しみ込むようになってしまいます。
金属+汗=肌にしみ込む
ただ、金属アレルギーのスイッチは、それだけじゃない。
それを知るために、ある趣味の方たちに、密着します。
多田敬一さん、52歳。
この方は12年前から、あるスポーツにハマっているのです。
海外では大きな大会があり、おそらく数万人がやっているのではないかという、そのスポーツ。
そうとうハードらしいですよ。
その名は、「アーマード・バトル」。
身につけているステンレス製の鎧は、総重量がなんと、28kg!
専用の刀で、思いっきり打ち合うんだ。
海外では、1000人以上が参加して戦う団体戦なども、あるそう。
人気なんですよ。
かなり激しく打ち合うのですが、鎧のおかげで、ケガは無し。
でも、すごく息が上がっています。
それに、汗だく。
夏場なんて、もう…。
ということは、「金属+汗」。
もしかして、金属アレルギーってことは…。
ないそうです。
みなさん、金属のアレルギーは持ってない。

あれ?
そうすると、「金属+汗」の方程式が成り立たないんでは?

実は、この式には、続きがあります。
「金属+汗+?」
まだ、加わるんですね。
100円玉など金属を握って走った、先ほどの実験。
実は、握ってない方の手も、測定していました。
そして、その持ってない方の手からも、金属がけっこう検出されていたんです。

んんん?
どういうこと?

実はですね、私たちは金属を、体の中に持ってるんです。
<体内に存在する金属>
ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、
鉄、亜鉛、銅、
ニッケル、クロム、コバルト、
アルミニウム、マンガンなど。
ミネラルと呼ばれるものの ほとんどは、金属。
そしてそれらは、体の中にも存在している。

ああ、鉄分の摂取とか、亜鉛不足とか、言いますもんね。
それが汗に含まれて、出るのか。
って、ん?
むむむ?
元々あるのに、アレルギーになる?
よく分からなくなってきましたよ。

例の式に戻りますが、金属と汗だけで体質が変わるということは、ありません。
でも、ある条件が加わることで、100%に近い確率で、アレルギー体質になってしまうそうなのです。
最後の条件は、何なんでしょうか?
□ アレルギーになるメカニズム
なぜ、金属アレルギーになってしまうのか?
その謎を解く重要な手がかりを見つけたのが、東北大学。
研究グループのリーダーである、東北大学 加齢医学研究所の、小笠原康悦 教授に、話を聞きました。
発見までの道のりは、苦難の連続。
なかなか結果が出ませんでした。
初め、金属アレルギーのメカニズムを、マウスで探ろうとした。
液体に金属を溶かし、マウスに塗ってみます。
でも、何度試しても、マウスは金属アレルギーにならない。
そこで今度は、金属をエサに混ぜて、食べさせてみました。
しかし、それでも、マウスには変化なし。
それならと、注射で直接注入しましたが、それでもマウスは金属アレルギーにはならなかったんです。

これはもう、スーパーマウスですね。
マイティマウスも、ビックリだ。

みんなで様々なアイデアを出し合う中、こんな意見が出ました。
東北大学 加齢医学研究所の、佐藤直毅 講師。
佐藤さんは、ある物質に注目した。
これを金属と一緒にマウスに注射すると、なんと、それまで金属アレルギーにならなかったマウスが、ほぼ100%の確率で、発症するようになったんです。
スタジオに、その物質が運ばれました。
試験管に、白い粉が入っています。
小野史惠アナが、教えてくれた特徴は、これ。
・身近にあるもので、
・フタは開けない方がいい。
実はこれ、「菌」。
あの方程式は、こうなります。
「金属+汗+菌」
佐藤先生が注目したのは、細菌の体の一部。
そのメカニズムは、こうでした。
体内に、菌と金属が、一緒に入ってくる。
すると、体の警備係である白血球が、それを発見します。
白血球は増殖して仲間を増やし、菌への攻撃を始める。
この時の白血球は、いわば戦闘モード。
かなり気が立っています。
活性化した白血球たちは、たまたま一緒に入ってきただけの、金属にも反応。
悪者だと認識し、攻撃を加えるんですね。
こうして、金属担当の白血球が増殖。
そう、この瞬間こそが、アレルギー体質に変化した瞬間なんです。
これこそが、スイッチオンの、まさにその時。
一度こうなると、金属担当の白血球は、金属を見つける度に、攻撃を仕掛けるようになる。
こうして、白血球が炎症物質をまき散らして戦うので、湿疹や かゆみが起きてしまう。
これが、金属アレルギーになるメカニズムなんです。
私たちの体には、どんなに清潔にしていても、「皮膚の常在菌」と呼ばれるようなものが、必ずいるんです。

あれ?
でも、ちょっと待ってください。
金属、汗、菌(常在菌)。
これ、3つとも、人間は必ず持っているもんなんでしょ。
じゃあ、なぜ、発症する人としない人が、いるんですか?

