【水の力】 ストレス → 水 → めまい 【どうして?】
耳石とは別の、治りにくいタイプの めまい。
それが水と関係する?
ぐるぐるバットで 目が回る理由とは?

□ 水とめまいの関係

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

トリセツショーの「めまい」の続きです。
う~、寒いですね。
土曜日はちょっと日が照ってくれたので、マシだったかな。
24日前後が 寒波の本番らしいけど、大丈夫やろか。
あんまり寒いので、寝る時に 使い捨てカイロを使いました。
そういえば、「ちゃっぷい ちゃっぷい、どんと ぽっちい」ちゅうコマーシャル、最近は見ませんね。
いや、商品自体 見ぃひんか。
CMでいうと、桐灰も見ない。
それはともかく、めまいの話の続きです。
え~、緊張した時の表現として、「ごくり」みたいなのがありますな。
喉が渇くこともあるでしょうか。
それがどうも、めまいにつながることも、あるんやそうな。
体内の水分量が減る → 喉が渇く。
これは分かりますよね。
でも、緊張したからといって、水分がどこかに消えるとは考えにくい。
せやのに、なんで 喉が渇くんでしょう?
それには、こういうメカニズムがあるらしいですな。
ストレスが大きくなると、交感神経が興奮状態になる。
すると、唾液の量が減って(あるいは、粘り気の強い唾液になって)、渇きを感じるんやそうです。
ストレスで自律神経がやられると、いろいろ起こるもんですな。
そしてどうも、耳の中でも、変化が起きることがあるらしいんですわ。
と、その前に、脱線します。
「バットぐるぐるゲーム」「ぐるぐるバット」ってありますよね。
野球のバットを立てて、グリップに額をつけて、それを中心として、グルグルまわる。
だいたい、10回ほど まわりますかね。
すると当然、目が回ります。
フラフラして、まともに歩けへん。
下の GIF は、ぐるぐるバットをした直後の目です。

これでは、足元がふらついて、まっすぐ進めません。
立ってられへんこともある。
この ぐるぐるバットをしたことなくても、子どもの頃、自分でグルグル回転して平衡感覚を失う、そんな遊びをしたことある人は、おるかもしれません。
いや、わたしなんですけどね。
(危ないから、やめた方がいいですけど)
それはともかく、この時、何が起きてるんでしょうか?
内耳の中は、リンパ液ちゅー水で満たされているそうです。
その中には、有毛細胞ちゅーもんがある。
頭をグルグルまわしたら、内耳の中のリンパ液もまわりますな。
ちょうど、洗面器の中の水を混ぜた感じです。
有毛細胞ちゅうのは、リンパ液の動きを感じるように なっとるんです。
リンパ液がまわる → 有毛細胞がそれを感じる → 脳がその信号をキャッチ。
ほいで、人間は ああ回ってる、と感じるわけ。
リンパ液の傾きを感じて、自身の傾きを感じる。
そんなセンサーみたいなもの。
ぐるぐるバットなんていうのは、普通の生活ではありえへん動きです。
そんなんが急に来たら、脳がパニックを起こすのも無理ないですな。
関西弁で言うと、「アホなことするからや~」となりますか。
でも、アホなことせんでも、目がまわることが あるんやそうです。
しかも、それ、「治りづらいめまい」なんて呼ばれとるんやそうですわ。
いや、難儀ですなぁ。
原因は何かというと、ストレスやそうです。
強いストレスがあると、人間の体いうやつは、水を欲しがるんやそうな。
ほいで、耳の中でも、そうなるらしいんですわ。
ストレスを感じる → 内耳の水を貯めるように指令が出る → 内耳の中が水ぶくれのような状態に。
これで めまいが起きるんですって。
内耳は 平衡感覚をつかさどる部位やから。
こういうの、「メニエール病」いうんやそうな。
<水ぶくれが原因のめまいの特徴>
・ ぐるぐる回るような めまい。
・ 10分から数時間程度続く。
・ 耳の聞こえづらさが伴う。
前の記事で紹介した「耳石が原因のめまい」とは、だいぶ違いますな。
リンパ液が過剰になって、めまいが生じる。
こういうのを、「内リンパ水腫」いうらしい。
こうなると、体は回転してないのに まるで回転しているような感覚になって、めまいが起きると。
しかも、そうなる時間が 比較的長い。
こんなん、どうしたら ええんや!
耳の中で起こっとることやし。
そう思いますが、意外な、ほいで簡単な、改善方法があるらしい。
それは、「水を飲む」こと。
簡単すぎて、ビックリです。
お医者さんがそう指導しても、信用してもらえへんことも けっこう あるそうな。
説得がたいへんらしい。
まさか、めまいが 水飲むことで治るなんて 思いませんからね。
でも、何で改善されるん?
メカニズムは簡単でした。
水をたくさん飲む → 体に水は十分あると脳が認識 → 水を貯めようとしない。
これで 耳の中の水ぶくれが解消されると。
なるほどね。
一般に、成人が1日に飲む水の量は、1.2リットルほどとされています。
(他に、料理などを通じて水分補給するから)
ただ、めまいに対する水分摂取法では、1日に 1.5~2.5リットルの水を飲むそうな。
けど、注意せにゃなりません。
多く水を飲む場合は、心臓や腎臓に負担がかかるケースもあるので、必ず医師の指導の下で行うこと。
めまいが起きる原因も不思議なら、それの改善方法も不思議。
いや~、人間の体ちゅうのは、不思議ですな。
不思議で、シンプルですわ。
ほいで、ストレスちゅうのは、やっかいですな。
目に見えへんし。
せめて、数値化できませんかね。
ストレス数値 高なったから、明日はお休みとか。
めまいは主に、耳鼻科で診療してくれるそうです。
なもんで、耳鼻科のホームページを見てみると、いろいろ解説してくれてます。
メニエール病について | 耳鼻咽喉科
メニエール病というと「若い女性がストレスでめまいを起こす病気」というイメージがあるのではないでしょうか。メニエール病の原因はずばり「内リンパ水腫(内耳のリンパが増え、水ぶくれの状態)」です。その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられています。
もしかするとメニエール病かも | たてもと耳鼻咽喉科
Q : メニエール病の症状には、どんなものがありますか?
A : めまい、耳がつまる、聞こえにくい(難聴)、ふらつき、耳鳴り(耳がキーンとする)などの症状の他、頭痛・偏頭痛を伴うことがあります。
めまいには「ぐるぐると視界が回る」「ふわふわして身体が覚束ない」「頭がぐらぐら揺れる」などさまざまなタイプがあり、いずれも数十分から数時間持続します。このことで気分が悪くなり、吐き気・嘔吐を起こすこともあります。
めまいの専門医として「めまい相談医」がおられるそうな。
日本めまい平衡医学会のHPで、検索可能とのこと。
日本めまい平衡医学会
ぐるぐるバットには、攻略法があるそうです。
10回まわった後、逆方向に 1回まわる。
これも、洗面器の中の水をイメージすると、分かりやすい。
同じ方向に 10回まぜると、渦のようになりますよね。
でも、逆方向に 1回まぜるだけで、水流が打ち消し合って、おさまってきます。
こういうのが、耳の中でも起きるらしいんです。
といっても、ゲームとしてやる場合、フラフラするのが バラエティ番組の醍醐味ですから、反則になるかもしれませんね。
[ 1月22日に思うこと ]
ものの価値が変わることがあります。
「それそのもの」は同じはずなんですが、それを扱う人によって、変わってしまう。
不思議なことに、「それ」を見ない人がいる。
「それ」を聴かない人がいる。
本人は「した」ことを知っているのに、見ない人は「してない」として扱う。
逆に、本人は「してない」のを知っていても、見ない人は「した」として扱う。
見てないのに、見たと思う。
聞いてないのに、聞いたと思う。
それで判断する。
人間を傷つけることの、ひとつです。
こういうのに、「情報」が関わることも。
情報に汚染されると、これをやってしまうこともある。
あぶない、あぶない…。



