危ないのは見えない血尿? 膀胱がんと腎臓病/ためしてガッテン
今週のテーマは、「オシッコの色」。
尿の色で、病気が分かるんだろうか。
本当に危険なのは、どんな色?
「見える血尿」と「見えない血尿(顕微鏡的血尿)」。
こんなにすごい、尿試験紙の精度。
意外な、再検査の方法。
検尿大国って、どこ?
尿検査の作法クイズ。
2013年9月11日放送の「ためしてガッテン」より、「がん腎臓病を見逃すな 危ないおしっこの真実」からのメモ書きです。

□ 本当に危険なオシッコの色

今日のテーマは、「オシッコ」。
エノキさんは、オシッコの色が気になること、ありませんか?

体調が悪い時とか、色が変わることがあります。
あと、栄養ドリンクを飲んだ後とかも。
逆に、お茶とか、利尿作用があるものをたくさん飲むと、透明な、いかにも健康そうなオシッコが出たりとか。

専門家の先生は、こんなことを おっしゃいました。
帝京大学医学部附属病院、泌尿器科の、武藤智 准教授。
「オシッコの色は、単なる健康のバロメーターではございません」
「潜んでいる病気の発見にも、つながります」

ほう、色で病気が分かるってことですか。

ある男性は、オシッコで、命が救われた。
何と、尿検査で、ガンが発見されたんです。

おお、そうですか。

スタジオに登場したのは、「おしっこの色 マル秘 ファイル」。
これを見た志の輔さんや小野文惠アナは、ビックリしてますよ。

とんでもない色が、あったんですか?

その色を見た街の人が言ったのは、こんな感じ。
・メロンソーダ尿。
・宇宙人のオシッコ。
・コーヒーみたい。
・イカスミおしっこ。

バラエティーに富んでますね。
黄色以外に、こんなにあるの?

ここで大事なのは、「本当に危険なオシッコの色」があるということ。
危険性のある人は、推定500万人もいるそうです。
□ 危険な尿ファイル
<ファイル(1)>
京都府に住む、62歳の男性。
16年前、職場の健康診断で、血尿が出ていると言われました。
病院を受診したところ、様子を見ましょうとのこと。
ところが、1年後に、再び血尿が。
体調からだと考えた男性は、病院には行きませんでした。
しかし、その2年後、ガンであることが分かりました。
診断結果は、膀胱がん。
緊急手術を受けることになります。
<ファイル(2)>
74歳の男性。
5年前、はじめて、血尿が出ました。
でも、あまり深刻には考えず、病院には行かなかった。
そして1ヵ月後、救急車で病院に運ばれることとなったのです。
精密検査の結果は、急性腎炎。
腎機能が大幅に低下した男性は、人工透析を受けることになりました。
週3日 病院に通い、血液のろ過を行わねばなりません。
1日に4時間、それが週3回の生活。

ふたりとも、前触れは、血尿でした。
その血尿の色とは、どんなものだったのでしょうか?

血だから、赤っぽいのを想像しますが、どうなんでしょうね。
前に言ってた、メロンソーダとか、イカスミ?
う~ん、分かんないな~。

おふたりに うかがうと、見た目は普通だったそう。
ふだんの黄色いオシッコだったんです。

あっ! それで病院に行かなかったのか!
確かに、明らかに異常なら、病院に行きますもんね。

実は、血尿にも、いろいろあるようなのです。
ためしてガッテンの、ある女性スタッフ。
18歳なのですが、3ヵ月前のある日、真っ赤な血尿が出たといいます。
オシッコがまるでトマトジュースみたいだったそう。
あまりのことに驚いたのですが、病院で治療を受け、抗生物質をもらうと、3日ぐらいで治りました。
この女性がなたのは、膀胱炎(ぼうこうえん)。
膀胱炎の場合、炎症が膀胱全体に広がることがあって、そういうケースでは、大量に出血することもある。
膀胱炎は慢性的になると怖い病気ですが、基本的には、短期間の治療でよくなるとのこと。
では、いつもと同じ色だったと話してくれた、ふたりの男性。
こちらの場合は、どうだったのでしょうか。
□ 血尿診断ガイドライン
今年の5月に出たばかりの、「血尿診断ガイドライン2013」。
そこには、こう書かれています。
「○○○○血尿は、末期腎不全の高リスク群」。
これは、人工透析が必要な状態。
自分の腎臓だけでは、生命を維持できません。
また、このような記述も。
「○○○○血尿が確認された症例には、尿路上皮癌(にょうろじょうひがん)のスクリーニング(識別検査)を推奨」。
この○○○○血尿は、「見えない血尿」。
血尿には、「見える血尿」と「見えない血尿」があるのです。

見えない血尿の方が、怖いんですか!

