【善玉コレステロール】 吸う力が重要だった!
コレステロールの常識が、崩壊するかも。
善玉が多いからといって、安心できない。
吸う力によって、病気になるリスクが変わってくるのだ。
何を食べればいいのかも、紹介します。
2018年11月28日放送の「ガッテン」より、「コレステロールの救世主 ~ 血管を掃除する秘策SP」。

□ 吸う力が強い?

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「コレステロール」について。
<期待される効果>
・ 血管系の病気のリスクが低減する。
<メカニズム>
善玉コレステロールの機能(吸う力)を強化する。
すると、数は同じでも、悪玉を取り除く力がアップするのだ。
<効果的な食材>
・ 青魚(理想は刺身、手軽さなら サバ缶)。
・ ナッツ。
・ 緑茶。
以下、詳細です。
健康診断の結果を見て、一喜一憂している人も、いるかもしれませんね。
今回は正常範囲かな~、どうやったら下がるのかな~。
それ以上に、血管が詰まったら怖い!
でも、こんな情報が入ってきたのだ。
ある食材を 1日1食摂るだけで、病気のリスクが 半分以上減るというのです。
番組冒頭、見せられたのは、小野文恵アナウンサーの検査結果。
総コレステロールの値に、「H」マークがついてますね。
数値は、「232」。
正常値は「120~219」ですから、わずかにオーバーしています。
(初めて高いと言われた)
(原因は、この夏、トンカツにハマったから?)
身体に良くないイメージのある、コレステロール。
何が身体に悪いのでしょうね?
<メカニズム>
食生活が乱れると、血管内に、悪玉コレステロールが増えます。
でも、健康なら、善玉コレステロールが、余分なコレステロールを回収してくれる。
善玉と悪玉のバランスが大事だと言われるのは、このため。
悪玉 : コレステロールを運ぶが、多いと不法投棄する。
善玉 : 余分なコレステロールを掃除・回収する。
悪玉の不法投棄が血管内に残ると、プラークを作ってしまう。
それが続くと、血管内が狭くなり、やがて、詰まってしまいます。
これが病気の原因に。
善玉(掃除する人) > 悪玉(汚す人)
血管内がきれいでいるには、この関係が大事なのです。
が、しか~し、それだけではないことが、分かってきました。
実は、善玉の吸う力が 普通より強い人がいるんです。
言い換えると、血管内を掃除する力が強い人。
あるいは、コレステロールを回収する力が強い人。
そんな人が多いのが、海外。
イタリアのリモーネ・スル・ガルダという村です。
なんと、ここに住む人は、遺伝的に、善玉の吸う力が強いのだ。
なので、プラークが少なく、血管の厚さも薄い。
普通、善玉コレステロールは、多ければ多いほどいいと思いますよね。
でも、最新の研究では、そんなに単純な話ではないと、分かったきたんです。
数がそんなに多くなくても、吸う力が強ければ…。
□ コレステロールの新事実

前述の通り、悪玉コレステロールが多いと、血管内に余分なコレステロールが残ります。
それを、善玉コレステロールが吸ってくれる。
普通なら。
そう、数はあっても、吸ってくれない善玉コレステロールがあるのだ。
どうも、善玉の吸う力と、ある病気に、深い関係があるらしい。
「吸う善玉」
「吸わない善玉」
この違いは、何なのでしょうか?
大阪府は吹田市にある、国立循環器病研究センター。
小倉正恒 室長が、教えてくれました。
実は研究で、善玉コレステロールが多くても少なくても、脳梗塞になった人の数に、大きな差が認められなかったんです。
これで、善玉コレステロールの数値が高いということが、いいのか悪いのか、分からなくなった。
単に量が多くても、意味がないかもしれないと。
そこで注目したのが、「善玉の吸う力」なんですね。
すると、衝撃的な事実が判明したのだ!
脳梗塞の罹患率(りかんりつ)を比べました。
吸わない善玉を持つグループに比べ、吸う善玉を持つグループは、罹患率が 約60% も減っていたんです。

でも、そもそも、吸う善玉と吸わない善玉って、どこか違うんでしょうね?

実は、掃除機に例えた場合、ホースに穴が開いているかどうか、それが差だったのです。
それについて、詳しく見ていきましょう。
□ 吸う力の差

20代から60代の男女、50名の調査。
全員、検査でコレステロールの値が気になっています。
まずは採血し、善玉の吸う力を調査しました。
協力してくれたのは、神戸大学医学部 立証検査医学分野の 杜隆嗣(とう りゅうじ) 准教授です。
ちなみに、特別な研究機関以外では、善玉の吸う力は、測定できません。
そこで、神戸大学では、自動で測れる方法を開発中なのだ。
神戸大学研究グループの判断基準は、こう。
吸う善玉 : 0.3以上
吸わない善玉 : 0.3未満
0.3未満の人は、心臓病を再発するリスクが高まる。
現在健康でも、病気になるリスクが高いと考えられます。
さて、実験の結果ですが、こうなりました。
50人中 19人が 0.3未満だった。(38%)
数値が一番良かったのは、67歳男性。
体重は普通で、BMI値は「23」です。
数値が悪かったうちの一人は、37歳女性。
こちらも 体重は普通で、BMI値は「23」。
どちらも飲酒しますが、1日に缶ビール1本(350ml)程度。
喫煙はしません。
年齢と性別は違いますが、他は同じようなもの。
にもかかわらず、吸う力には大きな差が。
実は、二人には、ある違いがあったんですね。
それはあるものを、食べる回数。
数値が良かった男性は、週に2~3回食べます。
数値が良くなかった女性は、月に1回程度。
これで話が見えてきました。
食べ物で、差が出るのだ。
先ほど、掃除機に例えましたよね。
この食べ物に含まれる「ある成分」が、ホースの穴にフタをしてくれるんです。

じゃあ、それを食べれば、吸う力をアップさせることができるんですね?
□ 吸う力をアップっさせる食材

ある成分とは、「EPA」。
そして、EPAを豊富に含む食材とは、「青魚」。
血中のEPA濃度が高い人ほど、善玉の吸う力が強い、そんな傾向があるのです。
先ほどの実験で、吸う力が弱いと判定された人に、2週間、毎日1食、青魚を食べてもらいました。
すると、5人中 4人が、吸う力が強まった。
この4人は、0.3未満だったのが、0.3以上に改善しました。
(1名は 同じ数値のままだった)
イヌイットの人たちは、アザラシを食べてましたよね。
そこに含まれる油のおかげで、代謝が上がり、寒さに強いと言われていた。
青魚にEPAが多いのも、青魚が寒い海を旅するから。
さかなクンが、そう教えてくれました。
青魚は、植物プランクトンを食べます。
植物プランクトンは、寒い海でも 細胞をしなやかに保つため、ある油を体の中に作り出すんですね。
その油こそが、EPA なのだ。
EPA には、細胞自体をしなやかにする力があり、血管をやわらかく保ってくれるってわけ。
動脈硬化を防ぐ力を持っている。
そして、善玉コレステロールの吸う力を、高めてくれるんです。
□ 小倉正恒先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
国立循環器病研究センター 室長 小倉正恒さんです。
善玉の吸う力を、「善玉引き抜き能」という。
数よりも、この能力が大事だと、7~8年ほど前から、分かってきました。
これまで、薬によって悪玉コレステロールの量を 約40mg/dl 下げても、動脈硬化性疾患の予防効果は、「20~30%」程度でした。
また、善玉コレステロールの量を上げる薬を使っても、残念ながら、動脈硬化の改善には 効果がなかった。
そこで注目されたのが、量ではなく「質」や「機能」の方だったんですね。
善玉の能力が低い → 脳梗塞になりやすい
善玉の能力が高い → 脳梗塞になりにくい
善玉の力を強くするには、EPAが必要。
EPAを摂るには、青魚を食べなければならない。
でも、毎日 青魚を食べるのはたいへんです。
そこで役に立つのが、「缶詰」。
特に、「サバ缶」がおススメ。
先ほどの2週間の実験なら、「1日 サバ缶を 1/4 」食べるのが目安。
これなら、無理なくやれそうだ。
EPAは、加熱により酸化されやすいという特徴があります。
なので、理想をいえば、生魚の方がいい。
特に、「カルパッチョ」だと、オリーブオイルが EPA の酸化を防いでくれます。
□ まとめ
・増えすぎた悪玉コレステロールは、血管内にプラークを作り、動脈硬化の原因になる。
・悪玉(LDL)の値が高い人は、要注意!
・善玉コレステロールの値が高くても、安心できない。
・吸う力が弱いかもしれない。
・青魚に含まれるEPAは、善玉の吸う力をアップしてくれる。
・肉を魚に置きかえれば、悪玉が減る可能性も。
善玉の吸う力をアップさせる食材は、他にもあります。
それは、「ナッツ」と「緑茶」。
運動では、「ウォーキング」。
これらには、血管の酸化や炎症を防ぐ働きがあるのだ。
目安は、ナッツ 25g 。
緑茶は 1日 1杯。
ウォーキングは、1日に30分。
番組の実験では、2週間で効果が出ました。
□ EPAの摂り方