【文字通り】 本当に目が回っていた! 【トリセツショー】
目が回るのは、表現だけではなかった?
耳の中では、何が起こってる?
耳石くずし体操とは?
番組名 : あしたが変わるトリセツショー
テーマ : めまい 耳の迷宮SP
放送日 : 2023年1月12日(木曜日)
解説 : 奈良県立医科大学附属病院 めまいセンター 北原糺 センター長

□ 本当に目が回る?

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「めまい」についてです。
え~、いろんな言葉があるもんですな。
「耳が痛い」と言いますが、実際に耳が痛くなるわけではないけんども、よう言い表されてます。
なんや痛い感じは、しますもんね。
痛いわけではないけれど、そういう顔しとる。
しかめたりして。
ようでけた言葉です。
「目は口ほどにものを言う」
目はしゃべりませんが、言葉じゃないもんを ようけ伝えることがあります。
「鼻が利く」
いわゆる嗅覚に関するニオイがするわけではありませんが、予感や予兆みたいなニオイはするわけですな。
それは鼻で感じるもんではないんですが、こう言う方が分かりやすい。
すっと、腹に入ります。
ああ、これも実際は、腹に入るわけではないか。
ホンマ、言葉というのは ようでけてます。
合点がいく、言うんですかね。
ガッテン、ガッテン!
ああ、なつかしい…。
「目を回す」という言葉もあります。
マンガの表現なんかでも、よう目ぇ回したりしてますね。
昭和だと、小鳥がピヨピヨまわりを飛んだりもしてました。
なもんで、実際には目は回ってないのかと思ってましたが、どうも、そうじゃないようです。
NHKの「トリセツショー」見てましたら、実際に 回ってましたわ。

これは、「めまい」が起こった時の、目の様子です。
見事に、回ってますね。
この時、何が起こっているのか?
「三半規管」は聞いたことあるでしょ。
耳の中にある、あれ。
この三半規管ちゅーのは、平衡感覚をつかさどる器官なんです。
人間の内耳には「耳石(じせき)」いうのがありましてね。
これ、平衡石とも言うんです。
この耳石が欠けたりすることがありまして、その欠けた小っちゃいやつが、三半規管に入ってしまうことがあるんですわ。
三半規管は平衡感覚の器官ですから、そこにちっこいのが迷い込んだだけで、めまいが起きてしまうんです。
ホンマは回ってないのに、回っているかのように誤動作してしまうんですな。
いわば、センサーの間違いです。
こういうのを、良性発作性頭位めまい症、言うそうです。
良性発作性頭位めまい症 | 井上耳鼻咽喉科
体を動かしていないのに内耳から「動いている」という信号が送られてきたときなど、内耳からの動きを伝える信号と目や筋肉からの信号が一致しないとき、めまいが生じます。
主な症状は、目が回る、フワフワするなどのめまいで、吐き気を伴うこともあります。めまいが生じやすいのは、寝返りをうったとき、寝ている状態から起き上がったとき、急に後ろを振り向いたとき、急に上を向いたときなど、頭を大きく動かしたときです。めまいはたいてい、10~20秒ほどで治まります。
ちょっと話が逸れますよ。
まだ今のようなゲームが無い時代がありました。
TVゲームというのも、もう古い言い方ですね。
それのもっと前、ボードゲームとは別に、ポケットゲームいうのがありました。(呼び方を間違えている可能性あり)
おもちゃ屋さんだけでなく、本屋さんでも売ってました。(トミーの「ポケットメイト」がそうかもしれません)
野球ゲームとか、ビリヤードゲームとか。将棋やオセロもあった。
その中で、小さな銀の球を使ったゲームが、けっこうあったと思います。
こういうやつ。
銀玉をコロコロ転がして、指定の穴に入れるわけですな。
これ、耳石対策に似てるようです。
というのは、迷い込んだ耳石を外に出すから。
さて、こういうタイプの めまいですが、トリセツショーでは 以下の症状が紹介されてました。
<耳石が原因のめまいの特徴>
・ぐるぐる回る、もしくは、ふらふらするような めまい。
・5分以内に治まる。
・頭を動かしたときに起こる。
(寝返り、寝起き、首を上下に振るなど)
・めまい以外の症状がない。
わりと早く治まるようですね。
とはいえ、めまいですから、気になるでしょう。
で、対策なんですけど、耳石を崩すちゅー体操があるようです。
<耳石くずし体操>
(1) 座った状態で、顔を真横に向ける。
(2) 顔の向きと逆の方向に ゆっくり倒れて、30秒そのままに。
この時、顔はできるだけ天井に向ける。
(3) 初めの姿勢に戻って、30秒そのまま。
(4) 今度は逆の方向をむいて、同じ動きをする。
(5) 5回を 1セットとして、朝晩 1セットずつ行うとよいそうです。
1週間ほどで効果が現れるとのこと。