見えない血尿がなぜ怖いのかといえば、危機感をあまり感じず、病院を受診しようとも思わないから。
でも、検査では、見えない血尿でも、ちゃんと検出するんですよ。
□ 尿検査
ここで、実験。
筑波大学付属病院のみなさんに協力してもらって、ちょっと失礼な実験をさせてもらいました。
まずは検査技師のおふたりに、様子を見学させてもらいます。
小さな試験紙を、検尿カップのオシッコに浸してますねえ。
結果は陰性。血液反応はありませんでした。
この試験紙には試薬が含まれており、尿に何かトラブルがあった時には、色が変わるのです。
それで、陰性か陽性か、判定できる。
もし尿に血が混じっていれば、先端の色が青に変わる。
ここからが実験です。
あるもので、同じように検査してもらった。
(a) → 陽性。
(b) → 陽性。
で、その正体は、こうでした。
(a) → 切り干し大根の戻し汁。
(b) → 水の中に、血液成分である「ヘモグロビン」を わずかだけ混ぜたもの。
ちなみに、切り干し大根の戻し汁は、糖に反応したそう。
ただし、切り干し大根を食べたら尿に糖が出るわけではありません。
そして、(b)ですが、「尿100ミリリットルに対して 血液0.0004ミリリットル」に相当します。
こんなわずかでも、ちゃんと、反応したんですね。
ちなみのこの尿試験紙は、調剤薬局で売ってます。
□ 血尿の再検査
2010年に、1500人以上を対象に行われた、海外の調査報告。
血尿の再検査で医師に言われた原因は、以下のようだったそうです。
・65% たまたま
(血尿は、一過性のものが多いため)
(女性の場合は、月経血が混じることがある)
・22% 膀胱炎
・10% 前立腺肥大

でも、本当に怖いのは、その他。
この中に、腎炎などの腎疾患が3%含まれます。
また、膀胱がんは 2%。

さて、健康診断などで血尿が判明したとして、再検査では、どんなことをするのでしょうか?

再びの検査だから、同じことをするんじゃないんですか?

では、オシッコの専門家、武藤智 先生に、聞いてみましょう。
先生が差し出したのは、検尿カップ。
尿をとってもらって、再検査です。
どんな検査をするのかと思ったら、顕微鏡をのぞいてますよ。
何を見ているのかと思ったら、「血のカタチ」を見ているそう。
先生が見ているのは、「オシッコの中の赤血球」。
血尿の中には、必ず、赤血球が含まれる。
この赤血球は通常 丸いのですが、カタチが崩れたものが見つかることがあるのです。
人間の腎臓は、「糸球体(しきゅうたい)」という毛細血管の集まり。
この中を通っている血液から尿が作られます。
その中を拡大して見てみると、血管の壁に小さな穴が開いている。
血液中の老廃物や余分な水分を ここでこしとって、尿として、体の外に排出してるんですね。
いわば、フィルターの働き。
この血管の穴は、健康な状態であれば、赤血球をせき止めるので、外に出ることはありません。
でも、何らかのトラブルで、フィルターが壊れる場合がある。
こうなると、赤血球が外に出ちゃう。
そして、尿に血液が混じってしまうと。
変形した赤血球は、血管の壁を通り抜ける際、カタチが変わってしまったものなんです。
それを顕微鏡で見つけることで、腎臓が傷んでいることが分かるというわけ。
赤血球が変形している
↓
腎臓病の疑い
赤血球が変形してない
↓
腎臓以外の病気の疑い
顕微鏡による検査では、こんなものも見つけることができます。
赤血球の他に、黒いものが混じってますよ。
実はこれ、ガン細胞。
ガンの組織から出血することがあるんですが、その際、ガン細胞も一緒に出てくることがある。