青魚は、サバだけではありません。
イワシ、アジ、サンマなどもある。
もちろん、これらも、EPAが豊富。
先述の通り、生の方がいいので、おススメの食べ方は、「刺身」になります。
でも、お手軽さを優先するなら、やっぱり、「サバ缶」。
さらに栄養をアップしたいなら、かつお節をかければいい。

山形県では、「ひっぱりうどん」が有名。
まず、サバ缶の身と、納豆、薬味のネギを、混ぜ合わせます。
そこに、缶の残り汁を加える。
ゆでた乾麺を絡ませて、いただきます。

サバ缶は、応用がききますよね。
お好みに合わせて、アレンジしてください。
今回は、善玉コレステロールは数だけじゃないことを学びました。
将来、検査項目の中に、「善玉の吸う力」が加えられる日が、来るかもしれませんね。


[関係する記事]
→ 【缶詰レシピ】 賞味期限や食べ頃は?
サバの水煮缶の天ぷらも紹介。
→ 「サンマ、サバ缶、青魚の健康パワー」
サバ缶のピリ辛豆乳汁。
tag : ためしてガッテン コレステロール 動脈硬化 心臓



【健康診断】 結果の見方 B判定の落とし穴/健康カプセル! ゲンキの時間
健康診断の注意点。
・してはいけない行動とは?
・B判定でも安心できない?
動脈硬化のリスクを知るヒントとなる、「LH比」。
LDLをHDLで割って、3を超えたら、要注意!
・危険な組み合わせとは?
・動脈硬化の真犯人を発見!
LDLコレステロールと中性脂肪が高いと、進行する。
特に、超悪玉(スモールデンス)はリスク増の原因に。
クイズで勉強しましょう!
ドクネット:東海大学医学部付属東京病院 西崎泰弘 病院長。
昭和大学医学部 内科学講座 林俊行。
ゲンキスチューデント:滝裕可里。
ゲンキリサーチャー:あべこうじ。
2018年4月15日放送の「健康カプセル! ゲンキの時間」より、「~ 意外! B判定の盲点! ~ 命を守るドリル 健診結果の見方編」からのメモ書きです。

□ 健康診断でしてはいけないこと

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

ズバリ、「健康診断」について。
街のみなさんに聞いてみると、健診結果のことは、あまり気にしてないようです。
A判定やB判定ばかりだと、安心している人も多いのでは?
ところが、専門家の先生は言いました。
「たとえ A評価とか B評価が出たとしても、手放しで安心することはできなくて…」
「その結果の中にですね、健康リスクへのヒントが隠れているんですね」
ということで、今回は、「命を守るドリル シリーズ 健診結果の見方 血液編」をお送りします。
さて、前回から始まった、「今日の健康カプセル!」。
中には、何が入っているでしょうか?
出てきたのは、「L/H」というキーワード。
健康状態を知るのに、重要だといいます。
まずは、健康診断に関するクイズから。
協力してくださったのは、「新宿健診プラザ」だ。
Q)次のうち、健康診断の際、やってはいけない行動は、どれでしょう?
(1) 朝食を抜くように言われていたので、代わりにバナナを食べた。
(2) 居眠りをする。
(3) ガムを噛む。
(4) 遅れそうになったので、全力で走ってきた。
(5) 腕時計やネックレスをしている。
(6) 採血後に、我慢していた水を飲む。
答えは、「 (1) (3) (4) (5) 」
今週のドクネット、東海大学医学部付属東京病院の 西崎泰弘 病院長に解説していただきます。
× 「朝ご飯の代わりにバナナを食べた」
健診の前は、10時間ぐらい、飲食禁止になっています。
当然、バナナもダメ。
ちなみに、タバコやお酒も、胃酸の分泌や血圧の上昇に影響するため、控えることが必要。
× 「ガムを噛んでいる」
ノンシュガーでも 少量の糖を含んでいる場合があります。
また、味がすることによって、胃酸の分泌を促してしまう可能性が。
× 「遅れそうになり 全力で走ってくる」
血圧測定に影響が出てしまう。また、筋肉内の「LDH」や「GOT」などの酵素は、肝臓にも含まれている。全力で走ると、これらが漏れ出てしまって、少し上がってしまうのだとか。
× 「腕時計やネックレスをしている」
レントゲンや心電図に、影響が出てしまいます。
ちなみに、(6)の「採血後に水を飲む」ですが、基本的には OK。
ただし、胃カメラを控えている場合は、1時間前までに済ませること。
お医者さんや看護師さんの指示に、従いましょうね。
□ B判定の落とし穴

多くの場合、健診結果は、「A」から「E」の判定に分けられます。
<健康診断判定区分>
A : 異常なし。
B : 所見はあるが、日常生活に支障なし。
C : 経過観察や生活改善が必要。
D : 要精密検査。
E : 要治療。
「C」評価から、保健指導などが入ることになる。
しかし、B判定だから大丈夫かというと、そうでもないのだそう。
そこには大きな落とし穴が…。
向かったのは、東京都は品川区にある、昭和大学病院附属東病院。
糖尿病・代謝・内分泌科学部門の 林俊行 先生に、教えていただきます。
「B判定というとですね、基準値を少し超える程度というようなことで、油断される場合もあるかと思うんですけど」
「実は、その中にはですね、隠れた動脈硬化のリスクがあって、それが狭心症や心筋梗塞の原因になるといった場合もあります」
そんなリスクから身を守るために、ぜひ注目してほしいという項目が、「脂質」だという。
[ケース(1)]
50代の男性。
健康診断は、毎年 受けていました。
結果は、LDLコレステロールが、やや高めの「B」。
HDLコレステロールが、基準内の「A」。
中性脂肪は、やや高めの「B」。
男性は、特に治療の必要もないだろうと、これまでと同じ生活を送っていました。
ところが、ある日、これまで感じたことのない激しい痛みが、心臓を襲ったのです。
動脈硬化による、心筋梗塞だった。
幸いなことに、その時 運ばれた 昭和大学病院附属東病院で、適切な処置を受け、事なきを得ました。
でも、B判定で「所見はあるが日常生活に支障なし」だったのに、いったい なぜなの?
林先生の解説。
「コレステロールの値が たとえ 基準値内であったとしても、動脈硬化が じわじわと 進行してくるような場合もあります」
「これが、コレステロールの怖さなんです」
平成28年の調査では、主な死因別死亡者数の割合で、「心疾患」が 2位、「脳血管疾患」が 4位でした。
1位の「悪性新生物/がん」にせまる数の人が、動脈硬化のために命を落としているのだ。
動脈硬化を知る上で、コレステロールは最重要項目だという。
脂質の一種 コレステロールは、本来、身体にとって必要なものです。
細胞膜やホルモンなどを構成する、材料の一つ。
肝臓で作られたコレステロールを全身に運ぶのが、「悪玉LDL」。
余分なコレステロールを回収するのが、「善玉HDL」。
ところが、そのバランスが乱れ、悪玉が増えたり、善玉が減ったりすると、回収されずに残ったコレステロールが血管壁に入り込み、プラークを作ってしまいます。
このプラークを放置しておくと、血管がボロボロになってしまう。
すると、血管は劣化して、弾力を失い、動脈硬化が進行。
血栓ができて、心臓病や脳卒中などのリスクが、高まってしまうのだ。
<健康診断による脂質代謝の基準値>
LDLコレステロール値 : 140mg/dL未満
HDLコレステロール値 : 40mg/dL以上
中性脂肪 : 150mg/dL未満
先述の男性は、LDLと中性脂肪が、B判定でした。
しかし、そこには、項目別の判定だけでは計り知れない、動脈硬化のリスクが隠れていたのだ。
林先生の解説。
「コレステロールの判定の中でも、(動脈硬化のリスクを)知るヒントの1つが、LH比 といわれるものになります」
健康カプセルの中に入っていたキーワード、「L/H」こそが LH比!
健診結果には載っていませんが、結果表さえあれば、自分でも計算できます。
LDLコレステロール値を HDLコレステロール値で割るだけ。