何気ない動きですけど、耳の中の小さな石には きくようですね。
これとは別に、治りづらいタイプもあるんですって。
けど、メカニズムが分かったおかけで、割と簡単に治る可能性が出てきました。
それはまた、次回に…。
[関係する記事]
めまいを家で治す! 寝返り運動と枕で 耳石を砕け/ためしてガッテン



【耳垢】 あった方がいい? 【イヤホン・トラブル】
イヤホンの使い方を間違えると、耳を傷めてしまう。
カビが生えることだってある。
耳掃除は、した方がいいのか? しない方がいいのか?
耳アカに対するイメージが、大きく変わるかもしれません。

□ 耳垢に関する疑問

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

鼻水に続いては、「耳垢(みみあか)」です。
(子どもの頃は、「耳クソ」って呼んでましたが)
中でも、イヤホンを使う時の注意点について、見ていきましょう。
後半では、乾いたタイプと、湿ったタイプについても。
Q01 : イヤホンで病気になることがあるの?
→ ある。
サイズの合ってないイヤホンを 無理やり押し込むと、耳の周囲の皮膚がこすれて、荒れてしまう。
これを、「外耳道炎・外耳炎」という。
外耳部分が炎症を起こした状態ですね。

無理やり押し込んで使っていると、皮膚が荒れてしまいます。
耳だけでなく、皮膚には やさしく、やさしく。
後で出てきますが、耳かきでも外耳道を傷つけることがあるので、注意してください。
Q02 : 耳の中にカビが生えるって、本当?
→ 本当。
耳の中は、けっこう湿度が高い。
イヤホンを長時間使用すると、それだけ密閉状態が続くことになる(湿気がこもる)ので、カビが生えやすい状況になる。
耳の中にカビが生えた状態を、「外耳道真菌症」という。(これも、外耳炎の一種)

痛みがあったり、強いかゆみがあったり、耳垂れがあると、その可能性が。
耳の調子が良くない時は、イヤホンの使用を控えた方がいいかも。
Q03 : イヤホンも掃除した方がいい?
→ 掃除した方がいい。
汚れたままだと、細菌が繁殖する原因になる。
イヤーパッドの奥を見てみると………
Q04 : 鼓膜に穴が開くことがあるって、ホント?
→ 本当。
外耳の炎症が、鼓膜にまで及ぶこともある。
これを、「鼓膜炎」という。
(インフルエンザに罹患した時に、なることもある)
さらに中まで及ぶと、「中耳炎」に。
それがひどくなると、鼓膜に穴が開くことだってあるのだ。(穿孔 せんこう)
鼓膜の穿孔が続くのが、慢性中耳炎。
このように、イヤホンで 耳を傷めることもあります。
サイズが合うものを選び、たまには掃除しましょうね。
中を見たら、けっこう汚れているかも。
除菌シートで拭いたり、予備のイヤーパッドと取り替えたりしましょう。
Q05 : 耳垢って、必要なんですか?
→ 必要。大いに、必要。
耳垢は、古くなった鼓膜が剥がれ落ちたものですが、これに 耳垢腺(じこうせん)から出る分泌物が含まれるのだ。
耳垢が 若干 湿っているのはこのためで、耳の防御にも使われる。
外からゴミが入ろうとしても、(湿った)耳垢にこびりつくので、阻止されるってわけ。
さらに、耳垢腺の分泌液には「IgA」という免疫物質が含まれていて、これが細菌などの感染から、外耳を守ってくれている。
また、耳垢のニオイを虫が嫌うため、防虫効果もある。
逆にいえば、耳垢のない耳は、虫が入りやすいとも言える。
Q06 : 掃除は、した方がいいの? しない方がいいの?
→ 掃除のしすぎには注意。
耳垢がまったくなくなってしまうと、上に書いたような防御機能まで失うことになる。
Q07 : じゃあ、どうしたらいいのさ?
→
一生懸命 耳掃除をし過ぎると、外耳道を傷つけてしまい、炎症を起こすことがあります。
だから、やりすぎはダメ!
血が出るまでやるなんて、もってのほか。
耳垢は基本、自然に 外に出てくるので、耳掃除は 1ヵ月に 1回 程度でいい。
それも、入り口近くを、やさしく。
あと、奥に押し込むような行為は、ダメ。
気をつけて。
健康な耳垢は、雑菌の繁殖を抑制してくれる。
見える部分を掃除するのはエチケットだけど、中まで過剰に掃除しちゃダメ。
特に、傷つくまでやっちゃ、ダメ。
気になる時は、専門家によく見てもらった方がいいので、耳鼻科を受診してください。
□ 耳垢の違い

かなり昔に、ラジオで聞いた話なんですが。
そのアナウンサーは、いつも耳掃除をしているとのことでした。
そして、気づいた。
右と左で、耳垢に違いがあることを。
一方は乾燥していて、もう一方は湿っている。
上で書いたように、耳垢には 耳垢腺の分泌液が含まれます。
ただ、分泌液の量には個人差があるので、乾燥した耳垢の人もいれば、湿った耳垢の人もいることになる。
なお、欧米人は 湿ったタイプが多く、日本人は乾燥した人の方が多い。
(あくまで多いのであって、もちろん、湿ったタイプの人もいる)
また、縄文人には湿ったタイプが多く、弥生人には乾燥したタイプが多かったらしい。
[関係する記事]
→ 【カテゴリ】耳トラブル
tag : 健康カプセル!ゲンキの時間 耳の病気