血尿の再検査って、こんなことをしてるんですか。
□ 検尿大国、日本
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
順天堂大学 大学院 泌尿器外科の、堀江重郎 教授。
「見えない血尿」は「顕微鏡的血尿」という。
顕微鏡で見て初めて分かるぐらい 非常にわずかな量の血液が入っている、という意味。
わずかな異常が重大な疾患のきっかけかもしれないことが分かってきたため、それを普及するために、ガイドラインが作成されました。
特に、膀胱がんの発見には非常に重要だといいます。
40歳以上の男性で喫煙している人だと、顕微鏡的血尿がある人は、5人に1人が膀胱がんだといわれている。
また、腎疾患も問題になっています。
日本では、推定で10万人が腎炎になって、最終的に人工透析が必要になるケースも。
最近の研究では、「最初に血尿が出る」→「たんぱく尿が出る」→「腎炎になる」、そういう方もいることが分かってきた。
血尿も、たんぱくも、尿試験紙による検査で分かります。
なので、自宅で月に1回検査すれば、それで十分だそう。
陽性ならば、病院(腎臓内科や泌尿器科)を受診しましょう。
血尿の再検査は、いわば精密検査。
より詳しい検査なのです。
最近では、「尿自動分析装置」で自動的に赤血球のカタチを判別できます。
これだと、ひとり分のオシッコの判別にかかる時間が、わずか1分。
堀江先生によれば、日本は検尿大国。
赤ちゃんの頃から、高齢者まで、すべての段階で尿検査が、安い値段で簡単にできる。
実は、こういう国は、日本以外にないのです。

オシッコの再検査は、いわば精密検査でした。

ガッテン! ガッテン!
□ 尿検査の作法
さて、ここでクイズです。
Q1~Q3は、○か×かで答えてください。
Q4は、どちらかを選んで。
Q1)尿検査の前日は、アルコールを控え、野菜や果物をたっぷりとる。
Q2)当日の朝、日課のジョギングはふだん通り行った方がよい。
Q3)検査前にオシッコを出したら、しっかり水分を補給する。
Q4)正しいオシッコのとり方は? 「じゃじょじょじょじょ…」か「じょぼじょぼじょぼじょぼ…(そのあと)じゃじょじょじょじょ…」か?
答えは、こうです。
Q1)尿検査の前日は、アルコールを控え、野菜や果物をたっぷりとる?
→ ×
アルコールを控えるのはいい。でも、野菜や果物にはビタミンCが入っているため、大量にとり過ぎると、潜血反応をブロックしてしまうことがある。
特に、ビタミン剤には、注意を。
Q2)当日の朝、日課のジョギングはふだん通り行った方がよい?
→ ×
激しいジョギングをすると、足の血管を通る赤血球の一部が壊れる。それが尿に出ることがあるので、できれば朝一番の安静な状態で、尿をとるのがいい。
Q3)検査前にオシッコを出したら、しっかり水分を補給する?
→ ×
直前に水分をとり過ぎると、薄い尿になってしまって、情報が得られないことがある。
また、ビタミンC入りの飲料にも、注意。
飲むのであれば、お水少々を。
必要な尿は、10ミリリットルほど。
Q4)正しいオシッコのとり方は? 「じゃじょじょじょじょ…」か「じょぼじょぼじょぼじょぼ…(そのあと)じゃじょじょじょじょ…」か?
→ 2番目の「じょぼじょぼじょぼじょぼ…(そのあと)じゃじょじょじょじょ…」
出始めは、血液や細菌が混入しやすくなります。
この音は、最初はカップにとらず、途中から検尿カップにとってる音。
とるのは、「中間尿」にするのがいい。
<こんな色のオシッコに注意!>
基本的には、尿の色だけで大きな異常が隠されていることを心配しなくてもいい。
また、一時的に濃い尿や薄い尿が出ることは、問題ない。
それを前提に、以下のことがいえるそう。
いつも濃い黄色 → 肝臓病など
肝臓病の方は、「ビリルビン」という物質が尿に出て、黄色から茶褐色のような非常に濃い尿が出る。そんな尿が続いている時には、要注意。
いつも薄い色 → 糖尿病など
糖尿病の場合、血液中の糖分が高いので、たくさん水を飲む。それでかなり尿が薄まっている場合も。
また、腎臓病の場合、尿を濃くすることができなくなって、いつも薄い尿が出てしまうことが。
冒頭紹介された、メロンソーダ尿。
濃い緑のオシッコは、緑膿菌などの細菌に感染している可能性が。
これは、抗生物質で治療できる。
黒い尿ですが、薬によっては、尿に色がつくものがある。
それで、黒くなったり、茶色くなったりする。
また、ビタミン剤だと、黄色くなる。
薬剤師さんから事前に説明があるので、心配しすぎる必要はないとのこと。
![NHKためしてガッテン増刊 健康プレミアム Vol.05 2013年 09月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51dEXivQPWL._SX200_.jpg)