LH比が「2.5」を超えている場合、動脈硬化が進行している可能性がある。
これこそが、判定結果の落とし穴なのでした!
注意が必要となる境界線は、「2.5」です。
「3」を超えたら、要注意!
逆に、「1.5」を下回っていたら、健康体。
□ 危険な組み合わせ

さらに、健診結果には、将来の隠れた健康リスクを知る上で、とても重要な着眼点があります。
それが、「B判定の組み合わせ」。
例えば、脂質(コレステロール値、中性脂肪)と血圧がダブルで B判定なら、動脈硬化のリスクあり。
たとえ B判定でも、油断ならないのだとか。
血圧が高めということは、血管に強い負荷がかかり続けているということ。
そこに余分なコレステロールなどが運び込まれることで、血管が傷つき、ボロボロに。
これが、動脈硬化の原因になってしまうというわけ。
<危険なB判定の組み合わせ>
脂質B + 血圧B = 動脈硬化
血圧B + 血糖値B = 狭心症・脳血管障害
血圧B + 心肥大B = 心不全
脂質B + 肝機能B = 脂肪肝
健診結果を見る時は、1つ1つの評価に一喜一憂するのではなく、複合的に見ることで、潜んでいる健康リスクに気づくことができます。
ここで、問題。
Q)血糖値 B判定の人が、糖尿病への危険が上がる B判定の項目は、次のうちどれ?
A : 血圧。
B : 肝機能。
C : 脂質(LDLコレステロール)。
答えは、「B : 肝機能」。
血糖値B + 肝機能B = 糖尿病
肝臓というのは、糖を取り込む最大の臓器。
血糖値の調節にも、深く関係してるんです。
肝機能が悪い状態というのは、脂肪肝に陥っている可能性がある。
すると、糖の調節が悪くなり、糖尿病のリスクが高まってしまうのだ。
「血糖値B + 血圧B」「血糖値B + 脂質(LDLコレステロール)B」という組み合わせについては、すでに糖尿病の人が上がりやすい項目であり、誘発する要因ではないとのこと。
三宅裕司さんからは、こんな質問が。
「僕の場合は尿酸値が高かったんですけど、痛風以外のことでも、数値を見て分かることがあるんですか?」
西崎泰弘先生の解説。
「尿酸値が高いということはですね、腎臓の働きが低下して、オシッコの中に 尿酸が捨てられていない」
「だから、血液の中で高めで推移するという状態を、反映することもあります」
「ですから、腎機能障害、最悪の場合は 腎不全から 透析になることもあるんですが…」
「それから、尿が出てくるところに尿酸がいっぱい出ていくと、尿路結石を作る原因になりますので、そのリスクも高まっているということになります」
□ 動脈硬化の真犯人 超悪玉

実は近年、動脈硬化を引き起こす真犯人の正体が、明らかになってきたらしい。
林俊行先生の解説。
「特に、LDLコレステロールが B判定で、さらに 中性脂肪が高いといった場合にはですね、実は、動脈硬化がさらに進む、そういった原因があることが、最近 分かっています」
LDLコレステロール B + 中性脂肪 B = 動脈硬化が進行
このタイプは、血液中に、動脈硬化を引き起こすスナイパーが潜んでいる可能性が高いのだとか。
LDLコレステロールの中には、すごく小さいものがある。
これは、「超悪玉コレステロール」と呼ばれています。
正式名「スモールデンスLDL(sd-LDLコレステロール)」。
超悪玉コレステロールは、小型であるがゆえに、通常の血液検査では その量を測ることができない くせ者。
血管内のちょっとした傷や血管壁に 次々 入り込み、血液の流れを阻害します。
その結果、動脈硬化になってしまうというわけ。
小型のLDLコレステロールを持っている人は、普通の大きさのLDLコレステロールを持っている人よりも、心筋梗塞などになりやすい。
そういったデータも、最近では出ているのだとか。
なお、林先生の研究室では、超悪玉コレステロールの量を測定できるとのこと。
この超悪玉コレステロールは、20mg/dL未満であれば、正常。
逆に、40mg/dLを超えると、かなり危険らしい。
この数値が高ければ高いほど、心筋梗塞のリスクが増えてしまいます。
西崎先生によれば、超悪玉コレステロールは 中性脂肪に連動して 値が大きくなるとのこと。
なので、中性脂肪を落とすことが重要であり、まずは食生活の改善が求められます。
例えば、甘いものや炭水化物を食べる量を減らすとか。
また、運動によって、HDL(善玉)コレステロールの数を増やすことも重要に。
ちなみに、超悪玉の検査は、原則 保険適用外。
しかし、最近では、人間ドックのオプションとして、追加できる医療機関も増えているらしい。
□ 来年の健康診断に向けた対策

引き続き、クイズです。
Q)中性脂肪を下げたい時、食べるなら、どっち?
A : サバ。
B : ササミ。
答えは、「A : サバ」。
サバは、オメガ3 を含む 不飽和脂肪酸(EPA・DHA)などが豊富。
これらには、中性脂肪を下げる効果があります。
ササミは 脂肪分こそ少ないものの、中性脂肪を下げる効果はありません。
Q)血糖値を下げたい時、食べるなら、どっち?
A : やまいも。
B : さといも。
答えは、「B : さといも」。
サトイモは、血糖値を下げるのに必要な「カリウム」や「水溶性食物繊維」が豊富なのだ。
西崎先生からのアドバイス。
「男性の場合、定年を迎えますと、健診を受けなくなってしまう人が増えてしまうんですね」
「身体にガタがくる中高年齢の方々におきましては、ぜひ 継続的に受診していただくことが、大変重要になってまいります」


[関係する記事]
→ 【第3のコレステロール(1)】 レムナントと総悪玉の計算法
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tag : 健康カプセル!ゲンキの時間 動脈硬化 健康の新常識 コレステロール



【第3のコレステロール(2)】 non-HDL 対策編/ガッテン
検査では「A」なのに、血管の中にプラークが。
今注目の、「non-HDLコレステロール」。
悪玉だけ見るよりも、動脈硬化による病気をより確かに予測できる。
<対策>
食べ過ぎない。
お肉(飽和脂肪酸)よりは、青魚(EPA)を。
大豆類と野菜(食物繊維)を食べる。
運動で、善玉を増やす。
解説:大阪大学医学部 増田大作 特任助教。
東北大学 黒澤一 教授。
2017年11月15日放送の「ガッテン」より、「コレステロールの新常識SP ~ 注意すべきはコレだ!」からのメモ書き。
その後編です。

□ 実験

動脈硬化の主な原因になるという、レムナントコレステロール。
そこから導き出される、総悪玉とその基準値。
では、こういうケースはあるのでしょうか?
善玉や悪玉は、OK(基準値内)。
総悪玉だけが、OKでない。
となれば、ガッテン名物の実験だ。
総悪玉コレステロール大検証!
参加してくれたのは40代から70代の男女、60名。
全員、悪玉も善玉も、総コレステロールも、すべて正常な人たちです。
みなさん、検査表を持参してくれました。
これをもとに、チェックします。
例)
総コレステロール:170
HDLコレステロール:54
LDLコレステロール:100
レムナント=170-(54+100)=16
総悪玉=170-54=116
総悪玉が「150未満」なら、「〇」。
総悪玉が「150以上」なら、「×」。
健康診断で問題のなかった60名。
その中で、総悪玉が基準値以上の人が、8名いました。
しかも、その8名の中に、こんな人が…。
首の血管を、エコーを使って詳しく調べたところ、血管の壁に、瘤(こぶ)のようなものが。
これが、いわゆる「プラーク」。
血管内皮の中に、コレステロールが取り込まれている状態です。
正常値だと安心していたら、血管の中に、コレステロールの塊を発見してしまいました。
□ 増田大作先生の解説

ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
大阪大学医学部 特任助教の 増田大作 先生です。
<なぜ、健康診断で、レムナントの項目がないの?>
レムナントコレステロールの測定には、時間とコストが かかります。
なので、健康診断では、測りにくいようです。
増田先生によれば、「レムナントといった新しいコレステロールを評価するのには、non-HDLコレステロールという項目を、計算で出すことが可能です」とのこと。
「non-HDLコレステロール」とは、総悪玉コレステロールのこと。
総コレステロールから、HDLを引いた値ですね。
総悪玉コレステロールは専門家の間では、「non-HDLコレステロール」として知られてきました。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の最新版(2017年版)。
この中にも、記載があります。
しかも、この non-HDLコレステロール、悪玉コレステロールだけで見るよりも、動脈硬化による病気を、より確かに予測できるという見解も書かれているぐらい、今、学会でも大注目らしい。
今回、番組で伝えたかったことは、こういうこと。
検査項目がすべて OK の人でも、本当は OK じゃない可能性がある。
つまり、総コレステロール、HDL、LDLが正常範囲内でも、総悪玉(non-HDLコレステロール)は基準を超えているかもしれないと。
そういうケースがあり得るということ。
学会でも、non-HDLコレステロールが高い人を見つけて、正しい治療を施すことを目指しているのだそうです。
自治体でも、項目に non-HDLコレステロール を入れているところがありました。
兵庫県は尼崎市。
コレステロールの欄に、ちゃんと入ってますね。

尼崎市企画財政局 野口緑 部長のお話。
「なぜ、この人は(心筋梗塞で)倒れたのか 分からないって方を、もう一度 振り返ってみると、やっぱり non-HDLコレステロール だけが高かったという方もいらっしゃるので、本当だったら 保険指導させていただかねばならなかった人と、出会うことができるのではないかな、と思い、結果表の中に入れさせていただきました」
「いくつかの(検査)項目があることによって、一つの入り口として、自分の身体を理解し、予防するという行動につながっていけばいいな~と思っています」
増田先生は、こうも言っています。
「肥満気味の人、中性脂肪が高い人、糖尿病の人は、non-HDLコレステロール が上がる傾向にあります」
そういうのを見つける意味でも、検査項目に入れていただければと。
<レムナントは、どんな人が増えるの?>
レムナントコレステロールは、食事の摂り過ぎによって上がる傾向にあります。
<レムナントを下げるには?>
肉よりも、魚を食事に取り入れるとよい。
また、運動で適正な体重をキープすることも大切。

non-HDLコレステロール の値を知って、健康管理に役立てましょう!
健康診断の検査表があれば、簡単に計算できます。

ガッテン! ガッテン!
□ 変化を知る

今回は、「レムナント」や「non-HDLコレステロール」という言葉を学びました。
でも、もちろん、悪玉コレステロールも、これまで通り、とても大事な検査項目であることには変わりありません。
その理由を、健康診断の検査項目に詳しい専門家に聞いてみましょう。
東北大学の 黒澤一 教授です。
コレステロールは、数値自体も大切ですが、以前の数値と見比べて、その変化を知ることも、非常に大切だとのこと。
「健康診断の数値の変化を見ることが重要!」
悪玉コレステロールは、10年以上も前から血液検査の必須項目なので、自分の身体の変化を知るのに、うってつけなんです。
□ 対策編

さあ、ここからは、コレステロールの対策編です。
<食事>
食べ過ぎは、総悪玉を増やすので、NG!
中でも、お肉などに含まれる「飽和脂肪酸」には要注意!
悪玉の数値が高めの人は、お肉などを必要以上に食べ過ぎないよう、気をつけてください。
おススメの食材は、「大豆類」と「野菜」。
大切なのは、大豆類や野菜を、たくさん摂ること。
食物繊維が、コレステロールの吸収を抑えてくれます。
もう一つ取り入れたいのが、「魚」。
特に、サバやイワシなどの青魚に含まれる「EPA」は、総悪玉コレステロールを下げてくれます。

というわけで、検証することに。
先ほどの実験で、総悪玉コレステロールが高かった3名に、魚の効果を確かめてもらいます。
期間は、2週間。お魚中心の生活を送ってもらう。
例えば、サバの味噌煮。
実は、サバは魚の中でも、特に EPAが豊富なんです。
他にも、サンマの塩焼き。
マグロとブリのお刺身など。
EPAは、加熱すると減少するのだそう。
なので、お刺身は、EPAを摂るのには、ベストな食べ方。
2週間後、採血し、総悪玉コレステロールの値を確認しました。
その結果、3名とも、数値が下がっていました。
お見事!
Aさん:151 → 131mg/dl。
Bさん:161 → 126mg/dl。
Cさん:154 → 129mg/dl。
みなさん、150以上あったのが、正常範囲まで下がっています。
<運動>
コレステロールは、悪玉を減らすことと並んで、善玉を増やすことも大切。
回収屋さんが増えれば、より余りにくい。
で、登場したのは、佛教大学の女性たち。
みなさん、善玉の値が、すごく高いぞ。
「93.6」「99.7」「99.9」「100.7」
「99.3」「104.6」「98.9」「98.4」
でも、どうしてみんな、こんなに善玉コレステロールが高いんだろうか?
その秘密は、ある競技にありました。
全員、駅伝の選手なのです。
大学の全国大会で優勝できるよう、みなさん、普段から、朝晩2回も練習で走っているとのこと。
つまり、こういうこと。
善玉を増やす一番の近道は、運動!
といっても、必ずしも、激しい運動が必要だというわけではありません。
息が弾む程度の30分の有酸素運動を週3回がおススメ!
食事と運動で、悪玉を減らし、善玉を増やしましょう!
健康診断の結果表で、総悪玉(non-HDL)コレステロールもチェック!


次回は、これ。
食欲がない、やる気が出ない。
その原因は、鼻の力の低下かもしれません。
「あなたは大丈夫? 鼻の力 最新報告」。
前編はこちら → 【第3のコレステロール(1)】 レムナントと総悪玉の計算法
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→ 【卵】 1日何個まで? 認知症に効く鶏肉は?
→ 「酒かす(酒粕)でコレステロールを減らす」
→ 「善玉コレステロールとは? 血管とプラーク」
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【第3のコレステロール(1)】 レムナントと総悪玉の計算法/ガッテン
検査結果が正常値なのに、脳梗塞になる人が多い。
その理由は?
健康診断の項目にある、「総コレステロール」。
でも、善玉(HDL)と悪玉(LDL)を足しても、イコールにはならないぞ。
カギとなるのは、第3の存在「レムナント」。
こいつが、動脈硬化の主な原因だった。
総悪玉の基準値と、計算方法も紹介。
群馬大学医学部 中嶋克行 研究員。
カーティン大学 ジョン・マモ教授。
岩手医科大学 講師 田中文隆。
2017年11月15日放送の「ガッテン」より、「コレステロールの新常識SP ~ 注意すべきはコレだ!」からのメモ書き。
その前編です。