【聴力と認知症】 耳の毛と補聴器/ガッテン
音を聴くのに欠かせない、耳の中の毛「有毛細胞」。
なんと、難聴で音の入力が少なくなると、脳の一部が委縮。
認知症の発症率が高くなるという、研究報告が!
聞き間違いが増えてきたら、病院で検査を。
早期発見チェックで確認!
補聴器についての注意点。
世界では、数々の対策キャンペーンが。
・60:60セオリー。
・Make Listening Safe(耳を守るために)。
解説:国際医療福祉大学 三田病院 聴覚・人工内耳センター長 岩崎聡。
2017年12月6日放送の「ガッテン」より、「認知症を防ぐカギ! あなたの“聴力”総チェック!」からのメモ書きです。

□ 耳の中の毛

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「認知症」と「聴力」の関係について、紹介します。
世界五大医学雑誌の一つ「ランセット(The Lancet)」に、2017年7月、次のような報告が掲載されました。
「Dementia prevention,intervention,and care」
「認知症の 35%は、生活習慣次第で予防可能」だと書かれているそうな。
認知症の原因としては、喫煙、肥満、高血圧など、様々ありますが、中でも「最も認知症につながりやすい原因」が見つかったらしい。
いったい、それは何なのでしょうか?
番組冒頭、スタジオに運ばれてきたのは、2本の体温計。
1つは 10年前に購入したもので、もう1つは 最近購入したものです。
実はこの2つ、ある違いがあるんです。
それは、「音」。
古い体温計は、「ピピッ、ピピッ」って感じ。
最近のは、「ピコピコ、ピコピコピコ」みたいな感じです。
実は、この違いが、今回の大切なテーマなのだ。
体温計の他にも、いろんな家電製品の音が、変化しています。
その原因は、毛が減ったから。
ん?
どういうこと?
問題とする毛は、耳の中に生えています。
といっても、耳毛のことではありませんよ。
これは、鼓膜の内側にある毛の話。
内耳にある、「蝸牛(かぎゅう)」。
この蝸牛に、毛があるんですね。

実は、この毛、「外側から内側へ、高い音から順に反応する」んです。
毛が生えている細胞の数は、片方の耳だけで、1万5千から2万個とのこと。
この毛は、「有毛細胞(ゆうもうさいぼう)」という細胞に、生えています。
有望細胞を1つ取り出し、音楽で刺激を与えると、どうなると思います?
だいたい想像はつきますよね。
そう、まるで踊りだしたかのように、動くんです。

でも、これ、ただ踊っているのでは、ないのだ。
耳から入った音の情報を、電気信号に変えて脳へ送るという、大切な役割を果たしてるんです。
私たちは、耳の毛のおかげで、音を聴いたり楽しんだり、できてるんですね。
こんなに大事な耳の中の毛ですが、困ったことが1つあるのだという。
「耳の毛は、一度抜けると、二度と生えない」
しかも、「入り口に近い、高音を担当する毛ほど、ダメージを受けやすい性質がある」。

家電製品などの規格を定めた、JIS 日本工業規格の「高齢者・障害者配慮設計指針 消費生活製品の報知音」。
お知らせ音に関するガイドラインですね。
高齢者や聞こえが悪くなった人などに配慮して、家電などの「お知らせ音」の音質の指針を定めています。
・報知音の基本周波数は、25kHz を超えないことが望ましい。
・加齢性の聴力低下のある高齢使用者の多くは、高い周波数の音の聞き取りに困難がある。
つまり、「ある程度、低い音を入れてください」「でないと、聞き取りにくい人たちがいます」ということ。
最初に出てきた体温計も、新しい製品は、ガイドラインで定められた周波数になってるんですね。
新しいお知らせ音は、高音から低音まで複数の音を含み、誰でも聞こえやすい音になっているのだ。
□ 耳の毛チェック

耳の中の毛ですが、抜ける大きな理由の一つは、体質だという。
髪の毛が薄くなる人がいるように、年齢と共に、抜けてしまう人がいます。
また、騒音も大きな原因。
ヘッドホンで大音量の音楽を聴いたり、車などの騒音を何年も聞き続けると、毛は抜けやすくなってしまうのだ。
<耳の毛が抜ける原因>
(1) 髪の毛が抜けるように、年齢と共に、徐々に抜ける。
(2) ヘッドホンの大きな音や、車の騒音など。
実際、どのくらいの人の毛が抜けているのか、様々な調査を見てみると、耳の毛が抜けて医学的には「難聴」と診断されてしまう人は、60代でも 2割から3割。
聴力には欠かせない、耳の中の毛。
この毛を守るには、どうしたらよいのでしょうか?
<大実験>
ガッテン名物の実験です。
参加してくれたのは、60代以上の50名。
みなさん、普段の会話は問題ありません。
言葉を読み上げてくれたのは、劇団員の早川春香さんだ。
美しい発音です。
課題は、「読み上がられた単語を聞き取って、絵に描く」というもの。
1問目、「ペンチ」と答えた人もいれば、「天地」の人もいる。
他にも、「エンチ」「電気」「ベンチ」など。
答えは「ペンチ」で、正解した人は 50人中 18人でした。
このペンチと答えられなかった 32名に、正式な聴力検査を受けてもらいました。
低音から高音まで、7種類の音で検査します。
すると、医師の判定の結果、32人中 15人が、聞こえに問題があることが判明したんです。
□ 岩崎聡先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
国際医療福祉大学 三田病院 聴覚・人工内耳センター長の 岩崎聡 先生です。
先ほどの実験で、聞こえに問題があることが判明した人たち。
みなさん、高い音から、聞こえが落ちているようです。
岩崎先生の解説。
「高い音っていうのは、先ほどの渦巻き管の手前側になります」
「手前から、毛の生えた細胞が、だんだん死んでいくんです」
「みなさん共通してることは、高い音を感じるところから、だんだん低い音の方へ、細胞が順繰りに壊れているということを示してます」
「普通、言葉というのは、『あいうえお』を母音といいます」
「母音以外を、子音というんですけど」
(母音は低めの音、子音は高めの傾向にある)
「母音はみなさん正常に聞こえてますが、子音のところが、ちょっと聞きにくくなる」
例えば、先ほどの実験では、「ペンチ」を、「天地」や「ベンチ」などと聞き間違えました。
ペンチの「ぺ」=PE
天地の「て」=TE
ベンチの「べ」=BE
母音である「あいうえお」の「E(え)」は、ちゃんと聞こえてます。
けれど、子音である「P」「T」「B」の部分は、聞こえにくくなっていると。
岩崎先生によると、「子音だけ間違えるのは、難聴になるとよくある話」とのこと。
「やはり、ちょっと聞き間違いが増えてきたら、しっかりと専門の病院で調べてもらう必要があるかと思います」
「聞き間違いが増えて生活に不自由を感じ始めたら、耳鼻科へ」