□

身近な尿検査ですが、実は重要だったんですね。
色が普通でも、血尿の反応があったら要注意。

基本は定期的な健康診断。
そして、再検査もちゃんと受けること。
体質だからだと、甘く見ない。

判断は、お医者さんに任せた方がよさそうです。

尿検査って簡単だけど、実は重要な検査だったんですね。
[まとめ]
・血尿には、
見える血尿と
見えない血尿がある。
・後者は、
顕微鏡的血尿と呼ばれる。
・見えない血尿の中には、
腎疾患や膀胱がんである
場合が。
・再検査で、
詳しく調べてもらうのが
すごく大事。
次回は、「あぁ突然! 金属アレルギー 体質変化の謎 一挙解明」。


→ 「ためしてガッテン 2013年のアーカイブ 4月~6月」
尿の色で、病気が分かるんだろうか。
本当に危険なのは、どんな色?
「見える血尿」と「見えない血尿(顕微鏡的血尿)」。
こんなにすごい、尿試験紙の精度。
意外な、再検査の方法。
検尿大国って、どこ?
尿検査の作法クイズ。
2013年9月11日放送の「ためしてガッテン」より、「がん腎臓病を見逃すな 危ないおしっこの真実」からのメモ書きです。

□ 本当に危険なオシッコの色

今日のテーマは、「オシッコ」。
エノキさんは、オシッコの色が気になること、ありませんか?

体調が悪い時とか、色が変わることがあります。
あと、栄養ドリンクを飲んだ後とかも。
逆に、お茶とか、利尿作用があるものをたくさん飲むと、透明な、いかにも健康そうなオシッコが出たりとか。

専門家の先生は、こんなことを おっしゃいました。
帝京大学医学部附属病院、泌尿器科の、武藤智 准教授。
「オシッコの色は、単なる健康のバロメーターではございません」
「潜んでいる病気の発見にも、つながります」

ほう、色で病気が分かるってことですか。

ある男性は、オシッコで、命が救われた。
何と、尿検査で、ガンが発見されたんです。

おお、そうですか。

スタジオに登場したのは、「おしっこの色 マル秘 ファイル」。
これを見た志の輔さんや小野文惠アナは、ビックリしてますよ。

とんでもない色が、あったんですか?

その色を見た街の人が言ったのは、こんな感じ。
・メロンソーダ尿。
・宇宙人のオシッコ。
・コーヒーみたい。
・イカスミおしっこ。

バラエティーに富んでますね。
黄色以外に、こんなにあるの?

ここで大事なのは、「本当に危険なオシッコの色」があるということ。
危険性のある人は、推定500万人もいるそうです。
□ 危険な尿ファイル
<ファイル(1)>
京都府に住む、62歳の男性。
16年前、職場の健康診断で、血尿が出ていると言われました。
病院を受診したところ、様子を見ましょうとのこと。
ところが、1年後に、再び血尿が。
体調からだと考えた男性は、病院には行きませんでした。
しかし、その2年後、ガンであることが分かりました。
診断結果は、膀胱がん。
緊急手術を受けることになります。
<ファイル(2)>
74歳の男性。
5年前、はじめて、血尿が出ました。
でも、あまり深刻には考えず、病院には行かなかった。
そして1ヵ月後、救急車で病院に運ばれることとなったのです。
精密検査の結果は、急性腎炎。
腎機能が大幅に低下した男性は、人工透析を受けることになりました。
週3日 病院に通い、血液のろ過を行わねばなりません。
1日に4時間、それが週3回の生活。

ふたりとも、前触れは、血尿でした。
その血尿の色とは、どんなものだったのでしょうか?