□ 善玉と悪玉

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「コレステロールの新常識」です。
値が高いと、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの危険もあるという、コレステロール。
ところが、2万人以上のコレステロール値を専門家が詳しく調べたところ、ある意外な新事実が分かったのだという。
専門家は、こう言いました。
「今回、我々の結果ですと、心筋梗塞を発症された方の約半数である49%の方が、実は健康診断の LDLコレステロールが正常値だったという結果が」
コレステロールが正常値でも、心筋梗塞に?
その謎を解き明かしてくれるのが、血液検査の結果が書かれた「検査表」だという。
いったい、何が隠されているのでしょう?
ガッテンでコレステロールが取り上げられるのは、9回目だという。
今回、新しい情報が、もたらされたようですね。
健康診断の結果表を見ると、このような項目が。
総コレステロール。
HDLコレステロール。
LDLコレステロール。
下の2つは、こう呼ばれていますよね。
HDLコレステロール=善玉
LDLコレステロール=悪玉
ちなみに、これの略です。
HDL=High-Density Lipoprotein
LDL=Low-Density Lipoprotein
でも、何が善で、何が悪なんだろう?
スタジオに、模型が運ばれました。
これは、人間の身体の中を、簡単に表したもの。
そもそもコレステロールは、細胞の中にあります。
コレステロールは、細胞が細胞自身を作る材料にするために、持っているもの。
細胞膜を作る材料になる、大切なものなのだ。
そんな大切に持っているコレステロールですが、次第に古くなっていきます。
劣化するんですね。
すると、回収屋さんが、やって来ます。
古くなったコレステロールを、持って行ってくれるんです。
次に来るのは、配達屋さん。
新鮮なコレステロールを、細胞に届けてくれる。
では、回収屋さんと配達屋さん。
どちらが善玉で、どちらが悪玉でしょうか?
実は、こうなんです。
回収=善玉
配達=悪玉
新鮮なコレステロールを配達してくれるのに、どうして、悪玉なんだろうか?
実は、コレステロールを細胞に届けた後が、問題なんですね。
食生活の乱れなどで 積み荷が多くなっている時、余分なコレステロールが残ってしまう。
この細胞に必要な分を超えた「余った分」を、捨てちゃうんです。
こうして、血液中に、コレステロールが…。
ここで登場するのが、ガッテンではおなじみ、「マクロファージ」くん。
身体の中を掃除してくれる、白血球の一種です。
マクロファージは血管中に余分なコレステロールを見つけると、食べてくれます。
おかげで、血管の中は、きれいな状態に。
ですが、余った量が多すぎて、食べ過ぎると、マクロファージくんは 死んでしまうのでした。
しかも、このマクロファージの死骸が、血管の壁をグンと持ち上げて、血管を詰まらせ、細くしてしまうんです。
こうして起こるのが、動脈硬化や「プラーク」という瘤(こぶ)の状態。
配達する量が正常範囲内の場合は、問題ありません。
少ないと、細胞膜を作る材料が無くて、困る。
多すぎると、余った分が血管に出ていくので、よくない。
というわけなんですね。
□ 善玉でもない、悪玉でもない

さて、ここからが本題です。
善玉と悪玉の意味が分かりました。
検査表を見ると、「総コレステロール」という項目があります。
これは、善玉と悪玉を足したもの。
って、あれ?
足りなくない?
計算が合わないぞ。

足りない分は、いったい、何なんだろう?
今から、約24年前。
四半世紀前に、日本人のあるお医者さん、研究者が、回収屋と配達屋以外に、もう一つあるものを突き止めたのだそうな。
これが、足りない分ってわけか。
善玉でもない、悪玉でもない、残りの数字の正体は、何なのでしょう?
この謎を明らかにしたのが、この方。
群馬大学医学部の 中嶋克行 研究員。
「私の研究は、コレステロールの中でも、善玉でもない、悪玉でもない、(そんな)コレステロールの存在を明らかにしたことです」
中嶋さんが成功したのは、それまで誰も取り出すことのできなかった「謎のコレステロール」を血液から抽出すること。
1993年に論文を発表したのですが、当時、世界中から、驚きの声が上がったといいます。
そして中島さんは、2011年に、「ザック賞」を受賞(これは、日本人初)。
ザック賞とは、コレステロールの研究で、優れた功績をあげた人に与えられる、栄誉ある賞なのだ。
ちなみに、ザックとは、アメリカの科学者 ベニー・ザック博士のこと。
1957年、コレステロールの測定法を確立し、コレステロールの検査を 広く普及させた人です。
中嶋さんが発見した方法が、これ。
まず、血液を遠心分離器にかけます。
すると、赤いドロドロと黄色い部分に分かれる。
善玉と悪玉、2種類のコレステロールが含まれるのは、この黄色い部分。
本来なら、分析できるのは、ここまでです。
しかし、中嶋さんは、ここに自身が開発した薬剤を加えて、謎のコレステロールだけを分離させるのだ。
丁寧にかき混ぜること、2時間。
それが抽出されました。
透明だったのが、さらに2層に分かれてますね。
実は、一見、何の変哲もない上澄み部分に、謎のコレステロールが隠れているらしい。
その名も、「レムナントコレステロール」。
「レムナント(remnant)」とは英語で、「残りもの」という意味。
(他に、断片、はぎれ、なごり、面影など)
映画「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ小説の副題にも「レムナント」がありました。
さて、この、「レムナントコレステロール」。
善玉なのでしょうか? 悪玉なのでしょうか?
あるいは、善でも悪でもない、第3勢力か?
□ レムナントの正体

第3のコレステロール、レムナント。
これはいったい、どういうコレステロールなのでしょう?
血液中のレムナントコレステロールの画像があります。
食べ物から吸収されたコレステロールが、血液中に漂っている状態だという。

しかし、その詳しい働きは、長らく、謎に包まれていました。
それを明らかにした研究者が、オーストラリアにいた。
カーティン大学の ジョン・マモ教授。
コレステロールと血管の専門家です。
「我々がこの実験を行ったのは、どういったコレステロールが動脈硬化の原因となるかを突き止めるためで、その結果は驚くべきものでした」
マモ教授は、生まれつき動脈硬化になってしまうウサギを使って、研究を続けてきたのだそうな。
ウサギの血管の中で、コレステロールがどんな悪さをしているのか、独自の方法で観察しました。
その結果、こんなことが判明した。
血管の壁に溜まっている悪玉コレステロールは、全体の30%ほど。
全体の70%以上が、レムナントコレステロール。
つまり、レムナントコレステロールが 動脈硬化の主な原因だったのです。
こんな実験もあります。
掃除屋さんである、白血球の一種、マクロファージ。
このマクロファージに、悪玉とレムナントを、それぞれたっぷり与えました。
マクロファージが、どちらのコレステロールを多く取り込むかという実験です。
結果は、圧倒的に、レムナントの方でした。
取り込む量が、レムナントの方が かなり多いんです。
なんと、悪玉の約4倍。
これが何を意味するか?
前述のとおり、マクロファージは、余ったコレステロールを食べ過ぎると、死んでしまいます。
ということは、レムナントが多ければ、取り込む量も多くなって、マクロファージに与えるダメージも大きくなると。
例えば、こんな検査結果があるとします。
総コレステロール:210
HDLコレステロール:45
LDLコレステロール:120
この場合、210-(45+120)=45
レムナントコレステロール:45
善玉と悪玉以外の数値のほとんどが、レムナント。
この時、悪玉であるLDLと、極悪玉であるレムナントを足すと、45+120=165。
総悪玉:165
そして、この総悪玉には、基準値が。
<総悪玉の基準値>
総悪玉=総コレステロール-HDL(善玉)コレステロール。
(LDL(悪玉)+レムナント と同じ)
150以上:やや危険
170以上:危険

検査表によっては、総コレステロールが書かれていない場合があります。
そんな時は、悪玉コレステロールの値に、「30」を足してください。
総悪玉の、おおよその目安になるとのこと。
![健康プレミアム(13) 2017年 12 月号 [雑誌] (NHKガッテン! 増刊)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51yKbfJlNEL._SX270_.jpg)

後半に続く。
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【卵】 1日何個まで? 認知症に効く鶏肉は?/ゲンキの時間
<卵の新常識>
◆1日1個は間違い?
◆コレステロールは大丈夫?
◆旬はあるの?
◆赤いのと白いの、栄養価が高いのはどっち?
◆おいしい卵かけごはんの作り方は?
◆カラザは、取る? 取らない?
◆ゆで卵の むきにくさの理由。
◆腹持ちがいい卵料理は?
◆認知症予防になるという、鶏肉の部位は?
◆鶏むね肉を、やわらかくする方法。
ドクネット:東京家政大学 大学院 栄養学科 峯木眞知子 教授。
ゲスト:遼河はるひ。
ゲンキスチューデント:滝裕可里。
ゲンキリサーチャー:チャンカワイ(Wエンジン)。
2017年9月24日放送の「健康カプセル! ゲンキの時間」より、「~ 1日1個は もはや都市伝説!? ~ 完全食 卵 200%効果UP」からのメモ書きです。