耳の中の毛は、重要な役割を担っています。
しかし、様々な原因により減ってしまい、残念ながら、再生はしません。

ガッテン! ガッテン!
□ 脳と耳の関係

先ほどの実験ですが、聴力検査で問題ありとなった人たちも、普段の会話には問題ないようでした。
実際、検査を受けるまで、聞こえが悪くなっていることに、気づいてなかったんです。
普段の生活では問題なし → 聴力検査では問題あり。
でも、なぜ、気づけないのでしょうか?
その理由の一つは、「脳」にありました。
神奈川県は厚木市。
NTTコミュニケーション科学基礎研究所の 柏野牧夫さんを訪ねました。
柏野さんは、音が聞こえる仕組みを研究しているのだ。
人による聞こえ方の違いなど、独自の視点から、様々な聞こえのメカニズムを解き明かしているとのこと。
柏野さんの解説。
「耳に入ってくる情報が欠けていても、私たちの脳が、その欠けた情報を、補うことができるからですね」
例えば、ぶつ切りの音声も、あることをするだけで、聞き取れるようになったりします。
消えた部分にノイズを入れると、つながって聞こえる。
そして、これと同じことを、私たちは普段から、体感してたりするんですよ。
例えば、とってもうるさい街中でも、相手の言葉を聞き取れますよね。
実はこれも、脳の働きのおかげなのだ。
ノイズは、日常生活の中の雑音と同じ役割。
雑音があると、脳は「雑音で聞こえないだけで、本当は音があるはずだ」と判断するんですね。
そして、前後の文脈や音のつながりから、欠けた音を推測して、穴埋めしてくれるんです。
多少、耳の毛が抜けちゃってても、その部分は、脳がカバーしてくれます。
なので、会話には、ほとんど問題は出ない。
これはうれしいことなのですが、同時に、聞こえの悪化に気づけないという面も。
聞こえの悪い状態が長く続くと、やっかいなことにつながる可能性が…。
アメリカにある、ジョンズ・ホプキンス大学。
難聴と脳の関係を研究している、フランク・リン博士に、お話を伺いました。
リン博士は、様々な研究報告を次々と発表する、耳鼻科医の世界的権威なのだ。
実は、このほど、難聴があると 大きなリスクにつながる可能性があることを、突き止めたらしいですよ。
フランク・リン博士のお話。
「長年の研究から、難聴は脳に重大な影響を与えることが分かりました」
「難聴で音の入力が少なくなると、(脳の)音をつかさどる部分の萎縮が進んでしまうことが分かってきたんです」
「その部分は、思考や記憶にも重要な役割を果たす場所なので、それらの能力にも 影響してしまうんです」
このメカニズムについて、岩崎聡先生に教えていただきましょう。
「最近ですね、驚くべき報告があったんですけど、難聴を放置しておくとですね、認知症の発症率が高くなるという研究報告が出ててですね、注目を集めています」
難聴を放置すると、認知症の発症率が高くなる。
「どうして、難聴と認知症と関係するかということですが、あくまでも難聴はその原因の一つなんですけど」
「言葉は、聞くということは、人のコミュニケーションと関係してて、何を話すんだろう? と推測したり、次に何を答えようと考えて、コミュニケーションしてますよね」
「そういう、いわゆる聞こえに関する脳のネットワークというのがありまして」
「難聴が原因で、そういうネットワークが崩れると、認知症が始まると言われてるんです」
会話など、脳を働かせるコミュニケーションが不足すると、認知症を発症してしまうことがある。
リン博士が、639名を対象に、11年間調査した結果があります。
認知症の危険度は、
軽い難聴で、1.89倍。
中くらいの難聴で、3倍。
重い難聴で、4.94倍。

難聴が重くなるほど、認知症のリスクは上がってしまうようです。
□ 補聴器
[体験談]
名古屋市にお住いの男性、Aさん(78歳)。
長年、耳の聞こえの悪さに、悩んできたといいます。
ある程度の音は分かるんですが、言葉が聞き取れません。
今は補聴器をつけて暮らしていますが、外すと、聞こえない。
聞こえが悪くなり始めたのは、10年前だという。
会話に不自由を感じるようになった。
「人と話すのが、ほんと不便だったね」と、当時を振り返ります。
やがて、気持ちの面にも、変化が表れ始めました。
友達からの電話にも、出ることをためらうようになった。
そんなAさんの変化を、奥さんも強く心配しました。
今は穏やかですが、聞こえない時は、イライラしていたらしい。
次第に、ひとりでふさぎ込むことが増えた、Aさん。
何事にも やる気が起きないような日々が、3年間も続いたといいます。
しかし、奥さんから病院に行くことを勧められたのが、転機になりました。
Aさんは、医師と相談して、補聴器をつけて耳の聞こえを改善することを、目指すことにした。
すると、やがて、ふさぎ込んでいた気持ちにも、大きな変化が。
会話を避けることもなくなり、毎日を楽しむ前向きな気持ちが、よみがえってきました。
補聴器のおかげで聞こえるようになり、Aさんは すっかり元気を取り戻したのです。
では、補聴器について、岩崎先生に聞いてみましょう。
補聴器には、箱型のものと、耳かけ型のもの、耳の中に入ってしまうタイプがあります。
形は違うのですが、基本的な性能は、どれも同じとのこと。