血だから、赤っぽいのを想像しますが、どうなんでしょうね。
前に言ってた、メロンソーダとか、イカスミ?
う~ん、分かんないな~。

おふたりに うかがうと、見た目は普通だったそう。
ふだんの黄色いオシッコだったんです。

あっ! それで病院に行かなかったのか!
確かに、明らかに異常なら、病院に行きますもんね。

実は、血尿にも、いろいろあるようなのです。
ためしてガッテンの、ある女性スタッフ。
18歳なのですが、3ヵ月前のある日、真っ赤な血尿が出たといいます。
オシッコがまるでトマトジュースみたいだったそう。
あまりのことに驚いたのですが、病院で治療を受け、抗生物質をもらうと、3日ぐらいで治りました。
この女性がなたのは、膀胱炎(ぼうこうえん)。
膀胱炎の場合、炎症が膀胱全体に広がることがあって、そういうケースでは、大量に出血することもある。
膀胱炎は慢性的になると怖い病気ですが、基本的には、短期間の治療でよくなるとのこと。
では、いつもと同じ色だったと話してくれた、ふたりの男性。
こちらの場合は、どうだったのでしょうか。
□ 血尿診断ガイドライン
今年の5月に出たばかりの、「血尿診断ガイドライン2013」。
そこには、こう書かれています。
「○○○○血尿は、末期腎不全の高リスク群」。
これは、人工透析が必要な状態。
自分の腎臓だけでは、生命を維持できません。
また、このような記述も。
「○○○○血尿が確認された症例には、尿路上皮癌(にょうろじょうひがん)のスクリーニング(識別検査)を推奨」。
この○○○○血尿は、「見えない血尿」。
血尿には、「見える血尿」と「見えない血尿」があるのです。

見えない血尿の方が、怖いんですか!

見えない血尿がなぜ怖いのかといえば、危機感をあまり感じず、病院を受診しようとも思わないから。
でも、検査では、見えない血尿でも、ちゃんと検出するんですよ。
□ 尿検査
ここで、実験。
筑波大学付属病院のみなさんに協力してもらって、ちょっと失礼な実験をさせてもらいました。
まずは検査技師のおふたりに、様子を見学させてもらいます。
小さな試験紙を、検尿カップのオシッコに浸してますねえ。
結果は陰性。血液反応はありませんでした。
この試験紙には試薬が含まれており、尿に何かトラブルがあった時には、色が変わるのです。
それで、陰性か陽性か、判定できる。
もし尿に血が混じっていれば、先端の色が青に変わる。
ここからが実験です。
あるもので、同じように検査してもらった。
(a) → 陽性。
(b) → 陽性。
で、その正体は、こうでした。
(a) → 切り干し大根の戻し汁。
(b) → 水の中に、血液成分である「ヘモグロビン」を わずかだけ混ぜたもの。
ちなみに、切り干し大根の戻し汁は、糖に反応したそう。
ただし、切り干し大根を食べたら尿に糖が出るわけではありません。
そして、(b)ですが、「尿100ミリリットルに対して 血液0.0004ミリリットル」に相当します。
こんなわずかでも、ちゃんと、反応したんですね。
ちなみのこの尿試験紙は、調剤薬局で売ってます。
□ 血尿の再検査
2010年に、1500人以上を対象に行われた、海外の調査報告。
血尿の再検査で医師に言われた原因は、以下のようだったそうです。
・65% たまたま
(血尿は、一過性のものが多いため)
(女性の場合は、月経血が混じることがある)
・22% 膀胱炎
・10% 前立腺肥大

でも、本当に怖いのは、その他。
この中に、腎炎などの腎疾患が3%含まれます。
また、膀胱がんは 2%。

さて、健康診断などで血尿が判明したとして、再検査では、どんなことをするのでしょうか?