□ 卵パワー

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「卵」です。
1日1個までなど、今まで持っていたイメージは正しいのか、専門家に教えてもらいましょう。
後半では、認知症予防になるという鶏肉の部位も。
卵は、とっても身近な食材。
風邪の時には、玉子酒。
大涌谷の黒たまごは、1つ食べれば 7年寿命が延びると、言われています。
でも、同時に、こんなイメージも。
・摂り過ぎると、コレステロールが気になる。
・1日1個までにしています。
これって、本当なのだろうか?
ちなみに、ゲンキスチューデントの滝裕可里さんは、多い時だと 1日に5個くらい食べてしまうそう。
ゲストの遼河はるひさんは、宝塚を退団する前、卵かけごはんに凝っていたそうな。
今は、卵にマヨネーズを入れて、スクランブルエッグのように焼くらしい。
まずは、恒例の基礎クイズから。
Q)卵にも様々な食材と同じく、旬がある。
これは「〇」でしょうか「×」でしょうか?
答えは、「〇」。
卵にも、旬があるんです。
卵の新常識を求めて、チャンカワイさんが向かったのは、長野県松本市。
農事組合法人「会田共同養鶏組合」です。
ここには、約24万羽のニワトリがいるという。
国産品種の親鶏から、毎日20万個近くもの、高品質でおいしい卵を生産しています。
内閣総理大臣賞や農林水産大臣賞も、受賞してるんですよ。
さっそく、鶏舎の中を案内してもらいました。
中は、自遊空間。
たくさんのニワトリが、自由に地面を歩き回っています。
これを、「平飼い」という。
卵はちゃんと、小さく仕切った中に産まれています。
というのも、暗いところで産む習性があるのだとか。

卵1つで、鶏が生まれてくるための、すべての栄養素が凝縮されています。
では、人間にとっては、どのくらい健康的な食材なんでしょう?
食品と健康の関係に詳しい専門家に、教えてもらいましょう。
お茶の水健康長寿クリニックの 白澤卓二 先生。
「卵は、たんぱく質、脂質、炭水化物、そして、ビタミンとミネラル、この 5大栄養素が、すごくバランスよく整ってる完全栄養食品なんですね」
中でも、たんぱく質は、高齢者の健康を支える強い味方。
養鶏組合の会長、中島学さんに、そのヒントがありました。
中島さんは、昭和4年生まれ。88歳になります。
その1日は、卵かけごはんでスタート。
活動量だって、すごいのだ。
自ら率先して力仕事に励み、足取りだって、実に軽やか。
姿勢も、シャキっとしています。
1日中、動きっぱなし。
見た目も、若々しい。
88歳にして この肉体を維持できる理由の一つが、卵のたんぱく質にあるようですよ。
白澤先生の解説。
「たんぱく質というのは実は、アミノ酸から構成されているんですけども、アミノ酸のバランスというのは、(食品ごとの)たんぱく質によって、まちまちなんです」
「卵のアミノ酸組成は、非常にバランスがいいんですね」
たんぱく質を構成するアミノ酸のバランスは、食品ごとに、「アミノ酸スコア」という数値で評価されます。
食品に含まれる必須アミノ酸のバランスを数値化したもので、高いほど良質なたんぱく質ということになる。
卵は、アミノ酸スコアが 100点なのだ。
また、肉や魚に比べても、たんぱく質の利用効率が高いんです。
つまり、筋肉が衰えがちな高齢者にとって、卵は、最適なたんぱく源というわけ。
しかも、ますます卵がおいしくなるシーズンが、これからだという。
旬になり、栄養価も高くなってくる。
涼しくなり、親鶏にとって快適になるこれからが、卵のシーズンなのだ。
□ コレステロール

おいしくて健康にいい卵ですが、やっぱり気になるのが、「コレステロール」。
含有量は、食材の中でも、トップクラスです。
<高コレステロール食材>
卵:420mg
しらす干し:390mg
たらこ:350mg
豚レバー:250mg
(100gあたり)
あまり食べない方が、いいのだろうか?
でも、会長は、1日に3~4個は食べているという。
60年前からそうらしいですが、今もこんなに健康。
卵の品質管理をしている人も、多い時は 1日に5~6個を食べるらしい。
こんなに食べるのに、会長のコレステロール値は、正常範囲の真ん中よりちょっと下だという。
品質管理の人も、健康診断で正常範囲です。(LDLコレステロール値)
専門家の解説を聞いてみましょう。
白澤先生のお話。
「血液中のコレステロールの約8割は、肝臓で自分で作っているものなんですね」
「ですから、食事由来のコレステロールは約2割で、それほど影響が大きくないんです」
また、食事から多く摂ったとしても、その分、肝臓が作り出す量を減らし、コレステロールの全体量を、一定に保っているんです。
卵の摂取頻度と血清総コレステロール濃度には、関連が無いというデータも。

ただし、遺伝的に体内のコレステロールを、うまくコントロールできない人もいます。
気になる場合は、お医者さんに相談してくださいね。
□ 白い卵と赤い卵

卵といえば、白いのと、赤っぽいのが、ありますよね。
これに、差はあるのでしょうか?
Q)白い卵と赤い卵、より栄養価が高いのはどっち?
A:白い卵。
B:赤い卵。
C:どちらも変わらない。
答えは、「C:どちらも変わらない」。
卵は、殻の色と栄養成分は、関係ありません。
殻の色を左右するのは、親鶏の品種。
一般的に、羽の色と同じ色の卵を産むと言われているそうです。

では、「卵黄の色の濃淡」は、どうでしょう?
こちらも、栄養価とは無関係。
エサの色素が反映されているだけなのだとか。
□ おいしい卵かけごはん

続いては、卵の食べ方について。
まずは、卵かけごはんです。
おいしく食べるコツは?
<割り方>
角ではなく、平らなところで、割る。
その方が、殻が入りにくい。
<作り方>
まず、白身と黄身に分ける。
次に、卵白を軽くかき混ぜ、ごはんにかけます。
勢いよく、かき混ぜましょう。
卵白が全体にいきわたったら、真ん中に卵黄を落とし、醤油をたらす。
卵黄をからめて、召し上がれ。

□ 卵の新常識
<卵白と卵黄の違い>
卵白は、脂質を含まないため、低カロリー。
筋肉増加に最適な、たんぱく質の「アルブミン」が豊富。
一方、卵黄には、高血圧を予防改善する「コリン」や、眼病予防効果のある抗酸化物質の「ルテイン」が含まれる。
どちらにも、利点があるようです。
<カラザは、取り除いた方がいいの?>
卵を割った時に出てくる、白いひも状のやつ。
これを、「カラザ」と言います。
カラザは、黄身を中心に支えているバネの役割をしている。
料理する時、これは取った方がいいのでしょうか? 取らない方がいいのでしょうか?
白澤先生によれば、「取らない方がいい」。
カラザには、シアル酸という成分が含まれています。
シアル酸には、体内に侵入したウイルスと結合し、活性を抑える働きがあるんです。
つまり、風邪やインフルエンザの予防になるのだ。
<むきやすいゆで卵>
むきやすい ゆで卵もあれば、薄皮がなかなか取れないものも、ありますよね。
その差は、何なのでしょう?
どうも、鮮度が関係しているらしいぞ。
卵の構造や性質に詳しい専門家に、聞いてみましょう。
東京都は板橋区にある、東京家政大学。
大学院 栄養学科の 峯木眞知子 教授です。
「産みたての卵っていうのは、卵白に 二酸化炭素が多く含まれているんですね」
「そして、時間が経つにつれて、二酸化炭素が抜けていきます」
新鮮な卵をゆでると、卵白に含まれる二酸化炭素が膨張。
すると、表面が殻に張り付き、むきづらくなるんです。
一方、産まれてから時間が経った卵は、二酸化炭素が抜けた分、卵白と殻の隙間が広くなり、むきやすくなるのだ。
この二酸化炭素の差が、食感の違いにも、つながるんですよ。
時間が経った卵の方が、二酸化炭素が抜けたことで、プリッとした食感になるのだそう。
ここでまた、クイズです。
Q)生卵、半熟玉子、ゆで玉子、玉子焼き。
上記の卵料理を、胃での消化時間が長い(腹持ちが良い)順に、並べてください。
答えは、「ゆで玉子 → 玉子焼き → 生卵 → 半熟玉子」。
腹持ちの良さ第1位は、ゆで玉子。3時間半です。
2位は玉子焼きで、3時間。
どちらも、加熱で完全に固形になっているため、消化が緩やかになります。
第3位は、生卵。2時間半。
4位は半熟玉子で、2時間。
生の卵白には、消化酵素の働きを抑える たんぱく質が含まれているのだとか。
そのため、半熟より、消化時間が長くなる。
□ ドクネット
引き続き、東京家政大学 大学院 栄養学科 教授の 峯木眞知子 先生(農学博士、管理栄養士)に、教えていただきます。
<保存期間>
生卵は、冷蔵保存で加熱調理が前提なら、賞味期限が切れても、ゆうに1か月は大丈夫だそうです。
(生卵は、生鮮食品なので、なるべく早く食べ切るのが理想です)
ただし、ゆで卵にすると、日持ちはせいぜい、4~5日になる。
調理した場合には、早めに食べましょうね。
□ 鶏肉と認知症