聴力検査で高い音が落ちていた場合、落ちているところだけ、音を大きくします。
増幅するのは、「機能の落ちているところ」だけなんですね。
<補聴器の機能>
聞こえが悪くなっている部分の音だけを、強くして聞こえやすくする。
なので、耳鼻科でちゃんと検査を受けないと、正確な調整はできません。
耳鼻科で検査をして、聞こえの症状を確認してから、補聴器の必要な部分を調整する。
補聴器は、単なる音の増幅装置ではないんですね。
聞こえづらくなっている部分だけを、増幅する。
そうでないと、聞こえてる部分まで大きくなったら、うるさくて仕方ありません。
聞こえない部分だけを補う、それが補聴器。
だから、こまめに検査して、調整する必要があると。
その人自身に、フィットさせる必要があるのです。
先生によると、声が大きくて話が上手な人は、軽い難聴でもちゃんとコミュニケーションが取れるので、補聴器を必要としないケースもあるそう。
けれど、聞き間違いが増えてきて、だんだんと人との交わりを避けるようになってくると、問題が。
また、周りがボソボソしゃべる人が多いとか。
あるいは、会議に出てしっかり聞かなくてはならない人とか。
そういう人の場合は、軽い難聴でも、補聴器が必要になってくるとのこと。
補聴器は、難聴の程度ではなく、自分のライフスタイルに合わせて判断すること。
補聴器は、使う人の聞こえ方に合わせて、様々な調整をする必要があります。
初めて補聴器をつける時は、今まで聞こえていなかった音が入るようになるので、少しうるさく感じます。
でも、きちんと調整を繰り返せば、およそ 3か月から半年ほどで、耳が慣れてくるとのこと。
その後も、定期的に点検をしてもらいましょう。
価格は、5万円ほどから。
まずは、耳鼻科で検査を受けて、聞こえの状態をしっかり確認してもらいましょうね。
最近は、「補聴器外来」や「補聴器相談医」という専門家も増えているので、事前に調べておくのも、おススメです。
<補聴器のポイント>
(1) 調整できていな補聴器をつけると、うるさく感じることもある。
(2) 聞こえの症状の検査や、補聴器の調整をすると、3か月ほどで慣れてくる。
(3) 購入する時は、まず耳鼻科に相談。「補聴器外来」や「補聴器相談医」もおすすめ。
耳の毛の代わりを果たしてくれる「人工内耳」という機械もあります。

手術が必要になりますが、重い難聴でも改善が期待できて、保険適用あり。
□ 難聴の早期発見チェック

最後は、難聴に気がつかないまま放置しないための、早期発見法を紹介します。
<難聴の入り口 早期発見チェック>
・ふいに声をかけられると、聞き取りづらい。
・人の名前(例:加藤と佐藤)を聞き間違える。
・車の音がしても、どこから来るか分からない。
・小声は聞き取りづらいが、大声は異常に響く。
若い時は、一度に数人から話しかけられても、だいたい分かります。
しかし、年齢を増すと、一人ひとり真剣に聞かないと、話が分からなくなる。
これは、聞き取りの脳の機能が、落ちているのだそうな。
名前を聞き間違えるのは、上で紹介した、母音と子音の関係。
加藤の「か」=KA
佐藤の「さ」=SA
母音の「A」は分かるのですが、子音の「K」や「S」が聞きづらい状態です。
3つ目は、方向感といって、車が後ろか右か左か、どこから来るか分からない。
これは、脳の聞き取り機能が落ちてくると、音の方向感が分かりにくくなるから。
4つ目は、聞こえる幅が狭いということです。
聞こえだして、ちょっといくと、もう響いてしまう。
耳の細胞が減ってくると、こういう現象になるのだそうです。
耳の中の毛が落ちるのは、血流が悪くなるから。
血流が悪くなると、細胞が死んでしまうのだそうな。
耳の毛は、年齢や騒音で抜けやすくなるのですが、実はこれ、血流が悪くなることが関係しているんです。
「蝸牛」は、耳の毛が中に並んでいる小さな器官で、血管がものすごく細い。
血流が不足すると、耳の毛は死んでしまいます。
十分な血流を保つことが、耳の毛を守ることに、つながるんですね。
具体的には、「有酸素運動」が良いとのこと。
岩崎先生によると、アメリカで若い人の難聴が増えているそうです。
「60:60セオリー」というものがある。
ヘッドホンなどで、60分以上聞かない。
ボリュームは、最大の60%より大きくしない。
耳の酷使をやめて、休ませてあげましょうというわけ。

聞こえの悪さは、音量だけの問題ではありません。
血流を守って、耳の毛を大事にしましょうね!

ガッテン! ガッテン!
□ 難聴対策キャンペーン

今、世界では、難聴への関心が、少しずつ高まっているのだそうな。
世界の難聴者は、推定で5億人。
若者や子どもの難聴者も、少なくないのだという。
「SUPPORT FROM MORE THAN 100 FAMOUS AMBASSADORS」
そこで今始まっているのは、難聴対策の啓蒙(けいもう)キャンペーンです。
スティング、シンディ・クロフォードなど、世界的な歌手やアーティスト、著名人たちが、その重要性を呼びかけている。
「Make Listening Safe(耳を守るために)」
2015年、WHOも、難聴対策キャンペーンを実施しました。
若い世代を対象に、大音量で音を聴くことの危険性を、訴えています。
私たちの生活に欠かせない、健康な耳。
耳を守ることは、若々しい脳を保つことに、つながります。
耳の毛を、大事にしましょうね!



次回は、これ。
90分サイクルで起きればいいというのは、都市伝説?
気持ちよく目覚めるには、どうしたらいいの?
「あなたの朝が変わる! “目覚め”解明SP」。
[関係する記事]
→ 「耳鳴りは補聴器で治る+正しい耳掃除」
→ 「隠れ難聴は滲出性中耳炎」
→ 【難聴&耳鳴り】治す方法は、聴覚ネットワークと補聴器



【難聴&耳鳴り】治す方法は、聴覚ネットワークと補聴器/ゲンキの時間
今回のテーマは、「難聴」「耳鳴り」。
認知症とも関係が?
耳が遠くなる理由。
蝸牛と有毛細胞。
耳元で大きな声を出すのは、NG。
聴覚ネットワークを鍛える<聴覚筋トレ>。
耳鳴りの正体は、脳が作り出した音だった。
改善する方法は、補聴器。
ドクネット:東京大学医学部 耳鼻咽喉科学室 山岨達也 教授。
ゲンキリサーチャー:ずん(飯尾和樹&やす)。
2016年7月24日放送の「健康カプセル! ゲンキの時間」より、「~ 年を取っても良く聞こえる! ~ 解明! 聴力アップの秘訣」「難聴で認知症防ぐ簡単訓練」からのメモ書きです。