再びの検査だから、同じことをするんじゃないんですか?

では、オシッコの専門家、武藤智 先生に、聞いてみましょう。
先生が差し出したのは、検尿カップ。
尿をとってもらって、再検査です。
どんな検査をするのかと思ったら、顕微鏡をのぞいてますよ。
何を見ているのかと思ったら、「血のカタチ」を見ているそう。
先生が見ているのは、「オシッコの中の赤血球」。
血尿の中には、必ず、赤血球が含まれる。
この赤血球は通常 丸いのですが、カタチが崩れたものが見つかることがあるのです。
人間の腎臓は、「糸球体(しきゅうたい)」という毛細血管の集まり。
この中を通っている血液から尿が作られます。
その中を拡大して見てみると、血管の壁に小さな穴が開いている。
血液中の老廃物や余分な水分を ここでこしとって、尿として、体の外に排出してるんですね。
いわば、フィルターの働き。
この血管の穴は、健康な状態であれば、赤血球をせき止めるので、外に出ることはありません。
でも、何らかのトラブルで、フィルターが壊れる場合がある。
こうなると、赤血球が外に出ちゃう。
そして、尿に血液が混じってしまうと。
変形した赤血球は、血管の壁を通り抜ける際、カタチが変わってしまったものなんです。
それを顕微鏡で見つけることで、腎臓が傷んでいることが分かるというわけ。
赤血球が変形している
↓
腎臓病の疑い
赤血球が変形してない
↓
腎臓以外の病気の疑い
顕微鏡による検査では、こんなものも見つけることができます。
赤血球の他に、黒いものが混じってますよ。
実はこれ、ガン細胞。
ガンの組織から出血することがあるんですが、その際、ガン細胞も一緒に出てくることがある。

血尿の再検査って、こんなことをしてるんですか。
□ 検尿大国、日本
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
順天堂大学 大学院 泌尿器外科の、堀江重郎 教授。
「見えない血尿」は「顕微鏡的血尿」という。
顕微鏡で見て初めて分かるぐらい 非常にわずかな量の血液が入っている、という意味。
わずかな異常が重大な疾患のきっかけかもしれないことが分かってきたため、それを普及するために、ガイドラインが作成されました。
特に、膀胱がんの発見には非常に重要だといいます。
40歳以上の男性で喫煙している人だと、顕微鏡的血尿がある人は、5人に1人が膀胱がんだといわれている。
また、腎疾患も問題になっています。
日本では、推定で10万人が腎炎になって、最終的に人工透析が必要になるケースも。
最近の研究では、「最初に血尿が出る」→「たんぱく尿が出る」→「腎炎になる」、そういう方もいることが分かってきた。
血尿も、たんぱくも、尿試験紙による検査で分かります。
なので、自宅で月に1回検査すれば、それで十分だそう。
陽性ならば、病院(腎臓内科や泌尿器科)を受診しましょう。
血尿の再検査は、いわば精密検査。
より詳しい検査なのです。
最近では、「尿自動分析装置」で自動的に赤血球のカタチを判別できます。
これだと、ひとり分のオシッコの判別にかかる時間が、わずか1分。
堀江先生によれば、日本は検尿大国。
赤ちゃんの頃から、高齢者まで、すべての段階で尿検査が、安い値段で簡単にできる。
実は、こういう国は、日本以外にないのです。