鶏肉のある部位には、認知症予防の効果があるという。
鶏肉の健康効果について、専門家に教えてもらいます。
女子栄養大学 栄養学部の 西村敏英 教授です。
「鶏肉は、豚肉や牛肉と比べて、脂肪が少なくヘルシーな食材です」
「たんぱく質も多く含まれていて、中でも、必須アミノ酸であるロイシンやトリプトファンがたくさん含まれているのが特長です」
ロイシンは、筋肉量を増やしてくれるアミノ酸。
基礎代謝を上げ、ダイエット効果が期待できます。
トリプトファンは、心を落ち着かせてくれる脳内物質「セロトニン」の材料になります。
鶏肉は、心身ともに健康へと導いてくれる食材なのだ。
さあ、最後のクイズです。
Q)認知症の予防効果が最も期待できる鶏肉の部位は、どこでしょうか?
A:もも肉。
B:むね肉。
C:レバー。
答えは、「B:むね肉」。
むね肉には、「イミダゾールジペプチド」が豊富に含まれている。
イミダゾールジペプチドは、体内に入ると、いったん分解され、脳で再合成されます。
その際、記憶力アップや脳機能を向上させるということが、近年、分かってきたのだとか。
また、イミダゾールジペプチドには抗酸化作用があり、脳疲労の原因となる活性酸素を除去してくれる働きもあります。
そんな健康パワーたっぷりの鶏むね肉ですが、パサつくのが嫌という人もいるかもしれません。
そういう場合には、こんな方法はどうでしょう。
<鶏むね肉をジューシーにする方法>
材料:
鶏むね肉:200g
水:100cc
砂糖:小さじ1/4
塩:小さじ1/4
水に砂糖と塩を溶かし、鶏むね肉を1時間以上浸す。
(鶏肉をあらかじめ切って浸せば、時間を短縮できます)
あとは、焼くだけ。

砂糖と塩には保水性があるため、筋繊維の間に水分が入り込み、ジューシーでプリッとした食感になるとのこと。
「帰って、親子丼作ろうかなって思いました」と、遼河はるひさん。
すると、三宅さんが言った。
「あのね、温かいごはんに白身をかけて、かき回して、黄身をのっけて、そこにむね肉」
なるほど、新しい親子丼だ!


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【胆石】 胆のうがんの前兆と予防法/ガッテン
インドにいる胆石ギネス記録のカンカリア先生。
日本では、持っている人の数は、約1千万人。
でも、半数は、痛みが出ないとも言われている。
本当に怖いのは、激痛ではなく、がんだった。
壁が厚くなったら、要注意。
危険なサインは、白い便と黄疸。
解説:千葉大学医学部附属病院 消化器内科 露口利夫。
2017年9月6日放送の「ガッテン」より、「油断大敵! 保有者数1000万人“胆石”の真実」からのメモ書きです。

□ 胆石のメカニズム

さあ、今回のテーマは何でしょうか?

「胆石」です。
ものすごく痛いイメージがありますが、必ずしもそうではないらしい。
そして、別の怖いことが…。
下の画像、何だと思います。

実はこれ、全部、胆石なんです。
スタジオに、セットが運ばれてきました。
「胆のう」の模型ですね。
胆のうは、袋のようになった臓器です。
ここに、油ものを食べた時に必要な「消化液」をためている。
番組曰く、肝臓で作られた油もの専用のスペシャル消化液。
それをいったん、ためます。
そして、食べた時に、必要に応じて、液を出すと。
その消化液の名前が、「胆汁(たんじゅう)」です。
胆汁は、茶褐色をしていて、ドロドロ。

ドロドロしているので、結晶ができることがあるんです。
その結晶が、胆石なんですね。
(尿路結石は、また別)
でも、胆石って、なぜ、できるんだろう?
向かったのは、インドのジャイプール。
ここに、胆石に関する数々の世界記録を持つお医者さんが、いるんです。
地元の外科医、カンカリア先生だ。
先生の部屋には、いろんな種類の胆石が保存されています。
2万人の患者さんたちから、集めたものなのだとか。
カンカリア先生は、1日に10件もの手術をこなすこともあるらしい。
自ら執刀した胆石の手術で、いくつものギネス世界記録を持ってるんですよ。
胆石を集める目的は、治療や研究に役立てるため。
長年の経験の中、カンカリア先生は、あることに気づきました。
実は、石を持っていても、痛くない患者さんが多いんです。
中には、17年間も胆石を持ったままだった女性がいたくらい。
別の男性は、1万1816個もの胆石を持っていたのだとか。

一方で、日本では、こんな方々が。
「胆石の痛いのは、本当に、ギュッて、痛くなりますので」
「寝られませんでしたね」
「寝ている時に、3日間ほど続けて、痛みが背中の方に来たんですよね」
「ちょっと、異常な痛みだった」
今、日本人で胆石を持っている人は、およそ 1000万人。
その中で、実際に痛みが出る人は、半数以下とも言われている。
でも、一度痛みだすと、突然、激痛が走ることもあるようです。
痛くなかった、インドの人。
痛かった、日本の人。
どうして、違いが出るのでしょうか?
(国の違いは、関係ありません)
そもそも、どういう時に、激痛が走るんでしょうね。
実は、胆のうの中にできた石は、中でゴロゴロしている限りにおいては、まったく痛くありません。
というのも、胆のうの中でいくら転がっても、それを感じる仕組みが、人体にはないのです。
胆汁が出る際、胆石も一緒に出て、運ばれていく場合も、痛みません。
便と一緒に、排出される。
痛いのは、こんなパターン。
胆石が、胆のうの出口や、十二指腸の出口に、詰まっちゃうケース。
そうなると、胆のうは、詰まった胆石を、一生懸命出そうとします。
実はこれが、激痛のもとなんですね。
胆のうの中で胆石がすごく大きくなった場合、出口よりも大きいので、出ていくことができません。
この場合、前述のとおり、痛みは出ない。
じゃあ、それでいいのかというと、実は、そんなことはないんですね。
□ 本当の怖さ

専門家の話を聞いてみましょう。
千葉大学医学部附属病院の 露口利夫 先生。
胆のうの病気の治療を専門的に行っている、お医者さんです。
「胆石の本当の怖さは、痛みがあるかどうかではなく、別のところにあるんです」
これは、どういう意味なんでしょうか?
[体験談(1)]
77歳の女性、Aさん。
9年前、胆石があることが分かりました。
ある日突然、朝起きた時に、横の胸(右側)が、チクチク痛んだ。
やがて、少しずつ痛みが強くなり、1か月が過ぎた頃、耐えきれなくなってしまいました。
病院で精密検査を受けると、胆のうに、40個もの胆石が詰まっていることが判明。
直ちに手術が行われ、無事、成功しました。
ところが、話はそこで終わりませんでした。
手術後、驚きの事実が伝えられたのです。
胆のうに がんがあることが、医師から告げられました。
胆のうや その周りにできる がんは、自覚症状の出ることが少ないため、見つけにくいのが現状。
そのため、様々な部位にできる がんの中でも、5年生存率が低いことで知られています。