□ 聴覚ネットワーク

今週のテーマは、「難聴」と「耳鳴り」。
年を取ると、耳が聞こえにくくなるのは、仕方ない。
そう思ってないでしょうか?
専門家の先生は、こうおっしゃってますよ。
東京大学医学部 耳鼻咽喉科学室の、山岨(やまそば)達也 教授。
「難聴を、あきらめてはいけません!」
「年を取っても、高い聴力を維持することは、できるんですよ」
その難聴ですが、「聞き間違い」が、難聴が始まっているサインだという。
と、ここで披露されたのが、三宅裕司さんの奥さんのエピソード。
日曜のラジオでも、おなじみですよね。
「キッチンで仕事しながら、テレビの音だけ聞こえてくるわけ」
「『手の荒れに効く』って聞くと、『アレじゃ分かんないでしょ』って言ってね」
それはともかく、街の声から。
「聞こえるんですけれども、言ってる言葉が、はっきり分からない」
「高い音がね、聞こえにくくなるのと同時に、高い音が煩わしい」
「飲み込めなかったり、聞き取りにくかったりするの」
やっぱり、ある程度の年齢になると、体験する人は多いようです。
なのに、対策はというと、してないみたい。
病院には行かないらしい。
1つは、半ば、あきらめているから。
もう1つは、それほど生活に支障がないから。
こうした老人性難聴ですが、高齢者の孤立を招くことも。
耳が聞こえにくい → テレビの音を大きくする → ケンカになる
耳が聞こえにくい → 聞き間違いをする → トラブルに
耳が遠くなると、コミュニケーションでトラブルが生じ、孤立や引きこもりにつながるケースが、増えているのだとか。
そして、孤立から、さらなる問題が。
アメリカでの調査では、耳がいい人と悪い人で、認知症へのリスクを調べたところ、こんな結果に。
軽度の難聴の人:リスクが 2倍に。
中度の難聴の人:リスクが 3倍に。
重度の難聴の人:リスクが 5倍に。
でも、なぜ、年を取ると耳が遠くなるのでしょう?
<メカニズム>
音は耳に入ると、鼓膜で増幅され、「蝸牛(かぎゅう)」で電気信号に変換されて、脳に伝わります。
その蝸牛の中には、まるで毛のような「有毛細胞」があり、それらが伸縮することで、電気信号に変換しているんですね。

ところが、年を取ると、この有毛細胞が壊れてしまう。
その際、外側にある高い音を感知する細胞から壊れていくため、高齢者は、高い音が聞こえづらくなるのです。
じゃあ、有毛細胞を再生させる方法は、無いのでしょうか?
山岨先生の答えは、こうでした。
「残念ながら、有毛細胞は再生しません」
ということは、年を取って難聴になるのは、仕方ない?
いやいや、答えを出すのは、まだ早い。
次に向かったのは、千葉県は船橋市。
目指すは、「ニチオン」という会社です。
そこである製品を作っているらしい。
その製品とは、「音叉(おんさ)」。
音叉とは、楽器の調律などで、音の高さを確認する道具。
ピアノやギターの調律などで使われているのを、よく見ますよね。
医療現場では、聴覚検査などに使われているそうです。

音の高さは世界基準で定められており、音楽用の場合、「ラ」=440ヘルツ。
この会社に、すごい耳を持つ ご長寿さんがいるといいます。
音叉一筋 59年、本田泰(ほんだ ゆたか)さん 83歳だ。
本田さんの仕事は、音叉を 440ヘルツの響きに最終調整すること。
事前に調整されている音叉ですが、どうしても、1ヘルツほどの誤差が生じてしまいます。
そこで、本田さんが調節するのです。
見本となる音叉と、検査する音叉を、同時に鳴らし、音を聴き比べて、わずかな響きの違いを感じ取る。
まさに、職人芸ですね。
440ヘルツの音叉と、441ヘルツの音叉を、共鳴箱の上で、同時に鳴らします。
すると、「うわ~ん」という音のうなりが聴き取れる。
しかし、本田さんが挑む響きの違いは、こんなに分かりやすいものではありません。
その誤差は、「0.05ヘルツ以内」。
ここまでくると、常人には判別が難しいのだ。
本田さんは、わずかな「うなり」を頼りに、音叉を やすりで少しずつ削って、限りなく 440ヘルツに近づけます。
このように、わずかな音の違いを聞き取る 驚きの耳を持つ、本田さん。
聴力検査をしたところ、意外にも、平均的な80歳代の聴力でした。
これは、どういうわけなんでしょう?
山岨先生の見解は、こう。
「年を取ると、一般的に、誰でも聞こえは悪くなります」
「本田さんの検査結果を見ても、年齢の影響があると考えられます」
「ただ、本田さんの場合、長い間 音の高さを聞き分けていますので、聴覚のネットワークを鍛えることで、ある程度の年齢までいっても、音の聞き分けができていると考えられます」
難聴改善のカギを握るのは、「聴覚ネットワーク」。
これは、音にまつわる全てに関係している 脳内の神経ネットワークのこと。
その働きを知るために、まずは「ずん」の二人が、老人性難聴を体験。
スピーカーから男性の声が聞こえますが、雑音が多くて、何て言っているのか分かりません。
これは機器を使い、老人の聞き取り方をマネしたもの。
騒がしい日常を想定して、あえて雑音を加えているのです。
私たちは本来、耳からの情報を脳に伝達する際、邪魔な雑音をシャットアウトし、自分の聞きたい音を選択して、聞いています。
しかし、年を取ると、それが選択できなくなるのだ。
次は、雑音を外し、男性の声のみに。
でも、こもった感じで、うまく聞き取れません。
これも、老人性難聴の特徴だという。
年を取ると、高い音から次第に聞き取りづらくなります。
人の声の場合、「あいうえお」といった母音は低音なので、比較的、聞き取れる。
でも、子音は高い音が多く、中でも、「か行・さ行・た行・は行・ぱ行」は、聞き取りづらい。
最後に、全く加工してない音を聞いてみます。
これだと、はっきり分かりますね。
若い時には はっきりと聞き取れていたものが、年を取ると、雑音の聞き分けや、子音の聞き取り低下で、何を言われているのか、分からなくなってしまうようです。
そんな老人性難聴の予防・改善に役立つのが、「聴覚ネットワーク」。
会話を理解する上で、キーワードとなる言葉を予想できるか できないか、それが実は、とっても大切なんです。
人間が会話している時、100%全ての音声を聞き取っているわけではありません。
会話の際に、重要なキーワードを取り出しているんです。
この「キーワードを取り出す」ということが、類推(るいすい)ということで、聴覚ネットワークの大切な働きの1つ。
例えば、「#ぁようびですよ」と聞こえたとします。
最初の方が、聞きづらい。
こんな時でも、音に関する神経がカバーし合って類推し、「火曜日ですよ」と正しい答えを出してくれる。
それが、脳内の聴覚ネットワーク。
脳が頑張ってくれているのだ。
他にも、例えば、病院の受付で、「#ぉえんしょう」と聞こえたとします。
この時、「ああ、保険証のことだな」と脳が類推する。
では、この聴覚ネットワークを強化するには、どうしたらいいのでしょうか?
山岨先生がおススメしてくれたのが、これ。
<聴覚筋トレ>
大事なのは、類推する聞き取りを、鍛えることです。
(1) 音の響きが似た言葉を書きます。
例) 「一(いち)」「七(しち)」「吉(きち)」「父(ちち)」とか。
「知る」「散る」「着る」「居る」「昼」など。
これをランダムに、一人が読み上げ、もう一人が復唱する。
(2) 口の動きで類推できないように、背後から出題しましょう。