オシッコの再検査は、いわば精密検査でした。

ガッテン! ガッテン!
□ 尿検査の作法
さて、ここでクイズです。
Q1~Q3は、○か×かで答えてください。
Q4は、どちらかを選んで。
Q1)尿検査の前日は、アルコールを控え、野菜や果物をたっぷりとる。
Q2)当日の朝、日課のジョギングはふだん通り行った方がよい。
Q3)検査前にオシッコを出したら、しっかり水分を補給する。
Q4)正しいオシッコのとり方は? 「じゃじょじょじょじょ…」か「じょぼじょぼじょぼじょぼ…(そのあと)じゃじょじょじょじょ…」か?
答えは、こうです。
Q1)尿検査の前日は、アルコールを控え、野菜や果物をたっぷりとる?
→ ×
アルコールを控えるのはいい。でも、野菜や果物にはビタミンCが入っているため、大量にとり過ぎると、潜血反応をブロックしてしまうことがある。
特に、ビタミン剤には、注意を。
Q2)当日の朝、日課のジョギングはふだん通り行った方がよい?
→ ×
激しいジョギングをすると、足の血管を通る赤血球の一部が壊れる。それが尿に出ることがあるので、できれば朝一番の安静な状態で、尿をとるのがいい。
Q3)検査前にオシッコを出したら、しっかり水分を補給する?
→ ×
直前に水分をとり過ぎると、薄い尿になってしまって、情報が得られないことがある。
また、ビタミンC入りの飲料にも、注意。
飲むのであれば、お水少々を。
必要な尿は、10ミリリットルほど。
Q4)正しいオシッコのとり方は? 「じゃじょじょじょじょ…」か「じょぼじょぼじょぼじょぼ…(そのあと)じゃじょじょじょじょ…」か?
→ 2番目の「じょぼじょぼじょぼじょぼ…(そのあと)じゃじょじょじょじょ…」
出始めは、血液や細菌が混入しやすくなります。
この音は、最初はカップにとらず、途中から検尿カップにとってる音。
とるのは、「中間尿」にするのがいい。
<こんな色のオシッコに注意!>
基本的には、尿の色だけで大きな異常が隠されていることを心配しなくてもいい。
また、一時的に濃い尿や薄い尿が出ることは、問題ない。
それを前提に、以下のことがいえるそう。
いつも濃い黄色 → 肝臓病など
肝臓病の方は、「ビリルビン」という物質が尿に出て、黄色から茶褐色のような非常に濃い尿が出る。そんな尿が続いている時には、要注意。
いつも薄い色 → 糖尿病など
糖尿病の場合、血液中の糖分が高いので、たくさん水を飲む。それでかなり尿が薄まっている場合も。
また、腎臓病の場合、尿を濃くすることができなくなって、いつも薄い尿が出てしまうことが。
冒頭紹介された、メロンソーダ尿。
濃い緑のオシッコは、緑膿菌などの細菌に感染している可能性が。
これは、抗生物質で治療できる。
黒い尿ですが、薬によっては、尿に色がつくものがある。
それで、黒くなったり、茶色くなったりする。
また、ビタミン剤だと、黄色くなる。
薬剤師さんから事前に説明があるので、心配しすぎる必要はないとのこと。
![NHKためしてガッテン増刊 健康プレミアム Vol.05 2013年 09月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51dEXivQPWL._SX200_.jpg)

□

身近な尿検査ですが、実は重要だったんですね。
色が普通でも、血尿の反応があったら要注意。

基本は定期的な健康診断。
そして、再検査もちゃんと受けること。
体質だからだと、甘く見ない。

判断は、お医者さんに任せた方がよさそうです。

尿検査って簡単だけど、実は重要な検査だったんですね。
[まとめ]
・血尿には、
見える血尿と
見えない血尿がある。
・後者は、
顕微鏡的血尿と呼ばれる。
・見えない血尿の中には、
腎疾患や膀胱がんである
場合が。
・再検査で、
詳しく調べてもらうのが
すごく大事。
次回は、「あぁ突然! 金属アレルギー 体質変化の謎 一挙解明」。


→ 「ためしてガッテン 2013年のアーカイブ 4月~6月」
- 関連記事
-
-
熟睡感を得る方法 睡眠日誌&筋弛緩法/ためしてガッテン 2013/09/26
-
金属アレルギーは、汗と菌と傷が原因/ためしてガッテン 2013/09/20
-
危ないのは見えない血尿? 膀胱がんと腎臓病/ためしてガッテン 2013/09/12
-
めまいを家で治す! 寝返り運動と枕で 耳石を砕け/ためしてガッテン 2013/09/05
-
冷凍肉の解凍しない調理、冷凍卵&もやし酢/ためしてガッテン 2013/08/29
-
<スポンサードリンク>