みんながみんな金属アレルギーにならないのには、理由があります。
それが、「皮膚バリア」。
私たちの体には、優れた防衛機能が備わっているのです。
なので、菌が常に皮膚にあっても、しみ込まないようになっている。
ということで、あの方程式には、まだ先がありました。
金属をつけて、汗をかいた場所を、ひっかいてしまいがちですよね。
実はその時、バリアが壊れているんです。
汗で蒸れて、ついつい、かいてしまう。
この時、皮膚バリアが壊れて、菌の入り口ができているんですね。
もちろん、かいたからといって、必ず金属アレルギーになるわけじゃありません。
ただ、何度も繰り返すと、体質変化のきっかけになりやすい。
方程式の完成形は、こう。
「金属+汗+菌+傷」
特に気をつけていただきたいケースがあります。
<要注意ポイント>
・ピアスの穴を開けるような時。
消毒がいい加減だと、危ない。
皮膚科や形成外科など、きちんと専門家に頼みましょう。
・合わない入れ歯。
金具の部分が、口の中を傷つけてしまう場合がある。
なので、早めに直してもらった方がいい。
金属アレルギー体質になるきっかけは、金属+汗+菌+傷でした。

ガッテン! ガッテン!
□ 予防と対策
ここで、専門家の先生が登場。
東邦大学医療センター 大森病院の、関東裕美 教授。
金属アレルギーを予防するには、金属、汗、菌、傷、この4つをそろえないことが大事。
スポーツをして汗をかいたような時、あるいは、肌をひっかいてしまったような時、そんな時には、直に金属をつけないようにする。
また、口の中を清潔に保つため、歯磨きをきちんとすること。
では、すでに金属アレルギーになってしまっている人は、どうすればいいのか?
先生がおっしゃるに、金属アレルギーを甘く見ている人は多い。
例えば、ちょっとかゆくても、ピアスなどをつけてしまう。
腫れてもつける人だって、いる。
同じものを、続けて つけてしまいます。
でも、そうすると、かぶれを繰り返すようになり、活性化した血球成分が、どんどん活動してしまうことに。
これで症状が、どんどん悪化することになる。
なので、症状が出る金属はつけないというのが、とても大事になります。
体の中で過剰に戦っている白血球を、うまく鎮めてあげることが大切。
金属を外すこと、つけないことで、戦いが過剰にならないようにすることに、つながるんですね。
また、症状を出さない生活を続けることは、根本的な治療につながる。
何が原因なのかは、金属はたくさんあるので、なかなか特定できない場合も。
なので、可能であれば、病院でパッチテストを受けるとよい。
<早期発見のポイント>
・遅いかぶれに注意。
3~4日たってから症状が悪化するものもある。
・意外な原因
革製品や化粧品が原因となることも。
革は なめしに、クロムが使われるケースがある。
化粧品にも、金属が入っているものがある。
関東先生曰く、皮膚は感覚器で、信号を出している。
なので、「これぐらい、いいや」ではなく、「ヘンならやめる」こと。
皮膚からの信号を、ちゃんと受け止めましょう。
□ 全身型金属アレルギー

ここで、新情報が。
なんと、金属に触れてなくても、金属アレルギーになるというのです。

なんですと!
メガネが、ずり落ちちゃいましたぞ。
東京都にお住いの、75歳の男性。
2年ほど前、突然に、猛烈なかゆみに襲われました。
症状が最初に現れたのは、背中。
もう、かゆくて、かゆくて、どうしようもなかった。
痛みと かゆみで、眠ることも ままなりません。
症状はどんどん ひどくなり、背中からお尻、腕や足にまで広がったのだという。
ほぼ全身に、湿疹ができてしまいました。
1年半後、その原因が判明しました。
3つ目の病院(高野医科クリニック)で、コバルトや水銀などの金属アレルギーが原因だと、診断されたのです。
でも、男性は不思議で仕方ありません。
金属を背中につけることなんて、ないからです。
なのに、どうして、こうなってしまったのか?
男性と同じ症状の人の中には、足の裏に出る人もいるそう。
なので、水虫と間違うこともあるそうなのです。
手の平に症状が出る場合も、あります。
病名は、「全身型金属アレルギー」。
手の平に、水ぶくれや、乾いたカサカサが、できることもある。
足の裏がガサガサになったり、指の付け根に症状が出ることもあります。
男性がこうなった原因は、口の中にありました。
歯から金属が溶け出て、体内に入っていたのです。
なので、差し歯から入れ歯まで、全部取り替えたら、完全に湿疹がなくなりました。
全身型の金属アレルギーという概念がきちんと認められるようになったのは、最近だといいます。
原因は、歯の金属。
歯科金属が腐食し、金属が溶け出すのが、原因となります。
なので、口の中を清潔にすることが大切になる。
ただ、すべての歯の金属が全身型の金属アレルギーを導き出すわけではありません。
歯科金属が原因だとは、限らない。
歯科医の先生によく相談したり、皮膚科を受診することが大事です。
また、アトピー性皮膚炎の方で、金属アレルギーが合併している(隠れている)場合もあるそう。
なので、パッチテストなどを行いそれが判明すると、生活指導がうまくいくのではないかと、関東先生は教えてくれました。

金属に直接触れていない部分にも、症状が出ることがあるようですね。

ガッテン! ガッテン!
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□

誰もが金属アレルギーになる可能性を持っているとは、意外でした。

汗をかいた時や ひっかいて傷をつけた時など、金属をつけないことで予防できるようですね。

様子がおかしかったら、つけないようにするのも大事。

肌の信号を、ちゃんと受けとりましょう。
[まとめ]
・金属は汗に溶けると、
イオンとなって、
肌にしみ込む。
・その際、菌と一緒だと、
白血球が金属イオンまで
攻撃するようになる。
・これが、
金属アレルギーになる
メカニズム。
・汗をかいた時など、
皮膚をかいて傷をつけると
そこから菌が入り
金属アレルギーになってしまう。
・きっかけは、
「金属+汗+菌+傷」
・汗をかいたり
肌を傷つけた時などは、
金属をつけないこと。
・症状が出たら、
金属はつけないようにする。
・3~4日たって出る
症状が遅いものもあるので
注意が必要。
・原因の特定には、
パッチテストを。
次回は、「ふぁ~極上の熟睡感! グッスリ朝まで眠る術」。
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→ 「ためしてガッテン 2013年のアーカイブ 4月~6月」
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