聴覚ネットワークのトレーニングで大切なのは、音に集中すること。
また、耳が元気なうちから 聴覚ネットワークを鍛えることで、難聴予防に役立つと考えられている。
□ ドクネット
引き続き、東京大学医学部 耳鼻咽喉科学教室 教授の 山岨達也 先生に、教えていただきます。
実は、会話する時に、耳元で大きな声を出すのは、よくないのだそう。
また、お年寄りは、情報を処理する能力も遅くなるので、ゆっくりと分かりやすく話すことも、大切です。
<お年寄りに話しかける時の注意点>
・音が聞こえていないわけではない。
・耳元で大声で話しかけると、耳を痛めてしまう。
・自分の口元が見えるように、ゆっくりと丁寧に、正面から話す。
言葉を工夫するのも、よい。
時間を伝える時、「しちじ」だと分かりにくいので、「ななじ」にするなど。
□ 耳鳴り改善アイテム

続いては、「耳鳴り」です。
現在、耳鳴りに悩む人は、全国で 約1000万人だという。
街の人たちも、経験しているようです。
「ガンガンガンガン鳴ったり、ジーって鳴ったり」
「キーンって声が高くなる感じで」
「心臓の音と同じ速さで、ふわっ、ふわっ、ふわって、いうんですね」
この耳鳴りの音は、どこで鳴っているのでしょうか?
なぜ、こんな音が聞こえるのでしょう?
山岨先生が教えてくれました。
「耳鳴りはですね、実際に鳴っている音が聞こえるのではなくて、頭の中でですね、何か音が聞こえるというのが、耳鳴りなんですね」
実際の音じゃなくて、頭の中で聞こえる?
そして、こんなことも。
「キーンという耳鳴りは、時々、普通の人でも、感じることがあります」
「ただ、難聴のある人がですね、耳鳴りを感じやすいといわれています」
耳鳴りに悩む人は、実は、老人性難聴が原因であることが多い。
音が聞きづらくなると、脳は聞こえなくなった音を必死に聞こうと、興奮状態に。
その結果、脳内の様々な電気信号を、音として感知してしまい、耳鳴りがしてしまうのです。
耳鳴りの正体は、脳が作り出した音だった。
神経が異常に興奮し、感じ取っていたのだ。
耳鳴りは、ひどくなると「睡眠障害」になったり、精神的に追い詰められて「うつ」になったりと、実は、大きなリスクがあるんです。
ずっと耳元で音がしていると思えば、それもうなずけますよね。
かつては治療法がなく、気にしないようにするしか方法がなかったといいます。
けれど、現在、光明が。
難聴がある場合には、よい治療法がある。
それは、「補聴器を使う」こと。
補聴器は、音を大きくする装置。
耳鳴りに悩んでいる人には向いてないように思えますが、実は、そうじゃないんです。
なぜなら、実際の音ではないから。
老人性難聴で聞こえが悪い人などに、補聴器を使うと、聞こえがよくなる。
そして、聞こえがよくなることによって、周囲のいろんな音が入ってくることで、耳鳴りを抑えることができると考えられている。
聞こえない音を聞こうとして、脳が興奮し、耳鳴りに。
なので、その音を聞かせてあげることで、興奮した脳を落ち着かせるってわけ。
そんなことができるのも、デジタル化による補聴器の進歩のおかげなのだ。
使う人の難聴のレベルに合わせ、聞こえない音域だけを増幅することが、可能になりました。

[体験談]
68歳の女性。
補聴器を使うことで、耳鳴りが改善しました。
症状が出たのは、4~5年前。
最初は、耳鳴りだと分かりませんでした。
読書が好きなのですが、耳鳴りに集中してしまい、内容が頭に入らなくなったという。
そして、1年前、補聴器を付け始めたところ、症状が改善。
読書に集中できるようになった。
補聴器を購入する際は、全国に約4000人いるという「補聴器相談医」がいる病院を受診し、「認定補聴器専門店を紹介してもらう」とよいそうです。
今では、周りの雑音を下げる効果を持つ補聴器もあるらしい。
けれど、何でも音を大きくすればいいというものでも、ありません。
その人その人の「聞き取り・難聴の度合い」を検査した上で、各人に合った補聴器を作ることが大切。
ある日、突然、片方の耳だけ聞こえなくなるといったケースも。
これは、「突発性難聴」。
耳の脳梗塞のようなものだという。
耳の細胞が死んでしまう前に治療することが、重要になります。
遅くても1週間以内に受診しないと、症状が治りづらくなる。
「あれ?」と思ったら、病院へ。
[関係する記事]
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→ 「耳管開放症と耳キーンの原因」
tag : 健康カプセル!ゲンキの時間 耳の病気