幸い、Aさんのがんは 広い範囲への転移もなく、再発することもありませんでした。
Aさんが手術を受けた病院の医師。
都立駒込病院 神澤輝夫 先生のお話。
「半年から1年遅れていれば、手術できない状態になっていたのではないか」
「今回、たまたま(胆石の)症状が出て、来られたということで」
「そういう意味では、運がよかったんだと思います」
本当に怖いのは、激痛ではなく、がんになることだったんですね。
胆のう、そして、その周りの胆管にできる がんの死亡者数を調べたグラフ。

見ると、この30年で、死亡者数が倍増しています。
高齢者が増えていることもあるのですが、2015年現在で、約1万8000人が年間亡くなっています。
□ 露口利夫先生の解説
ここでスタジオに、専門家の先生が登場。
千葉大学医学部附属病院 消化器内科の 露口利夫 先生です。
「実際に、胆石の人を毎年、様子を診ても、それほど がんが出てくるわけではないんです」
「ですから、そこまで怖れることはないんですが…」
その一方で、こんな話も。
「胆石と胆のうがんというのは、何らかの因果関係があるということは、知られています」
「胆石を持っている場合ですね、慢性的な炎症から、胆のうの がんができるということは、昔から考えられています」
胆のうの中の石は、いつも同じところにあるわけではありません。
身体の向きを変えれば、石も一緒に、動いてるんです。
これがずっと、石がある間、日常生活を送っている間、続くわけです。
だから、胆石が粘膜を、ある程度、炎症を起こす原因になっている。
そして、炎症をずっと繰り返すことによって、だんだんと、がん化へとつながってくるのだという。
長年、胆石を持っていいる人だと、胆のうの壁が厚くなったりという問題が出てくる。
壁が厚くなっているところは、炎症が起きている部分。
胆のうの壁が厚くなってないかチェックして、もし壁が厚くなってきたら、症状が無くても、精密検査をして、手術を含めて考えた方がいいのではないかと、露口先生は言います。

アメリカのデータでは、胆石は大きいものほど悪いという話も。
3cm 以上になると、胆のうがんのリスクが高いらしい。
大きな石があるということは、長年、石が居座っていたということになりますから、長年にわたり炎症を繰り返していた可能性が出てくる。
胆石で必ず がんになるわけではありませんが、注意は必要なんですね。
でも、やっぱり、石ができないのが一番。
予防法が気になります。
□ 胆石の予防

さて、胆石ができやすいのは、どんな人なんでしょう?
<胆石ができるわけ>
・食べ過ぎる。
・食事を抜く。
・運動不足。
・家族に胆石。
(胆石症診療ガイドライン2016より)
食べることによって、肥満、特に内臓脂肪型肥満で、胆汁中のコレステロールが、非常に高くなる。
すると、結晶を作って石になりやすいという状態になります。
ところで、そもそも、胆石の正体とは、何なのでしょう?
胆石を持っている人の胆汁。
これを、人の体温に近い37℃にしておくと、日を追うごとに、あるものがどんどん成長していきます。
その物質が、「コレステロール」。
胆石の多くは、コレステロールの結晶からできているんです。
女性の場合、妊娠の時に、ホルモンが過大に出るなどの問題があるので、若くても(40代ぐらい)胆石ができる人が、けっこういるのだとか。
運動不足は、基本的に、コレステロールの管理の問題が入ってきます。
コレステロールが多い胆汁を作るような形になってしまうと、石ができやすくなる。
また、胆石と一緒に、脂肪肝が見つかることが非常に多いのだそう。
食事を抜くというのは、どうなんでしょうか?
ダイエットもそうなんですが、食べないでいる間は、胆汁を濃縮し続けることになります。
どんどん濃くなればなるほど、結晶を作りやすくなるんですね。
間隔をきちんと守って、三度三度、食事をきちんと摂ることが大切。
定期的に食事をして、胆のうから胆汁を出さないと、淀んで、石ができやすくなるんです。
特に、食事を抜くような急激なダイエットは、危険。
また、水分を摂らないような状態が続くと、胆汁が濃くなるので、よくないのだとか。
さらに、胆石がある人も、水分をしっかり摂っていれば、痛みの発作が起こりにくくなるといいます。
胆石の検査には、どのようなものがあるのでしょうか?
「腹部超音波検査」、いわゆる「エコー検査」ですね。
ゼリーを塗って、探触子(たんしょくし)で、お腹の中を診ます。

エコー検査は、女性の場合、少し若めの世代から受けた方がいいそう。
出産を契機に石ができることもあるので、女性は 40歳ぐらいから検査を受けた方がよいそうです。
露口先生によると、男性は50歳ぐらいからで十分ではないかと。
市区町村の健康診断だと、オプションになることが多いのだそう。
人間ドックだったら、5000円程度。
症状があるなど、保険適用される場合は、その 1~3割負担らしい。
超音波検査では、肝臓や すい臓、腎臓などと合わせて、胆のうのチェックを行っています。
人間ドックを受けていれば、自動的に、胆石があるかどうか調べられているらしいですよ。
(詳しくは、担当のお医者さんに聞いてみましょう)
ちなみに、X線検査では、胆石は見つかりません。
X線はコレステロールを通り抜けてしまうので、胆石をうまく写すことができないのです。
<胆石の予防>
(1) 食べ過ぎを控え、内臓脂肪を溜めないようにする。
(2) コレステロールを溜め過ぎない。
(3) 食事を抜かない、水分をしっかり摂る。
(4) 運動する。
(5) 女性40歳以上、男性50歳以上は、検査を受ける。

胆石を持っていても、痛みが出ないことがよくあります。
なので、石を持っていることを知らないまま、長年過ごす可能性も、多々ある。
女性なら40代以降、男性なら50代以降、一度は腹部超音波検査を受けましょう。

ガッテン! ガッテン!
□ がんに気づける?

痛みなどの症状は なかなか出ないという、胆のう周辺のがん。
ところが、自分自身で がんに気づけるケースがあるのだとか。
[体験談(2)]
千葉県に住む 67歳の男性、Bさん。
去年、胆管がんであることが判明しました。
MRI画像を見ると、正常な部分は白く写るんですが、胆管の先で、白い部分が途切れています。
ここにがんができて、管が詰まってしまったんですね。
当時、Bさんに、痛みなどの自覚症状は無かったのだそう。
ところが、Bさんは、ある場所で異変に気づきました。
その場所とは、「トイレ」。
便が真っ白になっていたので、ビックリしたそうです。
この不思議な現象のカギを握っているのが、胆汁。
胆汁の色は、便の色のもとになっているんですね。
ふだん、十二指腸へと流れている胆汁は、胆管に がんができていると、せき止められてしまうことがあります。
すると、胆汁は 便に色をつけることができず、白っぽい便が出ることがあるんです。
一方、せき止められてしまった胆汁の色が、顔や目に出ることがあります。
「黄疸(おうだん)」と呼ばれる症状。
白目の外側から、黄色くなってくるのが、特徴なのだとか。
□ 古代の胆石
人類と胆石には、壮大な歴史の物語があるのだという。
1991年6月、アルプス山脈。
氷河の中から、ミイラ化した遺体が発見されました。
調べてみると、遭難した登山者ではなく、約5300年前の古代人だと判明。
「アイスマン」と名付けられました。
アイスマンの身体を解剖し、どんな病気にかかっているのか調べたところ、胆のうの中に胆石が3個見つかりました。

胃の中を調べると、動物の肉が。
アイベックスというヤギの仲間の肉などを、好んで食べていたようです。
ミイラ・アイスマン研究所の アルベルト・ツィンク博士のお話。
「たいへん驚くべきことですが、5300年前の古代人であるアイスマンは、ただ何かを食べるというだけではなく、動物の肉など、おいしい食材を食べることに、かなりこだわっていたようなんです」
我々人類は、豊かな食事を求め始めた頃から、胆石と歩む宿命にあったのかもしれません。
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次回は、これ。
全世界に広がる、原因不明の手首の痛み。
ついに、日本まで?
カギは、手首の進化にあった。
「新・現代病! 世界に広がる謎の痛み」。
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